よこまなプロジェクト

調査から見えてきたのは、教育の「新しい力」と「学びの場」 ――よこまなプロジェクト 開催までの道のり(後編)

2015年6月24日



調査から見えてきたのは、教育の「新しい力」と「学びの場」 ――よこまなプロジェクト 開催までの道のり(後編)

フレーミングフェーズでのインタビュー調査から、横浜の地域課題が徐々に具体化されてきました。この調査においては、「横浜で生活するうえで感じている課題」を念頭に置き、観光都市や港町といったイメージに偏らないよう「暮らす人」視点でインタビューを実施。後半では、調査から見えてきた地域課題が、どのように「よこまなプロジェクト」の企画に落とし込まれていったのかを探ります。(トップ画像:Thinkstock / Getty Images)

テーマを「教育」にしぼり仮説形成&検証のフェーズへ

まず、フレーミングフェーズで導き出された課題は、大きく次の5つに分類することができました。

 ●都市のシビックプライド(愛着・誇り)
 ●高齢化
 ●教育
 ●子育て
 ●中小商店の衰退

このなかから、テーマ領域として選ばれたのは「教育」。西村さんが「学校や職場、地域など、誰もが何かしらの教育を受けた経験を持っており、しかも人生におけるさまざまなステージにかかわる」と話すように、ジャンルとしての幅が広く、さまざまな価値観が存在します。そのため、捉えどころが多様で議論が拡散しやすいことから、扱うのが非常に難しいテーマといわれています。

それでも「教育」を選んだのは、実践知研究センター側でした。判断基準は、「実践知のOB・OGが富士通グループの強みを発揮できるか、テーマ領域で自分ゴトとしてアイデアを出せるか、多様な人たちとのビジネスのプロジェクトを立ち上げることができるか、などを重要視していたから」(大屋さん)。実践知OB・OGたちの「教育」への関心度が高かったこともあり、このテーマ領域に決定しました。

同時に、教育のなかでも、公教育が扱えていない領域を扱うことも決められました。公教育の課題は、さまざまな公的機関との連携が長期にわたって必要となるため解決が難しい。ゆえに、アプローチしやすい領域に絞ることにしたのです。

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NPO法人ミラツク代表理事 西村勇也さん

そして、ミラツクはここから「テーマの解像度を上げていく作業」を進めていきました。「教育」というテーマを軸とした“仮説形成&検証フェーズ”にて、より深くアプローチすべく、再び調査を行ったのです。ここでは大学教員を含めた教育専門家、NPO法人や学校教員などの実践者、さらには当時者として子どもを持つ市民など、新たに合計13名にインタビュー調査を実施。合わせて書籍やデータを参考に分析を進めたほか、教育機関やNPO法人で新しい教育を実践している現場を訪問。実際の取り組みを観察するフィールドワークも行いました。

市の教育ビジョンを踏まえ横浜の教育の課題がつまびらかに

ここまでの取り組みを整理すると、

 1.横浜の課題を抽出
 2.教育領域への絞り込み
 3.教育領域における仮説設定

という流れとなります。以降は、全国および横浜の公教育の現状を確認しつつ実施した、専門家や実践者へのインタビューから、新たな視点を見つけていきました。

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公開イベント・プロジェクト設計に向けて、「教育」における課題にフォーカス

横浜が抱える「教育」の課題とは、具体的にどんなものだったのでしょうか? 西村さんは次のように見ています。

「まず、日本の公教育の現状と横浜の公教育の現状を確認し、同時に他国の教育のうち近年注目されている教育についても調査しました。そして現状の教育に加えていくべき観点やトピックについて検討していったんです」

また、横浜では2014年11月に“教育ビジョン”として『第2期横浜市教育振興基本計画』を策定しています。ここでは横浜における教育の現状がまとめられているほか、重点施策として「横浜らしい教育の推進」が宣言されていました。そのポイントは、以下の4点にまとめられます。

●横浜型小中一貫教育の推進:学校と地域が一体となって児童生徒指導を充実させる
●キャリア教育の推進:グローカル化に伴い将来の夢をはっきり描けない子どもが増えているため、仕事をすることの尊さと意義を理解してもらう
●国際社会で活躍できる人材の育成:国際社会で活躍するためのコミュニケーション能力の育成に重点を置く、活用できる英語を教える
●ICT教育の推進:情報社会を生き抜くために、ICT学習よこはまスタンダードを制定し、学習内容の統計表改定するために、民間企業や研究機関と連携してICTの活用方法について研究・実践

この基本計画には「自立、協働、創造に向けた力の獲得」や「新たな価値を創造する人材」というキーワードがありました。それらと有識者へのインタビューから見えてきたのが、「教育に対する新しい力」と「教えるに対する学び」という2つの視点だったのです。

こうした調査や背景をもとに、仮説形成を進めていきました。

キーワードは「新しい力」!? 探求型、オンラインのという新たな視点

ここまでに要した調査機関は4カ月。その成果について、西村さんは次のように語ります。

「現在の学校教育は、既存の5教科を教員が児童に対して“教える”のが一般的です。しかし、道徳の授業があったり、文部科学省が2000年代から『総合的な学習の時間』を定めていたりすることからもわかるように、学校では“新しい力”を養う科目も増えています。一方で、ワークショップスタイルで5教科を“学ぶ”といった変革の動きもあることがわかりました」

西村さんたちは、そうした背景を踏まえ、これからの教育というテーマを「縦軸:新しい力 —今までの教科」「横軸:教える — 学ぶ」といった“4象限”で捉えました。

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予備調査報告書より(提供:NPO法人 ミラツク)

「そこから浮き彫りになったのは『新しい力×学び(=探求学習)』でした。さらに、この『新しい力×学び』をスケーリングしていくと、取り組みの規模が小さいことや地域が限定されていることが見えてきました。つまり、地理的な制約が大きな課題となっていることがわかったのです。さらにそれを『オンライン』で実現できる機会の提供が、これからの教育のテーマになると考えたのです」(西村さん)

「探求学習」に対して、さらに「オンライン – オフライン」という軸を通すことで、本プロジェクトの具体的なコンセプトが見えてきました。

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☆が今回よこまなプロジェクトで扱う領域となった(提供:NPO法人 ミラツク)

よこまなプロジェクトでは、2015年5月〜7月にかけて、公開ワークショップを展開。そこでは、教育に関する専門家をゲストスピーカーとして招き、探求型学習やオンライン教育の現状を踏まえながら「新しい学び」について考えていきます。これらのワークショップをフックとして、実際にプロジェクトをデザインする連続講座も用意。西村さんは、今回のプロジェクトを企画する際に心がけたことをこう語ります。

「『関係性自体をつくる』『フィールドワークを取り込む』『アイデアを結晶化する』の3つをこなせるようなプログラムを目指しています。これができれば、メンバーたちが自走するための最低限の土台はできますから」

あしたラボでは、「プロジェクト」内でこのワークショップ、そして「よこまなプロジェクト」の今後を追っていく予定です。ぜひご覧ください。

「教育」をテーマに生活者や市民を巻き込む ――よこまなプロジェクト 開催までの道のり(前編)


調査から見えてきたのは、教育の「新しい力」と「学びの場」 ――よこまなプロジェクト 開催までの道のり(後編)

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