よこまなプロジェクト

グローバル時代をしなやかに生きるために必要な「探究力」――よこまなプロジェクト 第1回公開ワークショップレポート

2015年6月30日



グローバル時代をしなやかに生きるために必要な「探究力」――よこまなプロジェクト 第1回公開ワークショップレポート

横浜を拠点に、子どもたちが「主体的な課題設定力」と「粘り強い問題解決力」を身につけるための、新しい教育のあり方を考える「横浜でつくる学びの未来プロジェクト(通称:よこまなプロジェクト)」。全3回の公開ワークショップでは、ゲストの実践を通じて新しい教育への考えを深めます。第1回は東京コミュニティスクール 探究プロデューサーの市川力(いちかわ・ちから)さんをゲストに迎え、「決まった正解のないこれからの社会を生き抜く力とは何か」について参加者とともに考えました。

問題を解くことより、見つけられることが重要

2015年5月26日、よこまなプロジェクト第1回公開ワークショップが横浜市の「みなとみらいInnovation Future Center」で開催されました。今回のゲストは独自の探究型学習を軸としたカリキュラムに基づき、子どもたちの学び続ける力を育てている東京コミュニティスクール 探究プロデューサーの市川力さん。

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東京コミュニティスクール 探究プロデューサー 市川 力さん

東京コミュニティスクールは、小学生を対象とした独自のカリキュラムに基づいた教育を行う全日制スクールです。1学年6人の少人数学習、大人との定期的な対話、プロジェクト型学習などを通じて、子どもの自律的な学びを促すことを目指しています。よこまなプロジェクト全体のテーマとして「公教育が扱えていない新しい学び領域」を設定した際、このテーマにふさわしい実践者として真っ先に名前が挙がったのが市川さんでした。

市川さんはアメリカでの学習塾経営の経験を活かし、2004年に東京コミュニティスクールの校長に就任。それ以来、一般の公教育とは一線を画した「探究する力」を育てることを目的に多くの子どもたちを育て、送り出しています。今でこそ、その理念やICTを早くから取り入れた教育方針を評価されていますが、開校当時はさまざまな困難があったそうです。

「2004年当時は子どもの学力低下や、いわゆるモンスターペアレントの問題が世間に喧伝されていました。そのような空気のなかで“探究する力”という耳慣れない言葉を掲げたものですから、『基礎学力は大丈夫なの?』とバッシングを受けましたね。しかし、それから10年経って社会がさらに複雑化したことで、正解のない不透明な世界をたくましく、しなやかに生きる力が求められ、私たちの活動に対する世間の見る目も変わってきました」

学校におけるフォーマルな学びに費やす時間は、人生全体から見ればとてもわずかなもの。それ以外の、家族や友達と過ごす時間や大人になってからの時間のなかで、明確な正解のない、そもそもあるかどうかもわからない答えを探すことになります。

「私は、子どもに提示する課題を『わからない』『できない』『終わらない』ものにしています。重要なのはこれらの問題に小学生が小学生らしく、自分の頭で考えられるかということ。私が考える小学生らしさとは、3つのSからできています。それが、Small(小規模)、Slow(ゆったり)、Spontaneous(自発的)」。市川さんはこのように語り、東京コミュニティスクールのカリキュラムが課題設定と解決に向けたプロセスに重きを置いていることを強調しました。

子どもに個性はいらない?

東京コミュニティスクールにおける「探究する力」を獲得するプロセスは、論理的なメソッドで行われているわけではありません。そうした背景から、参加者から「市川さんの学校に入学させることを検討している保護者のなかには、躊躇してしまう方もいるのでは?」という質問も。それに対して、市川さんは実際の体験を交えて回答しました。

「低学年が体験する、『気づきを得るためのプロセス』は、確かに論理的でないかもしれません。すぐに答えが出ない課題ばかりと向き合うのですから。ただ、6年生になる頃には、そうしたプロセスが積み重なり合って、新しい風景が見えてきます。そうした体験をして、卒業後、公立中学に入った子は『学校では先生が答えを教えてくれる』と興奮気味に話してくれました。一方で、逆にそれが物足りなくてやめてしまい、アメリカに行ってしまった子もいます」

また、他の参加者からは、「教育現場における創造性教育と論理性教育のバランスをどうとるべきか」という課題も提示されました。それに対する市川さんの回答は、従来の「子どもの個性を尊重することは正しいことである」という通念に一石を投じるものでした。

「私たちのスクールでは、子どもの突出した才能を伸ばすようなことはしていません。それよりも普通の頭の持ち主がみんなで知恵を絞り合い、協働して何かをつくりあげることこそ重要と捉えています。ある有名アーティストに絵画の授業をしてもらったとき、その方は『この学校の子どもが描く絵はいい意味でエッジがないところがいい』とおっしゃいました。公立校の児童は才能のある子はうまい絵を描くが、そうでない子は尻込みする。しかし、うちの子たちは、妙な個性に縛られず、すぐに結果を出そうと焦らず、いろいろなことを大胆に試す。そして、それを臆面もなくさらして、みんなからのフィードバックを受けつつ、何度もつくり直していく。それをおもしろがるのです。」

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参加者から提案された15の課題

ワークショップの最後には、参加者同士で課題を共有するダイアローグが行われました。「学び」に関して、多様な観点から議論したいという課題を持った15人を中心にグループを構成。バックグラウンドの異なる参加者同士が、対話を通してお互いに新しい視点を獲得し合います。市川さんのお話を受けて自身の問題意識が明確になった方もいるようで、各グループで活発な議論が盛り上がりました。

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15のグループに分かれてダイアローグを行う参加者

次回は、学び、メディア、デザインの3つの視点から新しい学びの場を構想し、実践的な研究を行っている上田信行さんをゲストに招いた、6月2日のワークショップをレポートします。


グローバル時代をしなやかに生きるために必要な「探究力」――よこまなプロジェクト 第1回公開ワークショップレポート

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