地域から起こるこれからのワークライフスタイル探求プロジェクト

イノベーターから選ばれる“地域”、2つの条件 ――これからのワークライフスタイル探求プロジェクトまとめ(前編)

2015年7月9日



イノベーターから選ばれる“地域”、2つの条件 ――これからのワークライフスタイル探求プロジェクトまとめ(前編)

「新しいワークスタイルのヒントを、地域から見出せないか」。そんな仮説を検証すべく、2014年冬から予備調査も含め約半年、富士通デザインとNPO法人ミラツクは「地域×ワークスタイル研究」を展開してきた。地域(ローカル)を拠点にしながらも、国外にも視野を広げるイノベーターたちを対象としたフィールドワークと、そこからの発見をもとに都会のワーカーとワークスタイルの今後を考えるイベントを実施。今回はそこから読み解いた“新しい働き方の兆し”を前後編にわたってお届けする。

地域に飛び出した方がイノベーションは起こしやすい?

「自分たちは、いつまで都心のオフィスに集まり仕事を続けていくのだろうか」。プロジェクトのきっかけはワークスペースの空間デザインなどに携わる富士通デザイン 高嶋大介さんの抱いた素朴な疑問だった。

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中心となったプロジェクトメンバー(左から富士通デザイン株式会社 高嶋大介さん、NPO法人ミラツク 島村実希さん、西村勇哉さん)

「もしかしたら、多くの企業が拠点を置く都会ではなく、地域に移動した方がイノベーションが起こる確率が高いのではないか。それぞれの地域で、新しい働き方をしている人たちとその周辺を追いかければ、何かしら“新しい働き方”のヒントを探ることができるのではないか。さらに、それが逆に都会での働き方を変えるきっかけにもなるかもしれないと思い、調査をスタートさせました」

全国でソーシャルイノベーションを促すワークショップを展開するNPO法人ミラツクの代表理事 西村勇哉さんも「高嶋さんから共同研究のお誘いをいただいた際、すでに実感として都会よりも地域のフィールドに特徴的な種が見えていました」と話す。

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地域×ワークスタイル調査活動のフロー。
フィールドワーク、ダイアローグイベントをそれぞれ複数回行った

「その実感を持って、地域へ飛び出したイノベーターのワークスタイル、ライフスタイルそれぞれを丁寧に掘り起こせば、クリエイティブでいままでにない働き方の可能性を提示できるのではないか」(西村さん)。その期待どおり、地域にはワークスタイルの“イノベーションの芽”が多く眠っていた。

新しい働き方ではなく、“新しい生き方”

しかし、第1回イベントの登壇者、秋田県五城目町でハバタク株式会社を興し、地域の教育機関とも連携しグローカルな人材育成に取り組む丑田俊輔さんの事例で、早くも高嶋さんの仮説は覆される。

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第1回目のフィールドワーク先、五城目町でヒアリングをする様子

五城目でのフィールドワーク前は、都心にある企業の業務を地域に移行することで、社員のストレスが減り、クリエイティブな思考になる。それによってイノベーションが起きるのでは? と考えていたのですが、そうではありませんでした。丑田さんのように現地に入り込み、地域住民の方たちと一緒に仕事をつくりあげようとすることで、はじめて新しい価値が生まれるのだとわかりました」

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GO ONプロジェクトで手掛けたプロダクトが並ぶショールーム

さらに、伝統工芸の若き匠たちの技を京都から国内外に発信する「GO ONプロジェクト」に携わる各務(かがみ)亮さんは、個人のやりたいことがそのまま所属する企業の仕事になる、良い意味での「公私混同」の働き方を大切にしていた。

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フィールドワーク第3回・庄内日報 富樫さんへのヒアリングの様子

山形県庄内地方では、日本各地の霊山を踏破し修行を行うことで、自然の力を身につけようとする「山伏」の文化を外部に広めていくことで人をつなぎ、持続可能な社会を目指す、株式会社めぐるんの加藤丈晴さんを訪れた。加藤さんが庄内に移住するきっかけとなった人々への取材では、「ワークとライフは別々ではない。新しい働き方があるのではなく、ライフスタイルそのものを変えることの意義に気づかされた」(高嶋さん)。

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海士町の神社で行った阿部さんと海士町住民・古川さんへのヒアリングの様子

“離島ならでは”を追求し、人、そして地域資源の良さを掛け合わせて化学反応を起こそうとする島根県海士町。海士町を舞台にツーリズム事業を展開する株式会社巡の環の代表、阿部裕志さんからは“地域へ丁寧に溶け込むことの意義“を学んだ。地域資源とは特産品や名所旧跡だけではない。目に見えない伝統や風習の価値にこそ人は魅かれる。それも海士町へフィールドワークに赴き実感できたことだ。

“よそ者の揺さぶり”に期待する地域

4名4様のイノベーターのワークライフスタイルから、「全員に共通する点が2つあった」と高嶋さんは振り返る。

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「フィールドワークに赴くことで都会にいるだけではつかめない、その地域の“空気”を感じることができました」と高嶋大介さん

1つ目は、「地域で仕事をするハンディキャップをまったく感じていないこと」。

これはICTのメリットとしてどこでも誰とでもつながって仕事ができることを指しているわけではない。地域という「課題の先進地」で死活問題に直面し、それらを解決したい当事者たちと協働するからこそ、心底から新しい価値を求める活動に奮い立つことができる。ハンデがあるどころか、むしろ地域にいることのメリットのほうが大きい。

2つ目は「よそ者」を受けいれる、行政と地域住民の“柔軟さ“だ。

その地域でイノベーションを起こすことは、雇用を生むために工場を誘致できればOKという発想とはまったく異なり、地域のしがらみにとらわれずまったく新しいことに取り組まなければならない。しかし、地方自治体、地域住民の力だけで突破するのは難しいのが実状だ。だからこそ地域は、「よそ者」による刺激や揺さぶりに期待している。そのためのバックアップは惜しまない行政担当者、地域住民がどの地域にもおり、イノベーターの活動を支援していたことが非常に印象的だった。

地域に「よそ者」が入り込み、新しい流れをつくる。そこには、実践者それぞれの仕事観に基づいた活動とそれを支える地域の支援者たちの大きな共創活動があった。後編ではよそ者が地域に溶け込むための方法を振り返るとともに、新しい働き方において企業が協働できる領域を探ってみたい。

地域から期待される「よそ者」になるには ――これからのワークライフスタイル探求プロジェクトまとめ(後編)へ続く

関連リンク
ハバタク株式会社
GO ONプロジェクト
株式会社めぐるん
株式会社巡の環
NPO法人ミラツク
HAB-YU platform


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