地域から起こるこれからのワークライフスタイル探求プロジェクト

地域から期待される「よそ者」になるには ――これからのワークライフスタイル探求プロジェクトまとめ(後編)

2015年7月10日



地域から期待される「よそ者」になるには ――これからのワークライフスタイル探求プロジェクトまとめ(後編)

五城目町、京都、庄内地方、海士町と各地域に新しい渦を生み出すイノベーターとその周辺の人々へのインタビューから、これからのワークスタイルを探った富士通デザインとNPO法人ミラツク。すべての調査を終え、あらためて結果を振り返ると、地域とよそ者としてのイノベーターが“まじわる”ための要件が見えてきた。後編では、よそ者が地域に溶け込むための方法を読み解くとともに、企業として越えなければならない壁を考察する。

地域と同じ目線で信頼関係のステップを踏む

よそ者が地域に入り込み、よそ者らしさを発揮するために、まず第1の関門となるのは「スムーズな地域への入り方」だ。それには段階があることが見えてきた。「信頼関係を築くにはステップが必要。いきなりはほぼ無理です」と話すのはNPO法人ミラツクの執行役員 島村実希さん。

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NPO法人ミラツク執行役員 島村実希さん

「大前提として、地域と同じ目線に立つこと。そのうえで、まず個人同士のつきあいからはじまり、緩いつながりをつくります。ヨガを一緒にするのでも、コスプレ大会で遊ぶのでも、楽しいことなら何でもいい。それを繰り返して自然と集まったコアなメンバーと地域のビジョンを語り合います」

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地域でイノベーションを起こしたいのであれば、企業は長期的な投資をする覚悟が必要だ
(取材を元に編集部作成)

「人を巻き込むのはそう簡単ではありません。地域活性のモデルとして有名な海士町でさえ20年以上かけて今の状態ですが、人を巻き込んでいくことはいまだに課題という話も聞きました。一朝一夕に変化があるわけではありません。一般的にコアなメンバーづくりに1~2年、プロジェクトを起こし事業化するには急いでも4~5年はかかるようです」(島村さん)

巡の環・阿部さんは島に移住し、最初の1年はとにかく島をウロウロ歩き回り、人をつかまえては呑み歩いていたとイベントで話していた。

「頻繁に東京へ出張すると“信頼貯金”が目減りし、『結局都会に戻るんだな』などあらぬ誤解を受けてしまうため、信頼貯金をするためにまたウロウロ歩き回る、その繰り返しです。そうしないとあっけなく破綻してしまいます」(イベントでのエピソードより抜粋)

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NPO法人ミラツク 代表 西村勇哉さん

それを受け、西村さんは「地域に住んでいる人が自分たちで何とかしようとしていることがまず土台になければいけない」と前置きし、さらに「外から来た人がそれを食いつぶす関わり方ではなく、活かす関わり方を見つけていく“積み上げ式の関係性”が必要」と指摘する。

「相手が受けいれてくれるからといってガンガン持ち込み、押し付けるようなことをすると、お互いに疲弊します。そうではなく、地域の人たちがやろうとしていることをそのまま盛り上げるような関わり方をすると、良いサイクルが回りはじめるはずです」

築いた信頼を価値にどう転換するか

企業の立場から考えてみると、社員が地域で働くことによって新しい価値を創出するためには、どのように地域との接点を探ればいいのだろうか。富士通デザインの高嶋さんは「地域密着型リビングラボ」を提案する。

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見えない気づきをまとめるためプロジェクトメンバーでワークショップを繰り返した。気づきの数だけふせんが張り出された

「企業がいきなり地域に投資をし、人を動かすことはまず無理です。そこで、企業と地域がテストケースとして共創を試すことのできる場所を設定すれば、それによって人の交流が生まれ、地域との強い絆が結ばれる。そんな方向性が見えてきました」

さらに、数年かけ地域との関係性を築いた企業があったとする。その先、どうやって価値に転換するのか。「ここが工夫しどころ」と西村さんは続ける。

「そこから追加で投資コストをかけられるかどうか。それを価値に転換して市場に出せている企業はまだ少ない。関係性の構築と価値への転換ではまったく違うスキルを要するので、プロジェクトのステージによって人を変える工夫をしてもいいのかもしれません」(西村さん)

前向きに動いたとしてもプロジェクトを立ち上げ、事業化のフェーズに乗せるには4~5年はかかる。企業としては相応の覚悟がいる取り組みになると、肝に銘じておかなければならない。

自分のやりたいことを仕事にするために

今回のフィールドワークは企業の地域への溶け込み方のヒントのほか、個人の仕事観にも大きな示唆を与えた。高嶋さんはシンプルだが重要な確信を得たという。それは「自分のやりたいことを仕事にするに尽きる」ということ。

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ワークショップではインタビュー対象者の会話をすべて書き起こし、そのときの写真とともに掲示

「もちろん“自分のやりたいことを仕事にしたい”という気持ちだけでは、ビジネスマンとしての仕事が成り立たないのは当然です。けれども、自分が本当に何をしたいのか、強いモチベーションに支えられた“自分ごと”を“会社ごと”にするくらいの力をつけなければいけないのかな、と。その出口の1つとして“地域で働く”というテーマがあるのかもしれません」

島村さんは「和を乱さない。丁寧に人と接することができる。自分をさらけだせる。そんな“田舎センス”を持っている人って、いると思うんです。行ってみてはじめて気づくこともある。その機会すらないのはもったいない」と話す。

自分のやりたいことを仕事にする。その結果、今までにない新しい価値を創出できるなら、企業としてもそれを促すしくみをつくるのにやぶさかではないだろう。たとえば、すでによく知られたGoogleの業務時間の20%を新しい作業に回すことのできる“20%ルール”という事例があるように、勤務時間のうち何割かは目前の業務以外の活動に時間を割くことが認められている。

企業が動いたその先に企業、個人、地域それぞれにメリットをもたらす働き方の可能性が見えてきた。

横ならびの働き方を変える「地域」の可能性

新しいワークスタイルの実現は「“みんなで同じ場所に集まり、同じように働く”前提から離れられるかどうかがカギ」と西村さんは考える。

「離れられなければ、いくら形だけモバイルツールを導入しても、たぶんいつまで経っても変わりません。程度は違えど“みんなで同じように働かなくてもいいんじゃない?”と、実は誰もがそう思っているのではないでしょうか。誰がそれを言いはじめ、火中の栗を拾うのか。誰も言えないのなら、今回の研究が代弁できるかもしれない」

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「どうやって労務を管理するのか」「セキュリティはどうなる」――。“新しい働き方”をテーマにした議論ではよくある問いだが、それはICT技術の進化によって解決できる課題だと、3人は口を揃える。同じ場所に集まらなくても、各々のワークスタイルに応じて働きながら組織として新しい価値を創出し、人事管理とセキュリティも保持する。両立の道筋は探れるはずだ。

3回実施したワークショップの参加者から出されたダイアローグのテーマはおよそ40個。地方移住や地域活性がテーマのものもあったが、より切実な「地方に住む親の世話と仕事の両立」という課題など、少子超高齢社会を表すテーマが多く存在した。また、参加者に行ったアンケートでは、「企業はもっと地域で働くことにシフトしたほうがいい」との回答は66%に及び、多くのワーカーが横ならびのワークスタイルに疑問を感じていることを感じ取れた。

その突破口の1つが「地域」になるかもしれない。そんな兆しが、確かに生まれ、それがつながりだしていることが、この研究の最大の収穫だったのではないだろうか。

レポートダウンロードはこちらから
今回の研究の概要や得られた結果をまとめたレポートは、こちらからダウンロードいただけます。
※データの出力については検証を行っておりますが、利用は自己責任でお願いいたします。

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地域×ワークスタイル研究 サマリー版(pdf形式)

イノベーターから選ばれる“地域”、2つの条件 ――これからのワークライフスタイル探求プロジェクトまとめ(前編)

関連リンク
ハバタク株式会社
GO ONプロジェクト
株式会社めぐるん
株式会社巡の環
NPO法人ミラツク
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