あしたラボUNIVERSITY

【寄稿】アイデアのかけ算でうまれる集合知 -学生・社会人の共創プロジェクトから分かったこと-

2015年10月23日



【寄稿】アイデアのかけ算でうまれる集合知 -学生・社会人の共創プロジェクトから分かったこと-

今年4月から7月にかけ『あしたラボUNIVERSITY』プロジェクトの一環として、神戸大学の学生と社会人による共創プロジェクトを実施しました。プロジェクトの核となったアイデアソンについて、共創パートナーである神戸大学大学院システム情報研究科准教授の藤井信忠さんに、研究対象の1つである「集合知」の視点から寄稿していただきました。

アイデアソンと集合知

「アイデアの『足し算』より『かけ算』」、「登山に似ていた」、「エンドレスなボケあいからうまれる何か」。

これらは、今回神戸大学×富士通の共創プロジェクトで実施したアイデアソンの決勝プレゼン終了後に作成してもらったリフレクションワークシート(講義後に感想や理解度、疑問などを受講者からフィードバックしてもらうためのシート)から、「わたしにとっての集合知とは○○○である」という設問の○○○部分を抜粋したものです。

決勝プレゼン終了後のリフレクションワークシート記入の様子
決勝プレゼン終了後のリフレクションワークシート記入の様子

私の研究対象のひとつである集合知(Collective Intelligence)は、集団を形成することによって創出される知性のことです。個体そのものでは知的とはいえないアリや粘菌が、群れ・集団を形成すると知的に振る舞う点に注目が集まっていました。いわゆる「群知能」です。

さらに近年、主にインターネットを媒介とし、人間個々の知を集合することで専門家の知を上回る事例があることが報告され、再び着目されています。事例としてはウィキペディアやオープンソース・ソフトウェアなどが挙げられます。アイデアソンも参加者の直接的なコミュニケーションが主となりますが、チームを構成する参加者の断片的な知を集合することによりアイデアを創出する集合知の過程として捉えられると思います。

集合知視点から見る3つのポイント

リフレクションワークシートを見ていて、「なんとも本質を突いているな」と感じました。今回のアイデアソンは実際にその過程を経験してもらい、集合知の観点から捉え直すことが狙いでした。参加者の答えを手がかりに、集合知的観点からまとめると、今回のアイデアソンは以下の3つのポイントで特徴づけられると思います。

アイデアソンで実施された「アイデアカメラ」
アイデアソンで実施された「アイデアカメラ

1. 創出されるアイデア:
「アイデアのたし算よりかけ算でうまれる何か」
「個々の知よりも価値が高まった知」
「意見の相乗効果」

上記のようなまとめは、アイデアソンの結果として創出されるアイデアの価値に着目しているといえるでしょう。これこそが現在ハッカソン・アイデアソンが着目されている主たる理由だと思うのですが、部門内、社内などの顔見知りのグループからだけでは出てこなかったアイデアが創出されることを期待しているものです。ウィキペディアやオープンソースのような集合知、あるいはアリや粘菌が示すような集団としての知性がその例だと思います。

2. 成長する個人:
「登山に似ていた」
「新たな自分の発見」
「多様性」

“登山”という表現は、アイデア創出の苦しみとその喜びを表現したようです。

これらのまとめは集合知を生み出す集団における個人と、その成長過程に着目しているといえるでしょう。ハッカソン・アイデアソンに参加した人の成長を社内教育、大学教育へと応用することが試みられています。ウィキペディアなどでは数年~十年単位、生物でいうと何万年という進化過程の結果として個体のなかに獲得されるものです。

今回のアイデアソンも大学院の講義の一環として実施しました。教科書に載っている知識の伝承ではなく、課題・問題をみずから発見・設定し、それらを解く手段を選定し、実際に解いてみる。そして可能であれば、その成果を社会に投げかける。その過程を通じて個人のなかに形成される何かこそ、大学教育において滋養すべきものだと思っています。

プロトタイプでアイデアを形に
プロトタイプでアイデアを形に

3. 互いの関係性:
「エンドレスなボケあい」
「ピンボール」
「人との関わりあい」

これらのまとめは「集合知を創出する複数の個人間の関係性」に着目しているといえるでしょう.ハッカソン・アイデアソンでいうと意見を出し合い、時にはぶつけ合う過程そのもの。ウィキペディアなどではインターネット、アリの集団でいうとフェロモンが相当するコミュニケーションチャネルを介して行われる情報のやりとり。実はこれこそが集合知の本質だと思っており、明らかにしたいテーマです。

例えば、これまでの研究でも人と人の間の相互作用とその構造に着目し、ネットワーク分析と計算機シミュレーションを組み合わせることで、製品やサービスの普及過程、口コミの拡がりなどの社会的な現象を計算機の世界に仮想的に作ってみて理解するということに挑戦してきました。いわゆる構成論的アプローチです。そこで今回、アイデアソンを教育に用いるのと同時に研究の対象とすることにしました。

我々がこれまで手がけてきたシステム的方法論で集合知が創出する過程を明らかにし、制度設計をしてみたいのです。いざやりはじめてみるとなかなか骨太で苦労しそうですが、そこは登山ですので、地道に登っていこうと学生と議論を始めています。

寸劇を交えた決勝プレゼンの様子
寸劇を交えた決勝プレゼンの様子

さて、決勝に進んだ4チームのアイデアを11月に神戸で開催される「神戸ITフェスティバル」に出展させてもらえることになりました。講義はキッカケでしかありません。社会と相互作用して、アイデアそして学生個人がさらにどのように発展していくか。ぜひ、会場に足をお運び頂き集合知のプロセスに積極的に参与して頂ければと思います。

藤井 信忠(神戸大学大学院 システム情報学研究科 准教授)

■関連リンク
神戸大学
FUJITSU JOURNAL
神戸ITフェスティバル


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