あしたラボUNIVERSITY

“一人称的”な大学生の課題を、共創で発展させる ——あしたラボUNIVERSITY 2015年度成果発表会(前編)

2016年3月29日



“一人称的”な大学生の課題を、共創で発展させる ——あしたラボUNIVERSITY 2015年度成果発表会(前編)

2016年3月7日、あしたラボUNIVERSITYの2015年度成果発表会において、アイデアソン「大ガッコソン!」の決勝プレゼンテーションが開催された。横浜・神戸の両会場がから生まれた24のアイデア。このなかから成果発表会に進んだのは6つのチーム。学生たちはアイデアソンにどんな「大学の課題」を持ち込み、2030年の「みらいの大学」にどんな可能性を見出したのだろうか。前後編でお伝えする。

後編はこちら

情熱枠を採用! 2チームを加えた6チームに

あしたラボUNIVERSITY 「2015年度成果発表会」に出場したのは、2月18・19日に横浜・神戸の両会場で同時開催された「大ガッコソン!」の最優秀賞・優秀賞チームの4つ。加えて、成果発表会直前、事務局から「情熱枠」なるものについてアナウンスがあった。

横浜・神戸の各会場で受賞には至らなかった参加チームから「アイデアソン終了後も継続してアイデアブラッシュアップをしていた。審査対象外でよいので、ぜひ発表の場を!」との申し出があったという。こうして、事務局の計らいにより、「受賞チーム枠」4チームに「情熱枠」2チームを加えた、計“6チーム”のプレゼンが審査対象となった。

●2015年度成果発表会 出場チーム(発表順)
神戸会場 情熱枠 「アーバンシンドローム」
横浜会場 情熱枠 「チーム迷走中」
横浜会場 優秀賞 「#ロッキー」
神戸会場 優秀賞 「まっちんぐマチコ先生」
横浜会場 最優秀賞 「めがねっ娘」
神戸会場 最優秀賞 「知恵袋I」

学生の立場から見た「大学の価値」を知りたい

そもそも今年の「大ガッコソン!」は、九州大学名誉教授・村上和彰さんが会長を務めるサイエンティフィックシステム研究会(SS研)に端を発する。SS研とは大学・研究所など、科学技術分野のコンピュータ利用機関を主体とした任意の研究会である。

②
サイエンティフィックシステム研究会 会長 村上和彰さん

「大学の環境にこれからもっとICTが導入され、さらにクラウド化が進んでいけば、たとえば、大学間でデータを共有できるような、ダイナミックなこともできるようになるかもしれません。ではデータという切り口で考えたとき、そんな未来の大学の環境下で、学生たちにどんな可能性を提供できるのか」(村上さん)

それを探ることを主目的に、SS研にタスクフォースが結成された。

「そんな議論を繰り広げていくなかで、逆に、学生の立場から見たらどうなのか、ということになった。彼らが大学にどんな価値を感じ、どんな学びを望んでいるのか。それを知るための場が、今回のアイデアソンだったんです」(村上さん)

教職員に提案できるフィールドSEを目指して

村上さんらが昨年度のあしたラボUNIVERSITYの活動を知ったことから、富士通の共催で「大ガッコソン!」が企画された。その橋渡し役となったのが、富士通株式会社行政・文教システム事業本部(タスクフォースメンバー)だ。

同社のなかでも、小中高や大学向けの教育ソリューションを専業とする同部門「文教チーム」は、企画・運営サイドから「大ガッコソン!」をサポートすることとなる。実際のアイデアソンにも社員を送り込み、学生たちのナマの声を聞こうと試みた。その経験は、富士通エンジニアにとっても、大きなメリットを生んだ。

同事業本部・文教第三ソリューション統括部第三ソリューション部の荒木隆太朗さんは、社会人2年目の25才。高等専門学校を卒業後に富士通へ入社したフィールドSEだ。社会人になってはじめて大学の環境に触れるようになったという荒木さんは、日頃、大学の教職員を顧客としている。

③「大ガッコソン!」神戸会場に参加した、富士通株式会社 行政・文教システム事業本部 荒木隆太朗さん(写真左)

「お客様から要望を聞くばかりではなく、大学を運営する側の立場になって、大学生が本当に望んでいる環境を提案できないといけない」。タスクフォースで抱えていた課題は、富士通のフィールドSEにとっても課題だった。

「フィルターを通して学生を知るのではなく、実際の価値観に触れることができました。これを糧に、大学生が本当に必要としている教育やそれに付帯する環境を考え、どんどん提案していけるフィールドSEになりたいです」(荒木さん)

いまの学生の関心事は「一人称的」?

タスクフォースには、柏崎礼生助教(大阪大学)、近堂徹准教授(広島大学)、八重樫理人准教授(香川大学)、小林真也教授(愛媛大学)ら、国立大学の教員も参加している。

4人の先生とも、村上さんと同様「大学をどうしていくのか、議論は大学のなかでもしきれていない」「アクティブラーニングに対する取り組みが進むなか、インフラとして何が必要なのかも考えないといけない」「学生が何を期待しているのか、また、何があればおもしろいと思うのか未だ不明」など、口々に現場レベルの課題を感じていた。

④SS研TF先生(上左)柏崎助教、(上右)八重樫准教授、(下左)小林教授、(下右)近堂准教授

横浜会場には柏崎先生が、神戸会場には八重樫先生がキーノートスピーカーとして登場するなど、成果発表前から学生たちのアイデアに目を通していた。アイデアソンを通じて、学生たちは大学に何を望んでいたか。

先生たちが口を揃えるのは「彼らの関心事は一人称的で、当事者の感覚だった」ということだ。

たしかに横浜・神戸会場から生まれた24チームのアイデアには、「将来の自分探し」「単位の取得」「職業に適した学科のマッチング」など、ICTの利活用を“一人称的”にとらえているものが多かった。しかしタスクフォースはそのことを否定的にとらえているわけではない。

村上さんも「もちろん、大学が単なる就職予備校になってしまってはいけないけれど」と前置きしたうえで次のように話す。

「最適な人生設計のためにICTを使う。それが今の多くの学生さんたちの価値観なのかもしれません。でも、そもそも学生が何を考えているのか、を知ることが私たちの目的。学生の姿を知ることに、おおいに役立ったアイデアソンでした」

⑤各チームの想いを丁寧な質疑で掘り下げていく、村上和彰さんら「成果発表会」審査員のみなさん

こうした価値観を知ったタスクフォースメンバーは、今後もさらなる議論を重ね、大学へのICT導入のアイデアを発展させていく予定だ。

村上さんは成果発表会の総評で、学生たちにこんな感想を伝えた。

「自分探しは、教育の本質です。何をやりたいのか、常に考える必要があるし、考えるのにも、そのための能力が必要となる。しかしそれをすべてAIに任せてしまってよいのか、そこには議論の余地があり、『自分で決める』ということを身につけさせるのが、大学の役割なんだと思いました。大学として何が提供できるのか。それが従来の価値観とどう違うのか。これからも学生のみなさんと考えていきたい」

学生と社会人で考え抜いた「みらいの大学」。横浜・神戸で生まれた24のアイデアの頂点に輝いたアイデアとは? 後編では、「大ガッコソン!」グランプリ受賞チームのアイデアを掘り下げるとともに、アイデアを持ち込んだ大学生に話を伺い、アイデアソンそのものの価値にもフォーカスします。

後編はこちら


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