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他者からの「共感」が未来のイノベーターに勇気を与えた ——あしたラボUNIVERSITY 2015年度成果発表会(後編)

2016年3月29日



他者からの「共感」が未来のイノベーターに勇気を与えた ——あしたラボUNIVERSITY 2015年度成果発表会(後編)

6チームがプレゼン5分+質疑応答5分の発表を終えると、九州大学名誉教授・村上和彰さん、富士通・小野弘之執行役員専務、松本端午執行役員常務、3名の審査員が別室での協議に入った。そして小野弘之執行役員専務の口から「2015年度成果発表会グランプリ」受賞のチーム名が告げられる——。グランプリ受賞チームのアイデアはどんなものか。後編では、グランプリのアイデアを持ち込んだ大学生に話を伺った。

前編はこちら

グランプリは「知恵袋I」——2030年、大学は地域の“知恵袋”になる

「大学にもステークホルダーがたくさんいて、学生側の価値観だけじゃなく、地域住民の価値観を取り入れた。グランプリ受賞チームにはそれがあった」

成果発表会の総評で、ゲスト審査員である九州大学名誉教授・村上和彰さんがそう評価したのは……、グランプリを受賞した、神戸会場最優秀賞チーム「知恵袋I」である。

⑥グランプリ発表の瞬間。会場は、歓声と拍手に包まれた

「2030年、大学は地域の“知恵袋”として、地域住民の問題を解決する場になっているはずです」——。そんな提言からはじまった「知恵袋I」のプレゼンは、次のようなものだ。

発表したのは、地域住民の困りごとや地域の課題を、地域コミュニティーの中心にある大学、そしてその学生たちが主体的に解決していく、というシステム。大学と地域をつなぐネットワーク上に、地域住民に困っていることが“雲”として発生。“雲”はその内容を鑑みて、問題を解決するのに適した学部・学生を自動的に選択し、学生たちは、各々の学問分野を活用して、その問題解決にあたる。

⑦会場の注目をぐっと惹きつけた「知恵袋I」のプレゼンテーション

たとえば、旅館業を営む地域住民が、「インバウンド向け」のアイデアを求めていたとしたら——。

住民の悩みを表した“雲”は、まず文学部へ。雲の声に誘われるようなかたちで、文学部の学生がじっくりとフィールドワークしながら、外国人向けの英文集を作成した。一方で“雲”は大学のデザイン学部にも渡る。こちらではデザインや色彩のことを学びながら、学生は外国人観光客でもわかりやすいピクトグラムのデザインを作成した。

住民にとっては、学生の提案を選択することで抱えていた問題が解決する。解決したら“雲”は消えるが、代わりに解決した住民の“幸せ度”が「幸せバロメーター」として可視化される。そのことで解決にあたった学生のモチベーションは向上。学部で解決できない課題がやってきた場合を想定し、他大学との連携を図るというプランも盛り込まれていた。

地域活性+大学生のモチベーション+学問の有効活用

アイデアは、大学3年生・有馬虹央さんがアイデアソンに持ち込んだものだ。鹿児島の離島で生まれ育ち、和歌山大学に入学した有馬さん。「もともと自分の地域を活性化させたいという思いがあった」と、観光学部地域再生学科を選択した。

⑧「大ガッコソン!」グランプリを受賞した「知恵袋I」の有馬虹央さん(大学3年生)

大学生になった有馬さんが大学生活を送るなかで感じたことは、自分たち学生が学びに対してモチベーションが低いということだった。その解決策として「地域課題解決に取り組めば、学生の学びに対するモチベーションも上がる」と考えた。

ある文献も、有馬さんに重要なヒントを与えた。2014年に発売された『ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問——穴からのぞく大学講義』(大阪大学出版会)だ。タイトルのとおり「ドーナツを穴だけ残して食べる方法はあるか?」とのネット掲示板での書き込みがきっかけとなった同書。「ドーナツの穴」の難題に大阪大学の教員・学生が挑み、それぞれの学問分野から超真剣な解答が寄せられた。

「学びっておもしろい。私も観光学部にいることに誇りを持っている。社会に役立つことは何だろう、とあらためて考える機会になりました」

地域活性、大学生のモチベーション、そして、学問の有効活用。それらの観点を組み合わせて思いついたのが「知恵袋I」の原案となる「地域の課題を大学で解決!」というアイデアだった。

いいアイデアは、かならず共感を呼ぶ

神戸会場では同志も現れた。「地域の課題を大学で解決!」は有馬さんイチ押しのアイデアだったが、初日のアイデアスケッチでは奇しくも別のアイデア(「卒論に投資して下さい!」)のほうに多くの票が集まってしまった。しかし「ある大学生の女の子が私のところに来て『地域の課題を大学で解決!』のほうがおもしろい、って共感を示してくれたんです」。

チームにはその女子学生と、2名の富士通社員が加わった。当該の女子学生は体調不良により大会途中から不参加となるが、この日の成果発表に必要な、データの追加、プレゼン資料のつくり直しなど、メールなどを通じて手伝ってくれたという。

⑨神戸会場での「知恵袋I」。比較的人数が少ないチームながら、課題設定に優れたアイデアで最優秀賞を獲得した

また、有馬さんの大学の友人・田中麻莉子さんも、神戸会場では別チームに入っていたが、成果発表会への準備にあたり「知恵袋I」に参加。プレゼンにも登場した。

「私も観光学科にいるので、地域コミュニティーのなかの大学の大切さはわかっているつもりでした。でも単位の取りやすさとかで講義を選んでしまう自分もいる。主体的に学ぶというアイデアに共感したから、有馬さんのチームに参加させてもらったんです」(田中さん)

⑩「知恵袋I」チームに参加した田中麻莉子さん(大学3年生)

グランプリを受賞した有馬さんは、およそ1カ月間のアイデアソンで、大学と自分の新たな向き合い方に気づいたようだ。

「なんで勉強するのか、学びそのものに対する意義を実感しきれていなかったけれど、アイデアを磨き上げる過程のなかで、学ぶ意義は『夢を実現する力を培うこと』なんだと思いました」(有馬さん)

いいアイデアは、かならず共感を呼ぶ。それもアイデアソンの醍醐味だ。「大ガッコソン!」での経験は、これからの地域創生を担う彼女たちの背中を力強く押してくれたはずである。

⑫全体写真

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