UXで考えてみるプロジェクトー私たちの生活と伝統工芸の関係性ー

【UXで考える伝統工芸4】プロジェクトから見えてきた「本染め」がもたらすユーザー体験、現代生活との新しい関係性とは

2016年6月1日



【UXで考える伝統工芸4】プロジェクトから見えてきた「本染め」がもたらすユーザー体験、現代生活との新しい関係性とは

こんにちは。UX THINKING PROJECTメンバーの横田です。「伝統工芸を考える」一連の取り組みも、ついに終わりを迎えました。今回はこれまでの取り組みを振り返り、プロジェクトを通じて検討してきた伝統工芸と現代の生活の新しい関係性、ユーザー体験についてご報告します。

これまでの振り返り

これまでのレポートでもご紹介したように、職人、デザイナー、エンジニア、バイヤー、学生、外国籍の方などさまざまな人が集まり、本染めの良さ、暖簾やのぼりといった工芸品としての良さについて考えてきました。また、さまざまな場所のフィールドワークなどを通じて「本染め製品」の現代の生活における価値、役割について議論を深めてきました。

そして、「大切なときを共に彩る」というコンセプトのもと、いくつかのアイデアをプロトタイピングし、伊勢丹新宿店にて開催したイベントにおいて、生活者のみなさんにお披露目し、貴重なご意見を数多くいただくことができました。

こうした取り組みから、私たちは「本染め」と「工芸品」の特長について以下のように整理しました。

〈本染めについて〉
・プリント製品に慣れている私たちにとって、「本染め」には高級感を感じる
・職人が1枚1枚染めているという背景、物語(文脈)に質の高さ、所有欲を感じる
・ふだんの生活に少しの「本染め」があるだけで豊かな気持ちになる、彩りが生まれる
〈工芸品について(本染めされた生地を使った工芸品)〉
・昔と用途が変わらない(新しい活用が検討されていない)
・生活に当たり前のように溶け込んでいる、取り回しが良い
・さまざまな色に染められ、綿、麻、絹といった布製品は形を自由に変えることができる

「本染め」は、他の伝統工芸にも共通してみられる「特別感」や「物語」といった「質の高さ」をユーザーに感じさせるもの。私たちの日常生活には、そういった「質の高い」製品はあまり浸透していません。伝統工芸は、日常生活を豊かに彩るという大切な役割を担っていると強く感じました。

また、「工芸品」に着目してみると、綿、麻、絹といった布製品という素材が、多様化したライフスタイルに柔軟に適応できるポテンシャルを持ち、アイデア次第では新しいユーザー体験を生み出せると感じました。
今回の取り組みから、さまざまなアイデアが生まれた今回の取り組みから、さまざまなアイデアが生まれた

見えてきた「本染め製品」の可能性

「本染め」という技法に、機能的で生活に溶け込みやすい布製品の取り回しの良さ、柔軟さが加わることで、現代の多様化するライフタイルに溶け込みやすく、使用しやすいことが「本染め製品」の強みであり、可能性だと感じます。

その具体例として、私たちが検討を進めた2つのプロトタイプをご紹介します。

1つはカップスリーブです。

これは柿渋というコーヒーの成分と同じタンニンで染めたもので、防水性があり、コーヒーのカップスリーブとして機能的な役割を持っています。本染めならではの技法と布製品の柔軟さがあるからこそ生まれた製品です。

カップスリーブ

2つめは屏風です。

これは、暖簾の機能である「空間を緩やかに仕切る」という昔からの使われ方をヒントに、コワーキングスペースなどオープンな環境に緩やかな仕切りを生み出し、空間をつくり上げるものです。また、折りたたんで照明を囲えばランプシェードにも変わる。こちらも本染めの特徴である「透け感」と布製品の柔軟さがあるからこそ生まれた製品だと言えるでしょう。

屏風

本染め製品がもたらすユーザー体験

このように、本染めで染め上げられた製品はさまざまな状況に合わせて形を変え、私たちの生活(体験)を豊かに彩ることができます。

本染めがもたらすユーザー体験は、この「多様性を持ち、生活を豊かに彩ることができる」ことだと結論づけました。

日々の生活にちょっとした彩りを与え、機能的で生活に溶け込む。ライフスタイルが多様化し、多くのユーザーに共通の体験を提供しにくくなっているなか、私たちが考えた「本染め製品」がもたらすユーザー体験は、個々人の多様なライフスタイルに合わせた体験を提供できるため、今の時代にとてもフィットしたものになったと感じます。

プロジェクトを振り返って

私はふだん、富士通グループでデザイナーをしています。UX THINKING PROJECTは、金沢の老舗「染元平木屋」さんと、これまでICTを中心にUXを考えてきた富士通グループのメンバーが中心になって、活動を進めてきました。私たち富士通のメンバーにとって、今回のプロジェクトは、「UXで考える取り組み」がICTに限らず、社会のさまざまな問題を解決できる可能性があるのではないか、それを実証したい、という想いに駆られてはじめたチャレンジでした。

印刷技術の発展や、伝統行事の減少、生活様式の洋風化などの影響により、人々と伝統工芸の関係性が失われつつあるなか、今回のプロジェクトでは、本染め製品がもたらすUXを「多様性を持ち、生活を豊かに彩ることができる」ものであると結論づけました。そして解決のための多くのアイデアが生まれました。UXで考える取り組みは、ICTに限らず、さまざまな問題を解決できるものであると、可能性を実証できたのではないかと思っています。
UXで考える取り組み今回の検証の様子。子どもが新たに伝統工芸に出会い、触れる機会も創出できた
UX THINKING PROJECTでは、今後も「UXで考える」取り組みを通じてユーザーとの新しい関係性をデザインしながら、社会のさまざまな問題を解決していくことに挑戦していきます。

次回は、今回の取り組みにご協力いただいた染元平木屋さんと伊勢丹さんに取り組みを振り返っていただき、ご意見を伺います。お楽しみに。


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