あしたラボUNIVERSITY

ハッカソンで“勝つ”ための実践講座 ——「あしたラボUNIVERSITYハッカソン! 」(2)

2017年3月15日



ハッカソンで“勝つ”ための実践講座 ——「あしたラボUNIVERSITYハッカソン! 」(2)

FUJITSU Knowledge Integration Base PLYのFABスペースにある最新鋭レーザーカッターを使い、ハッカソン参加者が箱のパーツを切り出していく──。これは「ハッカソンで“勝つ”ための実践講座」の1つ、ものづくり講座のワンシーンだ。本格的なデジタル・ファブリケーションに、参加者の多くが胸を躍らせた。しかしこれらの企画は、参加者を楽しませるためだけに用意されたわけではない。目的はあくまでハッカソンで“勝つ”こと。vol.2では、初日の目玉企画となった「ものづくり」「ビジネス」「デザイン」の講座の内容を振り返るととともに、講座を受講した学生の反応に迫っていく。

初のハッカソン! イベントダイジェスト ——「あしたラボUNIVERSITYハッカソン!」(1)
開校宣言から2年半、あしたラボUNIVERSITYから見えたもの ——「あしたラボUNIVERSITYハッカソン!」(3)

ここでつくった“粒”を組み合わせ、何を創造するかは君たち次第

ものづくり講座を担当したのは「お茶の間にテクノロジーで笑顔を」を合い言葉に“お茶の間博士”を自称する、富士通アプリケーションズ株式会社の手塚徹さんだ。

FUJITSU Knowledge Integration Base PLYのFABスペースでレーザーカッターを使用。ほとんどの参加者にとってはじめてとなる体験
FUJITSU Knowledge Integration Base PLYのFABスペースでレーザーカッターを使用。ほとんどの参加者にとってはじめてとなる体験

「何か最終物をつくる、そのもとになる“粒”を教える講座です。粒が、単体で何かをしてくれるわけじゃない。これらを組み合わせて、何を創造するかは君たち次第です」(手塚さん)

2時間×2コマで行われた実践講座だが、ものづくり講座だけは2コマそれぞれ違う内容に。片方のコマは「ソフトウェア編」、もう片方のコマは「ハードウェア編」として開催された。

ものづくり講座を担当した手塚徹さん。「ハッカソンではセレンディピティ(素敵な偶然に出合ったり予想外のものを発見したりすること)が起こる。ここでの出会いを大切にしてください」
ものづくり講座を担当した手塚徹さん。「ハッカソンではセレンディピティ(素敵な偶然に出合ったり予想外のものを発見したりすること)が起こる。ここでの出会いを大切にしてください」

ハードウェア編で参加者は、箱型のカッティングデータをつくる方法と、レーザーカッターでカッティングを行う方法を教えられ、最終的には思い思いのサイズ・形の「箱」を組み立てた。

その後はマイコンボード「Arduino」の実習だ。Arduino基板を自分のパソコンにつなげて、手順書に沿いながら電子工作プログラミングを実践。プログラムを変えたり、ブレッドボードとジャンプワイヤーの配線を変えたり……。「LEDを点滅させる」「ブザーを鳴らす」「赤外線リモコンの受信機にする」といった動作が起こるたび、特に学生たちから驚きの声があがった。

Arduino基板とブレッドボード、ジャンプワイヤーを使ってLEDを点灯させる(写真)など、ソフトウェア編では本格的な電子工作プログラミングを体験
Arduino基板とブレッドボード、ジャンプワイヤーを使ってLEDを点灯させる(写真)など、ソフトウェア編では本格的な電子工作プログラミングを体験

ソフトウェア編は、短時間でアプリをつくるための実践講座。動き・明るさ・温湿度などを検知できる各センサー等の専用タグ(MESHタグ)をアプリで制御する「MESH」、実際に動作するスマホアプリを試作する「Monaca」、そしてシングルボードコンピュータ「RaspberryPI+Node-Red」を使ったアプリ開発など、複数の開発にチャレンジした。

「ソフトウェア編だけでも、本当はこのすべてをきちんとやるとなれば1週間はかかる(笑)」とは手塚さんの弁。実際に動くものを披露しなければいけないハッカソンにおいて、必要不可欠なものづくりを学ぶ。その成果は、2日目以降の開発作業で随所に表れた。

ハッカソンでは、温湿度検知のMESHタグをよだれかけに使ったアイデアも。このほか「Arduino」や「Monaca」も随所で活用された
ハッカソンでは、温湿度検知のMESHタグをよだれかけに使ったアイデアも。このほか「Arduino」や「Monaca」も随所で活用された

「キレイ」「おもしろい」のゴリ押しでは勝てない

「ハッカソンで“勝つ”ための実践講座」は、ものづくり講座だけでない。アイデアをかたちにするプロセスに不可欠な「ビジネス」の講座の講師を担当したのは、株式会社富士通総研の佐々木哲也さん。

「自分が過去に携わったハッカソンを見ていても、ビジネスの観点が欠けているものが多かった。そういうアイデアは『キレイでしょ!』『おもしろいでしょ!』とゴリ押ししている印象を受けるもの。もうちょっとビジネスの観点を加えるだけで勝てるのに、と思うことがたびたびありました。だから、これからみなさんに体験してもらうのは、ハッカソンで勝つための道筋。すなわち、事業創造そのものです」

ビジネス講座の講師を担当した佐々木哲也さん。「たとえよいアイデアでも、それがきちんと実装できていなければそれまで。それがハッカソンです。夢を語るより、きちんとかたちにできているかどうかを競い合いましょう」ビジネス講座の講師を担当した佐々木哲也さん。「たとえよいアイデアでも、それがきちんと実装できていなければそれまで。それがハッカソンです。夢を語るより、きちんとかたちにできているかどうかを競い合いましょう」

ビジネス講座は実践的なワークの時間に移る。アイデアを事業創造の域にまで高める佐々木さんの実践的ワークは、いずれもリーンスタートアップ(編集部注:ビジネス開発手法のひとつ。最小限のコストで試作品を作り、顧客の反応をみて修正する。これを繰り返すことで素早く改良を続け、成功に近づけていくやり方)で必要とされるプロセスだ。

①ユーザーのイメージ像(ペルソナ)を作成
講座ではその練習として、人気アニメのキャラクターなどをペルソナに想定。価値観や行動パターンをワークシートに書き込んだ。

②価値命題の定義
ユーザーのどんな課題を解決し、どんな体験をもたらすプロダクトやサービスを提供するのか、フレームに当てはめながら価値命題を定義した。

③ユーザーテストとインタビュー
プロトタイピング後のユーザーテストを想定。複数名のインタビュアーが被験者役を相手に、特定の製品・サービスについて思考発話法(考えていることをすべて発話してもらう手法)を用いてインタビューを行った。

④ビジネスモデル
9つのブロックで構成されたビジネスモデルキャンバス(ビジネスモデル検討ツール)を使い、実際に成功を収めている製品・サービスのビジネスモデルを検証した。

ビジネス講座で使用された複数のワークシート。4つの実践的ワークを軸として、事業創造のあり方を学んだ
ビジネス講座で使用された複数のワークシート。4つの実践的ワークを軸として、事業創造のあり方を学んだ

「よいビジネスアイデアは、顧客の課題を明確にし、かつ、その解決方法が適切であるものです。そのためには、マス(大衆)のなかに“きっといる誰か”ではなく、“目の前にいる個人”に焦点を当てなければいけない」と佐々木さん。そのビジネスの本質は「半径3メートル」をテーマに掲げる今回のハッカソンでも大切にしなければいけないことだった。

「絵心ない」なんて言わないで! 絵心=画力、ではない

デザイン講座を担当したのは、富士通デザイン株式会社のタムラカイさんだ。通称はタムカイさん。同社デザイナーとして仕事をする傍ら、社外ではラクガキコーチとしても活動する。ラクガキ術を用いた数々のワークショップに講師として招かれ、ラクガキノート術(描くことを使って考え伝えるためのノート術)をまとめた著作もある。

デザイン講座を担当したタムカイさん。「さまざまな意見はありますが、ハッカソンで勝つのに重要なのはアイデア・企画が3、表現や技術、プレゼンが6、そして運が1。今回はいいアイデアを出し、ちゃんと“伝えられるようになる”ために必要なことを教えます」
デザイン講座を担当したタムカイさん。「さまざまな意見はありますが、ハッカソンで勝つのに重要なのはアイデア・企画が3、表現や技術、プレゼンが6、そして運が1。今回はいいアイデアを出し、ちゃんと“伝えられるようになる”ために必要なことを教えます」

タムカイさんの講座では、デザインの本質やデザイン思考についても踏み込んでいった。

「デザインにおける思考プロセスの体系化、それがデザイン思考と呼ばれるものです。でも、これがなかなかわかりにくい……。そこで、僕なりに違うアプローチを考えてみました」

タムカイさんが着目したのは川柳。「アイデアを考えるときはまさに玉石混交の状態ですよね。そこからいらないものをそぎ落としていくことがデザインなんですが、そのプロセスは川柳にとても似ている!」。

川柳の三要素。タムカイさんのプレゼン資料より
川柳の三要素。タムカイさんのプレゼン資料より

タムカイさんは川柳の三要素(うがち・かるみ・おかしみ)をデザイン思考に落とし込んで考えていく。

「うがちはいわば視点・課題設定、かるみは選択や伝え方、すなわち表現のこと。うがち(視点)とかるみ(表現)でアイデアが輝き、それがおかしみになる。特にこのうがちには、共感から得られる洞察(インサイト)がとても大切です」

その後、参加者は洞察のためのワークとして「エモーションマップ」を用いた課題の深掘りに挑戦。テーマのまわりに表情を描き、それらの感情を起点にしていくことで、深い洞察にたどり着いていく。

「ハッカソンでは創造的関係性が重要」と、A4用紙を折りたたんでできる「8マス自己紹介」、そして口・目・眉の形を組み合わせて100種類(5×5×4種類)の表情を描くラクガキ術(写真)を教えた

デザイン講座の受講生が行ったエモーションマップの作成。ここでテーマとしたキーワード「コンビニ」のまわりにチームメンバーがラクガキ術を使って表情を描く。それぞれの表情の台詞を吹き出しとして加えることで、感情を起点にした課題の洗い出しを行える
上:「ハッカソンでは創造的関係性が重要」と、A4用紙を折りたたんでできる「8マス自己紹介」、そして口・目・眉の形を組み合わせて100種類(5×5×4種類)の表情を描くラクガキ術(写真)を教えた/下:デザイン講座の受講生が行ったエモーションマップの作成。ここでテーマとしたキーワード「コンビニ」のまわりにチームメンバーがラクガキ術を使って表情を描く。それぞれの表情の台詞を吹き出しとして加えることで、感情を起点にした課題の洗い出しを行える

「よく『絵心がない』とかいいますよね。でも絵心という言葉の本当の意味は『絵を理解する能力』『絵を描きたいと思う気持ち』。絵心はイコール画力ではなく、誰にでもあるものなんです。僕はその言葉の意味にもう1つ『絵から感じる気持ち・感情』を加えたい。たとえば『公園』という単語だけで発想は拡がらないけれど、公園の絵があればそこから気持ち・感情が生まれる。そんな絵心こそハッカソンでは力を発揮するんです」(タムカイさん)

ハッカソンに実践講座を取り入れた理由

インプットワークとして行われたこれら実践講座は、あしたラボUNIVERSITY3年目における大きな“変化”だったといえる。

きっかけは、FUJI HACK(富士通グループの社内ハッカソン)に参加した社員が「もっとビジネスのスキルを学んで参加していたら……」と後悔していたのを企画・運営のメンバーが課題に感じたこと。講師には、ものづくり、ビジネス、デザイン各界スペシャリストを富士通グループの社員から選んだ。

これまであしたラボUNIVERSITYとはそれほど深い関わりがなかったタムカイさんとは、社内メディア運営をきっかけに2016年初頭に知り合ったばかりだった。

「デザイン思考を、デザイン思考という言葉を使わずにわかってもらうことは、僕のここ最近のテーマなんです。デザイン思考って知れば知るほど応用が利くし、すばらしいものなんですが、学生さんを含め、多くの人にそれがきちんと伝わらないもどかしさを常々感じていました。僕のラクガキも、単に描くだけではなく、描いて伝えるところまでを大事にしているし、アイデアソンやハッカソンもアイデアをきちんと相手に伝えなければ意味がない。そうしたことを今回の講座の内容に盛り込みました」(タムカイさん)

初日の実践講座を終えた2日目以降もハッカソンに立ち会っていた実践講座の講師たち。会社のビジネスをきちんと遂行したうえで“伝道師”として活躍するタムカイさんらの姿は、学生たちにとって理想的な社会人に映ったのかもしれない
初日の実践講座を終えた2日目以降もハッカソンに立ち会っていた実践講座の講師たち。会社のビジネスをきちんと遂行したうえで“伝道師”として活躍するタムカイさんらの姿は、学生たちにとって理想的な社会人に映ったのかもしれない

試行錯誤のハッカソン体験から得た気づきとは

山口県にある徳山工業高等専門学校情報電子工学科4年生の難波拓也さんは、これまで学校で電子情報通信を学んできた。

しかし、ハッカソン初日ではあえて「ものづくり講座」ではなく「ビジネス講座」を希望。結果的に「ビジネス」「デザイン」の2コマを受講することになった(編者注:2コマのうち1コマは希望の講座を、もう1コマはランダムに割り振られる)。

2日目以降の開発の時間も、エンジニア、デザイナーとチームを組み、難波さんはチーム唯一のビジネスプランナーを担当した。

徳山工業高等専門学校情報電子工学科4年生の難波拓也さん
徳山工業高等専門学校情報電子工学科4年生の難波拓也さん

「2日目のフィードバックを終え、いったん自分たちのチームのアイデアの足もとが見えなくなり、考えを大きく見直していきました。その点、開発中は講師の佐々木さんにも相談にのってもらえ、そのおかげで次第にビジネスプランも真剣に考えられるようになった。顧客やユーザーの価値を考えるのは複雑とはいえ、とても楽しいプロセスでした」

将来は「人を楽しませることのできる人物になりたい」という難波さんは、ハッカソンの体験をきっかけに、自分が目指すべき社会人像についても見つめ直した。

2日目、3日目もチームの一員として真剣な表情でビジネスプランを検討
2日目、3日目もチームの一員として真剣な表情でビジネスプランを検討

「高専にいると、どうしても『就職率100%!』とか甘い言葉に耳を誘われるけれど、就職できてもその先の道が保障されているわけじゃないですか。僕の場合、技術系のことを学んできたからといって、エンジニアの道だけがあるのではないと思っています。コンサルタントの道だって、デザイナーの道だって、さらには他の道だってあるはず。そんな気づきは、ふだん通っている学校ではなかなか体験できないことだと思います」

3つの実践講座、そしてチームで挑む開発体験。「あしたラボUNIVERSITYハッカソン! 半径3メートルから世界を変えよう」のプログラムは、参加学生たちに未来の自分の仕事について考えるきっかけも与えたようだ。

ハッカソン初参戦の学生たちに向け、適切なプログラム提供を図った「あしたラボUNIVERSITY」の企画・運営チーム。彼らがなぜ「半径3メートルの課題発見」をテーマに掲げたのか。最終回となる次回は、企画・運営チームに焦点を当て、“自前”のハッカソンをいかにしてつくり上げたのか、その方法に迫っていきたい。

開校宣言から2年半、あしたラボUNIVERSITYから見えたもの ——「あしたラボUNIVERSITYハッカソン!」(3)へ続く
初のハッカソン! イベントダイジェスト ——「あしたラボUNIVERSITYハッカソン!」(1)


ハッカソンで“勝つ”ための実践講座 ——「あしたラボUNIVERSITYハッカソン! 」(2)

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