あしたラボUNIVERSITY

開校宣言から2年半、あしたラボUNIVERSITYから見えたもの ——「あしたラボUNIVERSITYハッカソン!」(3)

2017年3月15日



開校宣言から2年半、あしたラボUNIVERSITYから見えたもの ——「あしたラボUNIVERSITYハッカソン!」(3)

あしたラボUNIVERSITYでは年度末のアイデアソン以外にも、これまで上智大学大分大学への出張授業、富士通フォーラムアイデアソン「edu&toy」神戸大学の共創プロジェクトなどを行ってきた。今回は「あしたのまちHack」(2015年2月)、「大ガッコソン!」(2016年2月)に続く、学生参加型の大規模イベント。しかも、あしたラボUNIVERSITYとしては初の「ハッカソン」である。そのチャレンジから見えた、あしたラボUNIVERSITYの成果とは……。

初のハッカソン! イベントダイジェスト ——「あしたラボUNIVERSITYハッカソン!」(1)
ハッカソンで“勝つ”ための実践講座」——「あしたラボUNIVERSITYハッカソン!」(2)

課題を考えるのにちょうどよい距離間は?

今回のハッカソン「あしたラボUNIVERSITYハッカソン! 半径3メートルから世界を変えよう」(以下、「あしたラボUNIVERSITYハッカソン!」)で「半径3メートルの課題発見」というテーマが掲げられたのは、なぜなのだろうか。発足当初からあしたラボUNIVERSITYの企画・運営を担当してきた富士通株式会社グローバルサービスインテグレーション部門戦略企画統括部の浜田順子さんは、その理由を次のように話す。

「1回目はまち、2回目は学校・学びをテーマにしたアイデアソンでした。2回のアイデアソンで実感したのは、学生や社会人が自分のなかから課題を見つけたときのパワーです。過去2回には離島出身の参加者さんもいて、その子たちはまちをテーマにしても学校をテーマにしても、自分の身近な課題を持ち込み、ともに大きな成果を導いていました」

富士通グローバルサービスインテグレーション部門戦略企画統括部の浜田順子さん。ハッカソンでは全体の進行役を務めた
富士通グローバルサービスインテグレーション部門戦略企画統括部の浜田順子さん。ハッカソンでは全体の進行役を務めた

「ビジネスの現場で、イノベーションとか『世界を変える』なんて言葉がたびたび語られますが、それを実現する第一歩は、自分を起点に考えるということが何より大事。私たちも過去2回のアイデアソンなどで『自分ゴト、自分ゴト』と参加者たちに散々言ってきたけれど、自分ゴトで考えてみることはなかなか難しいと感じるものです。ならば、テーマそのものをもっと身近なところから考えてもらったらどうなるだろうか──」

そこから「半径3メートル」というテーマが生まれた。自らの視界に入り、話そうと思えば話せる人との距離、それがだいたい3メートル。他人事にはしがたい課題を発見してもらうのには適切な距離間だ。

ハッカソンに欠かせなかった「共創の場」

1年目からずっと、ハッカソンにチャレンジしたい思いはあったという。

「しかし共創の考え方そのものを一緒に体験し、仲間を増やすことがそもそものねらい。それに加えてハッカソン、では参加者さんにとってハードルが高すぎるように思えました。しかし共創という言葉やハッカソン自体がかなり世のなかに浸透してきた今のタイミングならば、ハッカソンを銘打ってもチャレンジしてくれる方がいると信じました」と浜田さん。

実際にハッカソンには多様な人が集まった。なかには社会人学生の参戦者も。「学校の先生から『自分のプログラミング能力を試してこい!』と発破をかけられ、道場破り的なノリで参加してくれた方もいたそうです(笑)」。もちろんアイデアソンやハッカソン初体験の学生・社会人も多数参戦。初日の実践講座はそんな人も安心して参加できるようになるプログラムだったはずだ。

一方で、ハッカソンを開催するための“場所”の問題はすでにクリアされていた。2016年5月23日に富士通ソリューションスクエア内に開設したFUJITSU Knowledge Integration Base PLY(プライ)である。

富士通のオフィスビル、富士通ソリューションスクエアの2階部分に開かれたオープンコミュニティー。来館者を迎える2階エントランスとハッカソン会場を区切る壁はまったくない。ハッカソン期間中もビジネスや商談で来館した人が、足を止めて様子をうかがっていた。

エントランス側から見たハッカソン中の「PLY」の様子。ハッカソンでは主に中央のワークショップ&コ・ワーキングスペースが利用され、その奥にはものづくりのできるFABスペースがある
エントランス側から見たハッカソン中の「PLY」の様子。ハッカソンでは主に中央のワークショップ&コ・ワーキングスペースが利用され、その奥にはものづくりのできるFABスペースがある

開設以来ずっとPLY運営に携わってきた富士通グローバルサービスインテグレーション部門戦略企画統括部の武田英裕さんは、これまでのPLY利用者について次のように振り返る。

「昨年5月のオープン以来、社内・社外に対する認知向上に注力しながら、ミーティングのほかに『こういうことをしてもいいんだ!』と思ってもらうようなロールモデルを築いてきました。すなわち、共創のきっかけを生むセミナー、ワークショップ、そして今回のようなハッカソンなどです」

富士通グローバルサービスインテグレーション部門戦略企統括部の武田英裕さん。武田さんの後ろがFABスペース。企画・運営チームのメンバーでもあり、技術的なことで困っているハッカソン参加者にはPLYに遊びに来ていた富士通エンジニアを積極的にマッチング。参加者にとって心強い味方だった
富士通グローバルサービスインテグレーション部門戦略企統括部の武田英裕さん。武田さんの後ろがFABスペース。企画・運営チームのメンバーでもあり、技術的なことで困っているハッカソン参加者にはPLYに遊びに来ていた富士通エンジニアを積極的にマッチング。参加者にとって心強い味方だった

「すると富士通グループの社員のなかに、定刻の後にここで工作をしたり、お客さまとのミーティングに利用したりする人が増えてきました。PLYの利用を推進することは社を挙げた方針であり、はっきりと社員にも伝えられている。各部門のオープンスペースとしての活用も増えています」

利用者は昨年11月末の時点で1万人を突破。最近は予約を取ろうにも、数カ月先までスケジュールが埋まっている状態だ。

PLYのコンセプトは「知と知を織り成し、未来を紡ぐ共創実践の場」。待ち合わせをしながらここで生まれたプロトタイプを見たり触ったりできる「エキシビジョンスペース」、ハッカソンなどのイベントができる「ワークショップ&コ・ワーキングスペース」、ものづくりやプロトタイピングができる「FABスペース」、そしてアジャイル実践の場「リーンスタジオ」(セキュリティエリア)で構成される。

「社外からの見学者も増えています。展示されるプロトタイプに触ることができ、出会いや交流の場があり、実際にものをつくることもできる。それがプロジェクトにまで発展したときのリーンスタジオまである。さらにそこで何かが生まれたら、またプロダクトとしてPLYに展示される──、そんな循環や物語性に共感していただける方がとても多いんです」

PLYを彩ったグラフィックカタリストたち

PLYの利用者増加は「共創」へ取り組む空気感が富士通グループ全体に拡がっていることを示している。それに加え、社内にネットワークを築いていたこともあしたラボUNIVERSITYのチャレンジを後押しした。

たとえば、グラフィックレコーディング(通称・グラレコ)を担当したグラフィックカタリストチーム。ハッカソン全体の進行、3つの実践講座、キーノート、ミニ・アイデアソン&ハッカソンのアイデア発表の内容は、彼らの手でグラフィカルに記録・掲示され、参加者はいつでも振り返りを行えた。

初日に行われた佐々木哲也さんによるビジネス講座もグラフィックカタリストチームの手にかかればここまでわかりやすく視覚化される。グラレコ自体は最近こうしたイベントでたびたび活用される手法であるが、PLYという会場のほどよい大きさと相まってハッカソンにたしかな彩りを加えていた
初日に行われた佐々木哲也さんによるビジネス講座もグラフィックカタリストチームの手にかかればここまでわかりやすく視覚化される。グラレコ自体は最近こうしたイベントでたびたび活用される手法であるが、PLYという会場のほどよい大きさと相まってハッカソンにたしかな彩りを加えていた

グラフィックカタリストチームとの出会いは実に偶発的なもので、社内イントラネット(あしたのコミュニティーラボ[社内版])を通じて浜田さんがグラフィックカタリストチームの小針美紀さんと知り合ったことだという。実践講座のタムカイさんも同様の流れだった。「あしたラボUNIVERSITYは、いい意味で誰でも巻き込んでしまう、ちょっと“ゆるい”つながりが保たれている」と浜田さんは話す。

「ゆるいつながりで保たれている」という「あしたラボUNIVERSITY」関係者のみなさん(富士通ソリューションスクエア入口にて)。後列右から3番目が小針美紀さん。ファシリテーター、実践講座の講師、企画・運営チーム、グラフィックカタリストチーム、技術チーム、社会人参加者など関わり方はさまざま
「ゆるいつながりで保たれている」という「あしたラボUNIVERSITY」関係者のみなさん(富士通ソリューションスクエア入口にて)。後列右から3番目が小針美紀さん。ファシリテーター、実践講座の講師、企画・運営チーム、グラフィックカタリストチーム、技術チーム、社会人参加者など関わり方はさまざま

医療界でもコ・クリエーションは人ごとではない

ハッカソン参加者の1人、垣本啓介さんは琉球大学医学部医学科の6年生。富士通も支援している「トビタテ!留学JAPAN」(官民協働海外留学支援制度)を受けていたことがきっかけで、今回の学生向けハッカソンに参加。ハッカソン初挑戦組ながら、学生のみで構成されたチーム「Osampo」でビジネスプランを担当し、審査員特別賞(世界を変える技術賞)と参加者投票賞のダブル受賞を導いた。

チーム「Osampo」は参加者投票賞、審査員特別賞(世界を変える技術賞)をダブル受賞した
チーム「Osampo」は参加者投票賞、審査員特別賞(世界を変える技術賞)をダブル受賞した

審査員の松井くにおさんから「歩きスマホを撃退できる」と評価されたアイデアは「スマホ画面に頼らずあなたをお散歩に連れて行ってくれるデバイス×アプリ」。旅先などで腕に装着したバンドの“振動”が道案内。ポケットに入れたデバイスを叩いた数によって「道に迷ったときの誘導」「お気に入り場所の記録」などもしてくれる。開発中、垣本さんはビジネスプランの担当者として、ユーザーインタビューを行い、ビジネスモデルキャンバスを使ったビジネスプラン検討も実施した。

チーム「Osampo」が作成したビジネスモデルキャンバス。「ビジネス講座でプランナーがやるべきことを具体的に教えてもらえた。講座がなければ、開発中に自分のするべきことをやらずに時間を持てあましてしまうところだったかもしれない」
チーム「Osampo」が作成したビジネスモデルキャンバス。「ビジネス講座でプランナーがやるべきことを具体的に教えてもらえた。講座がなければ、開発中に自分のするべきことをやらずに時間を持てあましてしまうところだったかもしれない」

「生活習慣病をなくしたいというのが、医師としての自分の夢。乱れた生活習慣が原因で病気になり、後悔している患者さんの姿を、実習などを通して無力な気持ちで見てきました。医師が病院のなかに閉じこもって、ただ漫然と薬を処方したり、最先端の医療技術を使ったりするだけでは、彼らを救うことはできません。『社会』のなかでどう予防していくか、それを考えるのがこれからの医療のあるべき姿です」

垣本さんは来年春から、岩手の病院で研修医として社会人生活をスタートさせる予定だ。

「エンジニアや経済系の人などともコラボしながら、僕らが解決方法を探りたい。既存の共通言語がある医療従事者の間では、コミュニケーションに困るという状態はあまりないのですが、これからは他の分野の人と協力し合いながら仕事をするのが医療でも大切になるのだと思います。今回、エンジニアやデザイナーの方とご一緒するのははじめてでした。最初の頃こそぎこちなかったものの、途中からとてもうまく関係性が回りだした。他分野の人との仕事の仕方を学べたような気がします」

琉球大学医学部医学科6年生の垣本啓介さん
琉球大学医学部医学科6年生の垣本啓介さん

2年と少しで築いた「そんな未来にできる!」という確信

もともとは富士通の人事本部人材採用センターの「仕事のおもしろさを体感してもらいたい」「共創から生まれるアイデアの多様性を知ってもらいたい」という思いからスタートした「あしたラボUNIVERSITY」。2014年11月の開校宣言には、こんな未来の姿が綴られている。

未来をつくる学生たちのユニークなアイデアを、いかに社会に取り込み、形にしていくか。
学生に対し自身のアイデアをカタチにする場をどのように提供していけばよいか。
そのような問題意識のもと、あしたのコミュニティーラボは、未来をつくる学生とのオープン・イノベーションプロジェクト「あしたラボUNIVERSITY」を立ち上げ、学生と新たな共創にチャレンジします。

「あしたラボUNIVERSITYが目指す未来は、今もまったく変わっていない。ただ当時は、ありたい姿ややりたいことはわかってはいるものの、実現できるのか半信半疑な部分もありました。本当にこんな未来を実現できるのかどうか、と。でも今はその未来がとてもしっくり来ているし、『できる!』と確信しながら誰にでも自信をもってあしたラボUNIVERSITYのことを説明できていると思います」(浜田さん)

あしたラボUNIVERSITYのこれからの取り組みについては「もっともっとコミュニティーを拡大させ、社員も学生も関係ない関係性を継続させていきたい」と浜田さん。「その先何ができるかは、今考えているところです。もしかしたら地域ごとのコミュニティーづくりに関わる展開なんてこともあるのかもしれません」。

ハッカソン参加者で集合写真を撮影。次第に仲間は増えていき、あしたラボUNIVERSITYのコミュニティーは600名にも達した
ハッカソン参加者で集合写真を撮影。次第に仲間は増えていき、あしたラボUNIVERSITYのコミュニティーは600名にも達した

アイデアソンやハッカソンはいまやビジネス界隈の流行語だが、それを成功に導くとなれば、一朝一夕にできるものではない。あしたラボUNIVERSITYが2年と少しの間、プロジェクトを根気よく“継続”したからこそ、イベント企画・運営の経験、人的リソース、人的ネットワーク、場所、設備、情報発信力……など、それまでに欠けていたものが自然と補われ、ハッカソンにたどり着いたのだ。

どんなことに挑むにしても「将来どんなふうになっているか」なんて、挑んだ時点でその全貌までをうかがい知ることはできないもの。やがて大きな成果を生んだとしても「あのときのアレがあったから、ここまでできたんだ!」と、後からわかるのが常である。確かなことは“何か”をはじめなければ、そしてその“何か”を継続しなければなんにも成し遂げられないことだ。それはハッカソン運営も学生たちの将来も同じではないだろうか。「あしたラボUNIVERSITYハッカソン!」は、そんなことを当たり前のことをあらためて気づかせてくれるイベントだった。

初のハッカソン! イベントダイジェスト ——「あしたラボUNIVERSITYハッカソン!」(1)
ハッカソンで“勝つ”ための実践講座 ——「あしたラボUNIVERSITYハッカソン!」(2)


開校宣言から2年半、あしたラボUNIVERSITYから見えたもの ——「あしたラボUNIVERSITYハッカソン!」(3)

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