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あしたのコミュニティーラボ編集部のコラムをはじめ、ちょっと一息つける連載記事を更新中。
肩の力を抜いてご覧ください。

こんにちは。あしたのコミュニティーラボ編集部の相崎香帆里です。普段は科学技術分野(宇宙・気象・天文・スーパーコンピューターなど)を軸にしながら、新たなビジネスを考えています。

これから皆でつくっていくビジネスこそ、わくわくする未来に貢献できるようなものにしたい。でも、どうやってその姿を想像したらいいのだろう――。

“今”にとらわれることなく未来を考えるために、このたび「SF小説をつくる」という少し変わったアプローチにチャレンジしました。オフィスから地域に出て、未来に生きる人——つまり「未来人」——について対話をし、その未来人の生活を1つの小説にする。そして小説を介し、新しい対話を生む。その創作のプロセスのなかで未来のあり方、自分たちの役割、今からできることを考えました。

私たちがチャレンジした「SFプロジェクト」の様子と、できあがった小説をご紹介します

3つの想いからはじまった「SFプロジェクト」

2016年の夏、次の3つの「想い」をもとに、SFプロジェクトがスタートしました。

・未来のありたい姿を描き、そこから現代の姿を逆算する思考方法(バックキャスト)で、ビジネスを考えるプロセスに挑戦したい(*1)
・“お決まりパターン”を超越したぶっとんだ発想、これまでと違う視座がほしい(*2)
・いろいろな人を巻き込んで仲間を増やしながらビジネス創出のアプローチを行いたい(*3)

新しいビジネスを考えるうえでは、自分たちの今の強みを活かしたアイデアも大切ですが、未来の姿から“今”がどうあるべきかを発想することも必要だとかねてから感じていました(*1)。しかし社内のメンバーだけで議論を重ねていくと、どうしてもアイデアが“お決まりパターン”になってしまいます(*2)。そんな現状に対する突破口として考えたのが、普段出会う機会がない社外の方々と日頃考えないようなテーマで対話することでした。何より、1人で悶々と考えるのではなく、いろいろな分野の方々を巻き込んで話せるような機会をつくりたいと思いました(*3)。

そこで、対話のプロフェッショナルである株式会社フューチャーセッションズのメンバー、そして、創作のプロフェッショナルでSF小説・4コママンガなどの作品を手掛けるクリエイター・勢川びきさんとチームを組み、まちを舞台にそこで暮らす方々と一緒に未来を考える、という企画を立ち上げました。本部内からは約10名がこのチームに参画し、企画から編集まで携わりました。

この企画のテーマとして据えたのが、科学技術に携わる私たちにとって親しみがあり、「未来」「わくわく」「テクノロジー」といった要素を含む「SF(サイエンス・フィクション)」でした。SFの世界観に没入することで、私たちだけでなく、読者のみなさんにも一度未来にタイムスリップしてもらい、自由に未来を創造する——。そこからバックキャストするアプローチをとることにしたのです。

形式を「小説」にしたのは、ビジュアルのない文章のほうが、読者の受け取り方が多様になると考えたから。1人ひとりの想像の世界こそユニークでおもしろいはずです。自分なりの解釈を誰かと話したくなる、それが次の展開を生み、楽しく未来をつくるきっかけになるはず、という思いがありました。

「2037.5年×まち」というテーマ設定

小説のテーマに設定したのは「西暦2037.5年×まち」です。

なぜ「2037.5年」なのか。私たちが意識したのは参加者の2016年時点の属性が気にならなくなるほどの遠い未来でしたが、一方で自分ごとにできるくらいの遠さ(50年後、100年後ではない)に保ちたいと考えたためでした。そして、「.5」年という表記がポイントです。タイトルにどこかひっかかるものを感じてもらい、「それっていつだろう?」と想像してもらうことで未来の1日がぐっと身近になることを狙っています。

また、リアルな“未来の日常”を、私たちの手でいずれ形にしたいという想いから、「まち」を舞台にした小説にすることにしました。まちは複雑だからこそ、描いたときに多様な紐解き方ができます。読者の方との対話を通じて、私たちの視野や未来のビジネス領域が自然と広がることを期待しました。

未来を集める:対話とフィールドワークからうまれたシナリオ

こうして、いよいよ本格的にSF小説のシナリオづくりに入りました。

具体的には、プロジェクト参加者がそれぞれの視点で未来の生活を創造することを目的に、「まちの変化の兆し」を抽出し、「未来に生きる人の一日」をシナリオにまとめるセッションを2日間(2016年9月29日、10月13日)にわたって実施しました。そこで生まれたアイデアやストーリーを、SF作家・勢川びきさんが小説に編みこんでいくという流れで進めていきました。

作品の舞台は“墨田区向島”です。文学のまちで、歴史が色濃く残っていながら、ふと見上げると東京スカイツリーが見える————日本の伝統と新しさが共存する地域、という企画チームの希望にかなうぴったりのエリアでした。ここ向島でセッションに加え、フィールドワークも実施しています。伝統工芸職人・クリエイター・まちづくりに携わる方など、墨田区内外から多様な方々に参加いただきました。

セッション2日目の様子。フィールドワークでは向島在住の方(中央)に案内していただきました。なにげない場所に歴史が隠されていることを肌で感じながら、過去と未来を行き来する参加者

セッション1日目は、集まった約20名で未来の兆しについての対話を行い、SF映画のワンシーンとして描いたり、今後20年で訪れるかもしれない岐路をあぶり出したりしました。外部講師のインスピレーショントークに刺激をもらいながら、メンバー全員で未来のまちに生きる人(未来人)の姿を探っていきました。

セッション2日目は、1日目で描かれた「未来人」を下の5タイプに整理し、各タイプの視点でチームに分かれ墨田区を歩くフィールドワークを実施。まちを未来の視点で歩いて感じたことをもとに、「2037.5年」の人々はどんな1日をすごしているのか、各チームがシナリオを作成しました。

【5タイプの未来人】
・生きるためには働いていない人
・実体験なしですごく成長している人
・(2016年にはありえない領域で)他文化を受け入れ仕事などをする人
・自由に時間と場所を選んで、学び・働く環境を提供している人
・(リアルに移動しまくる)家族含めて定住していない人


プロジェクトも最後の追い込みの段階に。フィールドワークで得た気づきから、チームで未来人の1日をつくっていく。どのチームも想像以上のレベルのシナリオになりました

その後、セッションで生まれたシナリオをもとに、勢川びきさんが作家の発想を交えて1つの物語を書き上げました。そして、できあがったのがSF小説『2037.5年に生きるミチ』です。


多くの方の参加と協力で完成したSF小説の表紙。ページ後半でダウンロードいただけます

最後にどんな作品ができるのか未知数でしたが、それぞれが自分の視点と言葉を持ち寄り、混ぜ合わせ、1本の小説ができたことに、感動を覚えました。

「SF小説」で対話、未来をひろげる

セッションやフィールドワークを通じて、「日常から離れて、いつもと違う思考で発想する」「違う視点を知る」「自由な感覚でおもしろがる」ことができました。また、思考・場所・立場を転換させて考えるこの「未来洞察×バックキャスト」の手法は、新しいものを生み出すためのおもしろいアプローチになりうるのではと、手応えも感じています。

この小説は絶対のビジョンではなく、未来を語るきっかけです。いろいろな方に読んでいただいて、「2037.5年」の世界について考え、対話する機会を持っていく予定です。「自分だったらこう思うな」「これが実現したらいいな」を考えるための、ちょっとした共通言語になることを目指します。


初稿を真剣にレビューするプロジェクトメンバー。セッションの後も編集会議、小説活用会議を重ねています

もちろん「2037.5年」からバックキャストして自分たちのビジネスをこれまでと違う視座で検討することも……。このSF小説をきっかけに意外なパートナーと未来をつくる日も近いかも!? 楽しみで仕方ありません。

ダウンロードはこちらから
※データの出力については検証を行っておりますが、利用は自己責任でお願いいたします。
※これらのデータはクリエイティブコモンズに基づき配布いたします。原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示、およびライセンスへのリンクを提供し、変更があったらその旨を示さなければなりません。詳しくはこちらをご参照ください。

All Data Created by Technical Computing Solutions Unit of Fujitsu Limited

●ポイント
・未来洞察の新しいアプローチとして”2037.5年”と”まち”をテーマにした「SF小説」を作成しました。
・このSF小説は社内外の方々との対話とフィールドワークを通して生まれ、これからもいろんな人と未来を語り合うきっかけツールとして育てたいと思っています。
・以下から小説をダウンロードできます。
読んで、未来を妄想してみてください。そしてぜひ、周りの人とその妄想を共有してください!

●Point
– We created a sci-fi novel! Its theme is imagining a city in mid-2037.
– This novel is an opportunity for us to think and talk about our future.
– Download now, imagine your future, and share with your friends / colleagues!!

 (8.1MB)

 (238KB)

 (7.6MB)

 (244KB)

※私たちはこの活動を通じて、ICTを超えた価値創造の可能性を探求し、その過程で生まれる工夫や課題を発信していきます。関心のある方は、気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ先:あしたのコミュニティーラボ Facebookページ


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