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【スタディツアー体験記】1ミリのバネからはじまるオープンイノベーション──R-SIC潜入レポート (1)

2017年04月26日



【スタディツアー体験記】1ミリのバネからはじまるオープンイノベーション──R-SIC潜入レポート (1) | あしたのコミュニティーラボ
あしたのコミュニティーラボ編集部の臼井雅裕です。
今回、「社会の無関心を打破する」というミッションのもと活動する一般社団法人リディラバが主催した、「R-SIC」という社会課題の最先端を知るカンファレンスで行われたプログラムの1つである「スタディツアー」に参加しました。スタディツアーは、社会課題の現場を訪れ、当事者との会話や現場体験を通じ課題について理解を深めるプログラムです。私は、横浜の五光発條(はつじょう)株式会社の町工場を訪問する機会を得たので、今回はその潜入レポートを記したいと思います。

【スタディツアー体験記】ペットボトルで体験する自閉症患者の世界──R-SIC潜入レポート (2)

自社開発製品をクラウドファンディングに出品

私が参加したスタディツアーのテーマは「町工場からアクセサリー? 新しい取り組みから、町工場のこれからを考えるツアー」です。今回お邪魔した現場は、横浜市にある五光発條株式会社でした。

五光発條では、デジカメ、携帯電話、家電、事務用機器などの内部部品に使われる押しバネ・引きバネ・ねじりバネ等の精密バネのほか、オーダーメイドの特殊バネを製造し、海外にも工場を持っています。

そうしたバネ製造会社としての事業活動はもとより、代表取締役・村井秀敏さんは自社製品開発にも積極的です。

村井さんはボディパーツ(バネ)とジョイントパーツを組み合わせてカエル、猫といったオブジェ、アクセサリーを制作できる組み立てキットを自ら開発。それらの自社製品を“新感覚の金属バネブロック”としてパッケージ化し、クラウドファンディングにも出品しました。そこでは支援者集めに成功し、現在は「SpLink(スプリンク)」の商品名で一般販売も達成されています。

最近では、ジュエリーデザイナーの方々ともコラボレーションし、バネを使ったアクセサリー「SPRING JEWELRY(スプリングジュエリー)」の開発にも注力されているそうです。

SpLinkでつくったゾウ。組み合わせによっては、帽子やリング、名刺入れ(!)までつくることが可能だと言います
SpLinkでつくったゾウ。組み合わせによっては、帽子やリング、名刺入れ(!)までつくることが可能だと言います

自社製品とはいいながらも、決して“自社だけ”でものづくりはしておらず、FacebookなどのSNSを通じてつながりのできたデザイナー、クリエイターら異業種の人たちともものづくりコミュニティーを創出しており、先駆的な町工場の1つだと思います。

精密バネ製造会社がアクセサリーをつくる理由

さて、五光発條3代目社長である村井さんはたびたびメディアにも露出する名物社長。実際にお会いして、とても情熱的な社長さんだと思いました。

それにしても、従業員は連結で400名に達し、タイ、ベトナムにも工場を構える堅調な中小企業が、なぜこうした「オープンイノベーション」とも呼ぶにふさわしい取り組みに踏み出したのでしょうか?

なんでも、村井さんは自社製品開発を考えるようになったのは、製造業同士が自社技術でコマを設計・製造し競い合わせるイベント「全日本製造業コマ大戦」に参加したことなのだとか。村井さんはそこでの体験を通じ「自社のリソースを使って、自分がほしいと思うコト(モノ)を、世のなかに作ること」をビジョンに据えるようになりました。そうした自社のものづくりを村井さんは「マイクロものづくり」と称します。

スタディツアーのワークショップではコマをつくりました。軸とパーツの組み合わせでいくらでも回り方が変わるのだそう。奥深い世界です
スタディツアーのワークショップではコマをつくりました。軸とパーツの組み合わせでいくらでも回り方が変わるのだそう。奥深い世界です

「もとより町工場には、たしかな技術と自由さがあります。特に自由であることは大企業と比較したときの町工場の強みであり、だからこそイノベーションも起こしやすい。私たち町工場が生き残るにはとにかく“目立って、ユーザーの目に触れる”ことが必要です。かつ、高付加価値なものをつくらなければならない。誰でも思いつくような課題解決は今から参入しても遅れをとりますから、そのためにも町工場自らが自社製品を積極的に開発する“マイクロものづくり”が必要だと考えています」(村井さん)

村井さんは「クラウドファンディング」を利用したマイクロものづくりも積極的に取り組まれ、実際にクラウドファンディングを行った経験により「現状、お金を持っている人にアプローチできておらず、たとえばSpLinkにしても、高齢者や富裕層の方に知ってもらう手段がない。つくる人⇔売る場所⇔製品が見える場所をもっとうまくつなげるしくみも必要である」と、実践者だからこそ感じることのできる課題を示していらっしゃいました。

自分たちから変わろうとする町工場

職人気質の方が経営されていて強いこだわりを持っている。その一方、高齢化問題に直面している。さらに、取引相手の景気に左右され、常に苦しい経営状態にある──。町工場に対して、誰しも一度はそんなイメージを持ったことがあるのではないでしょうか。

もちろん、国内にはそうした問題に直面している町工場は実際にたくさんあるのだと思います。しかし村井さんはそうした情勢下でも、自分たちから変わろうとしていました。

参加者の皆さんとバネポーズで記念撮影(筆者は2列目左)
参加者の皆さんとバネポーズで記念撮影(筆者は2列目左)

今の時代、我々よりもきっと「現場」にいる人々のほうがよほど先に進んでいて、そのスピード感も予想以上に速いのではないか、と思います。町工場を経営されながらも、オープンイノベーションにも前向きな村井さんに触れてそんなことを感じました。

社会課題の当事者化を図る、という今回のスタディツアーに参加することで、私は企業に勤めるエンジニアたちももっともっと危機感を持たなければならず、もっと現場に飛び込んでいかなければいけないのではないか、とつくづく感じました。

【スタディツアー体験記】ペットボトルで体験する自閉症患者の世界──R-SIC潜入レポート (2)


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