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「教育の地産地消」から見る、熱を持ったコミュニティーづくりのポイント

2018年01月29日



「教育の地産地消」から見る、熱を持ったコミュニティーづくりのポイント | あしたのコミュニティーラボ
あしたのコミュニティーラボ編集部の山野元樹です。普段は、故郷でもある鹿児島と住まいのある関東を往復しながらシステムエンジニアとして働いています。鹿児島の地域活性に興味を持ち、2017年1月28日に<鹿児島に対話と挑戦の協働文化をつくり未来へつなげる>をコンセプトに開催されているイベント「鹿児島未来170人会議」にも、ファシリテーターの一人として参加しました。
今回、「鹿児島未来170人会議」をきっかけに、四方を海に囲まれ鹿児島県の最北端に位置する長島町にある「長島大陸Nセンター」が展開する教育プログラムの取材に同行しました。また、長島大陸Nセンター所長である神明竜平さんが鹿児島全土を巻き込んで立ち上げたプロジェクト「世界の中の鹿児島」にも運営メンバーとして参加しました。それぞれの取り組みから見えた、「教育の地産地消」ともいえるしくみを通した“熱のあるコミュニティーづくり”のポイントをご紹介します。

教育プログラム「島TECH」とは

長島町の教育プログラム「島TECH」は、全国の高校生が5泊6日で、長島の漁業・農業といった生産者の家庭に2~3名ずつホームステイし、その生産者のWebサイトを製作するプログラムです。(詳しくはあしたのコミュニティーラボのこちらの記事をご覧ください)

学生は長島町で展開される漁業や農業、みそ醸造などの仕事を手伝いながら観察し、対話のなかから思いを受け取り、生産物の魅力を最大限に引き出したWebサイト制作を企画からすべて行います。長島町の生産者たちの消費者へのアピール力が足りないという課題を、学生の手で解決するというプログラムです。

このプログラムの運営で主催者の方々が大切にしているのは「ライフプランニング機会」と「チームビルド実践」の提供でした。参加学生は、はじめて訪問する長島という土地で自分は何が好きなのか、何になりたいかを考え自分を再認識します。そして、はじめて出会うメンバーと力を合わせてミッションを達成します。

長島大陸Nセンターのスタッフは、この2点を徹底的にフォローします。Webサイト制作に関しては、環境は用意するもののアドバイスはせず、インターネットを使い、自分で調べ考えさせているのが、印象的でした。


プログラムを通して農家の仕事を手伝う高校生(画像提供:長島大陸Nセンター)

「教育の地産地消」が地域を明るくする

ここまでだと単なるホームステイプログラムなのですが、「教育の地産地消」と感じたのは、長島大陸Nセンター所長の神明さんが取材中、「地域に住む大人は大自然の中、命を懸けた仕事をしている。そこには生きることに対するリアリティがある。そんな真剣な大人と向き合える場所だからこそ、高校生が自分について、将来の進路について、深く考えることができる」というコメントを述べたことでした。

地域の未来を諦めていない大人、つまりは成長しようとする大人の姿こそが、子どもたちにとって教育効果が高い存在なのです。これこそが地産地消の源泉なのではないでしょうか。


取材内容をグラフィックレコーディングしました。(一部抜粋)

実際、プログラムに参加した高校生たちからも、生産者の養殖魚に対する真剣な眼差しや働く姿・会話の節々で感じられる仕事への熱意がWebサイト制作を最後までやり遂げる原動力になったと声が上がっていると言います。

高校生との交流から、地域のエンパワーメントが引き出された

この「教育の地産地消」モデルは、参加した高校生だけではなく、地域の大人たちにも変化をもたらしています。

第1回「島TECH」の参加者である石元淳平さんは味噌の醸造者。石元さんは、島TECHを通じて日々成長していく高校生の姿を見て、味噌づくりに向き合うきっかけを得ました。何のために味噌をつくっているのか。ぼんやりとしていた思いが、クリアになる体験をしたと言います。


石元さんと自慢の味噌「COCOROMISO」

さらに、「島TECH」後、石元さんは更に地域の人と町を盛り上げる取り組みに参加するようになり、一緒に長島町の未来について語り合う機会が増えたと言います。他にも大学生と一緒に新しいレシピをつくったり、海外への売り込みをしたり、県外・町外のイベントや勉強会にスピーカーとして登壇するなど、多くのチャレンジをしています。

石元さんの味噌には「この味噌を食べて育った子供たちが、大人になって社会に出てこの味噌を口にする時、ふるさとに帰ったようなやすらぎを覚えてほしい」という願いがあります。そして、このみそづくりと同じ思いで子どもたちに島の原風景を残すべく、石元さんは2017年12月10日にはShoura Jazz’oという音楽フェスを実行委委員長として開催しました。

長島の大人たちも、島TECHに参加した高校生との交流をきっかけに、エンパワーメントが引き出され、仕事に対するアイデア出しや発信の質が上がったり、まちのコミュニティーへの参加機会が増えたりする人も少なくないそうです。

このことに絡めて神明さんは、「親(=大人)の価値観を変えられるのは子どものみ」という話をしていました。利害を考えずこのプログラムに挑んでいる子どもたちの存在は、人の心を動かず大きなエネルギーを持つものだと私も確信しました。

地域への思いは声に出して共有しよう

長島町の取材から53日後の、2017年11月11日。鹿児島市内であるプロジェクトに呼ばれ、参加してきました。長島大陸Nセンター所長の神明竜平さんがはじめた「世界の中の鹿児島」、第1回の市民対話イベントです。

神明さんは鹿児島の食のポテンシャルの高さを強く感じている一方で、鰹節や鳥刺し、桜島大根などの伝統野菜ほか、言われてみると著名なものが多い「鹿児島の食」について、「激しく持て余している」と感じていたそうです。そこで鹿児島の食を世界レベルに押し上げるための「世界の中の鹿児島」を立ち上げました。


神明竜平さん、バックのグラフィックレコーディングは山野が描きました

イベントでは、食に携わる、各方面のプロを招きトークテーマに沿って対話。スピーカーはレストラン経営者、伝統野菜生産者、和菓子研究家、海外生活経験のある主婦、ハラールビジネス関係者……多様なメンバーが集まりました。

この場には2つの工夫がありました。まず参加者全員がカゴンマ(ずっと鹿児島に住んでいる人)、デモドリ(Uターン組)、ヨソモノ(県外からの参加もしくは移住者)というセグメント分けがされていたこと。この分類により、誰がどんな目線で鹿児島の食について考えているのかを分かりやすくし、対話のきっかけを産みだしています。

さらに、参加者はただ聞いているだけではなく、スピーカーの話にどんどん参加できるという形式。教員から食育の実情、飲食店経営者から鹿児島の豊かな食材は外に流れていて県民に届いていないなど、生の現場の声を知ることができました。


「世界の中の鹿児島」は町の寄り合い感をあえて出すために銭湯の大広間で開催

鹿児島の食に思いを持った人が知見と熱を共有しあい、次に自分たちに何ができるかを考えることができる素敵な場(イベント)でした。

ここでも多くの学生が参加しており、鹿児島の食について真剣に語る大人たちの姿を見ていました。さらに、参加した中学生からは「鹿児島は食についてアピールが足りない」という意見も出て、大人たちは改めてはっとさせられていました。どこに、どのようにリーチすれば彼女たちは納得するのか、と新たな視点で考えた機会となりました。

人で輝くコミュニティーが地域活性をもたらす

最後に長島町の教育プログラム「島TECH」と市民対話イベント「世界の中の鹿児島」から私が得た“熱のあるコミュニティーづくり”のポイントを3つに整理します。

1. 地域で暮らす、すべての人が互いに対話・接点を持つ
「世界の中の鹿児島」で中学生の発言に大人たちがはっとさせられた体験からも、老若男女関係なく、さまざまなセグメントから多様な価値観が共有される状態は、互いに気づきをもたらし前進を加速させると実感しました。

2. 外の知見を取り入れる
「島TECH」では都会で働いていた地域おこし協力隊、「世界の中での鹿児島」ではデモドリとヨソモノからの視点や経験が、当たり前の日常を違う視点で見る効果を発揮し、地域の人々に価値の再認識や自分を振り返るきっかけを与えていました。

3. それぞれが自分の未来をデザインする
「島TECH」では、スタッフが高校生の「ライフプランニング機会」に対するフォローを徹底的に行っています。どうありたいか、自分がまず思い描いていることが大切で、この体験が自分のなかにないまま他者と地域の未来をデザインするのは難しく、それをまずはつくることが大切だと感じました。

その地域にいる1人ひとりが自分のビジョンを持ち、備え持つパワーや魅力を発揮させることが、大きな目標を立てたり施策を打ったりすることよりも、地域をイキイキと活性化していくのではないでしょうか。

今後も鹿児島最北端の町から最先端の“とんがった”教育を届ける長島町、ひいては鹿児島の熱を持ったコミュニティーの一員として街の未来を一緒に考えて行けたらと思います。


「島TECH」に関わった人々で作られた温かなコミュニティー(画像提供:長島大陸Nセンター)


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