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地域コミュニティーの先進事例から学ぶ—— 人と社会を動かすコミュニケーションのヒント
イベントレポート(上)

2013年06月03日



地域コミュニティーの先進事例から学ぶ—— 人と社会を動かすコミュニケーションのヒント<br />イベントレポート(上) | あしたのコミュニティーラボ
かかわりのない人には一見、他人ごとにも感じられる「地域づくり」。しかし昨今、街や地域をよくしようと、自ら主体的に行動する人たちが増えています。そんな多様な人たちを束ね、ある目的に向かうためには、どんなアプローチが必要なのでしょうか。仕事や日常にも参考になるコミュニケーションのヒントを、地域づくりの成功事例から伺いました。5月14日(火)開催のイベントを詳しくレポートします。

まるごとキャンパスの街を、未来社会のモデル地域に

定刻の19時を前に、渋谷ヒカリエ8Fの「COURT」には、多くの人たちが集まっていました。学生をはじめ、20代から30代くらいの、比較的若い人たちの姿が目立ちます。

会場では学生や新社会人の姿も目立った

登壇者の4名が登場するとともに、アイスブレイクのお題が投げかけられました。「今日はどうして参加したの?」と、さっそく初対面同士、思い思いに対話を交わします。数分後には、静止をしてもしばらく会話が止まないほど、会場はリラックスムードに包まれていました。

モデレーターを務めたstudio-L代表取締役の山崎亮さん

「地域づくりに関わる人たちの活動から、仕事にも役立つコミュニケーションのヒントを見つけたい」

今回のワークショップイベントに参加した理由をモデレーターの山崎亮さんが尋ねると、会場からはそんな声が寄せられました。社会起業家を目指す学生からビジネスパーソンまで、さまざまな人たちが足を運んでくれたようです。

山崎さんは「まちづくりのお手伝い」をするコミュニティーデザイナー。地域の中に入り、課題を解決するための話し合いの場をつくる仕事です。

「登壇者の3人がとても魅力的で、どんな活動をしているのか、詳しく話を聞いてみたいと思っていたので」

モデレーターを引き受けた理由について、そう語る山崎さん。自己紹介もそこそこに、3人にバトンを渡しました。

シブヤ大学学長の左京泰明さん

最初のプレゼンターは、シブヤ大学学長の左京泰明さん。幸福と豊かさを成り立たせる多くの要因のうち、「学び」と「人のつながり」に着目したのがシブヤ大学です。コンセプトは「街がまるごとキャンパス」。特定の校舎を持たず、表参道ヒルズや明治神宮、カフェやレストランにライブハウスなど、渋谷区内のいたるところが教室になります。今まで約200か所の会場を使いました。決まった講師もいません。渋谷で仕事や活動をする人たちが、互いに得意な分野を教え、学び合うしくみ。生徒が先生にもなれるわけです。

明治神宮のどんぐりの実を苗木に育て、全国に植樹しているNPOの活動に参加してみる。かつて料亭街だった円山町に今も残る現役芸者に、お座敷遊びを教わる。区役所の清掃課の職員に、ゴミ処理の仕組みを聞く。日赤医療センターのスタッフに、緩和ケアのレクチャーをしてもらう。子どもが手づくりした段ボール製バスに大人が乗って、原宿の町をツアー──などなど、900にもおよぶ多種多様な授業企画の大原則は「自分が、1人目の生徒」だそうです。つまり、企画者自身が受けてみたい授業であることがもっとも大事、ということ。

お座敷遊び体験(左)、明治神宮での植樹活動(右)など授業は多岐にわたる
(提供:左京泰明さん)

授業をきっかけに、生徒同士による自主的なゼミ・サークル活動に発展するのも、シブヤ大学のおもしろさのひとつです。合唱団、農園での野菜づくり、外国人との交流、視覚障害者のための映画音声解説といった活動が繰り広げられています。

また、シブヤ大学では、今まで出会う機会のなかった人たちが結びついています。ビール会社と市民がコラボして地ビールをつくったり、盆踊りの運営を通じて町会・商店会(旧住民)と新住民が交流したり、写真の撮り方講座で若者と高齢者が出会ったり。中でも代表的なものが、恵比寿ガーデンプレイスで年に1回開催される「恵比寿文化祭」の運営。企業、行政、市民サークル、旧住民、新住民、来街者など、さまざまな人たちが結びつく一大イベントです。

恵比寿ガーデンプレイスで年に1回開催される「恵比寿文化祭」 (提供:左京泰明さん)

渋谷区の住民は20~40代の現役世代が多い一方で、区が主催する生涯学習の受講者は60代以上が8割。シブヤ大学の学生は20~30代が8割を超えており、ちょうどいい補完関係になっているそうです。

2006年から活動をはじめて、学生登録者数は1万6,000人を超えました。札幌、名古屋、京都、広島、福岡などにも「後輩」が生まれ、海外でも、韓国やフィンランドでシブヤ大学をモデルにした取り組みがはじまっているそうです。

「渋谷区という、日本でも類を見ないほど情報発信力のある基礎自治体を、さまざまな仮説・実験を繰り返し、未来の社会に向けたひとつのモデル地域にしたい。それがシブヤ大学の目指すところです」

左京さんは、そう締めくくりました。

「シブヤ大学のような活動をしたい、と憧れる人がかなりたくさんいると思いますが、収入はどうやって生み出しているのですか?」

山崎さんの質問に対する、左京さんの回答は、「3割が行政の補助金、6割が企業の協賛金、1割が参加者からの寄付」とのことでした。

社会的に価値のある活動に、個人から支援金を集める

READY FOR?代表の米良はるかさん

続いては、クラウドファンディングのウェブサイト「READYFOR?」を運営する米良はるかさんのプレゼンテーションです。

「名古屋市の東山動植物園。コアラのエサ代が足りない。コアラを守ろう!」とREADYFOR?で寄付を募ったところ、9日間で約700人から、目標金額の100万円を大幅に上回る462万円もの支援が集まりました。このように、ウェブサイトを通じ、個人から小額ずつ寄付を集めるのがクラウドファンディングのしくみです。

READYFOR?のWebサイト

READYFOR?は、2011年4月にオープンした日本最大のクラウドファンディングサービス。目標金額と募集期間を設定し、期間内に目標金額に達しなければゼロ円の、オール・オア・ナッシングな仕組みです。READYFOR?の運営は、達成時の手数料収入で賄われています。これまで約280件のプロジェクトが開始され、7割が目標金額に達成しました。合計でおよそ2万人の個人支援者から1億7000万円が集まっているそうです。

今まで最大の支援金を集めたのは、東北大震災の被災地である陸前高田の仮設住宅に図書室をつくるプロジェクト。40日間で860人から820万円を集め、200万円の目標金額をはるかに超えました。ちなみにこれは、支援者にリターンのあるしくみ。3,000円を出した人には特製ステッカー、1万円を出した人には推薦する本に名前のシールを貼って図書館に寄贈するという特典がありました。

どのような目的で、READYFOR?の支援金が利用されているのか。いくつかの事例を、米良さんが紹介してくれました。

「地域で活動している人々との出会いを楽しむ旅のガイドブック制作などの、ものづくりの資金。雪祭りでスカイランタンを打ち上げるなどの、イベント開催の資金。民間のNPO法人が手がけるハローワークなどの、運営費の資金。シリコンバレーで学生が起業家精神を学ぶなどの、渡航費の資金。社会や地域の人々がもっと幸せに暮らすための活動に対する支援が、READYFOR?のミッションです」

スカイランタンの打ち上げ(左)や、シリコンバレーまでの渡航資金を募る(右)などの過去プロジェクトがある

最近では、地域でクラウドファンディングのワークショップを開催し、2件のプロジェクトが成立。その人たちがメンターになって、新たなプロジェクトをサポートするなど、ウェブのみならずリアルな場でも活動が広がっています。また、米良さんは、プロジェクトの実行者をマラソンランナーにたとえます。

「沿道から声援を送るのが支援者。ファンディングを開始すると、たくさんの声援が送られていることを実感します。今度は声援者が実行者となってマラソンを走る。そんな循環をつくりだせればいいですね」

プレゼンテーションが一段落し、山崎さんから質問が投げかけられました。社会的な活動であれば、どんなプロジェクトでもいいのか。お金が実際にどう使われたか示されているのか。この2つの質問に、米良さんは次のように答えています。

「申請があったプロジェクトは審査します。主な審査基準は実行可能性。とはいえアイデア段階で否定はせず、社会を良くするために誰もがやりたいことを実現できる環境を一緒につくっていきたいと考えています。また、プロジェクトの進捗状況は、ウェブサイトでの報告が義務づけられています」

このようなルールづくりや細かなコミュニケーションを欠かさないことも、あまたのプロジェクトが成功に至るための必要条件なのかもしれません。

後編につづく


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