Opinions
各界の専門分野を持つ有識者の方々から、社会を変えるイノベーションのヒントを学びます。

今、広がる「共創」と〈あしたラボ〉の未来(下)

2013年06月19日



今、広がる「共創」と〈あしたラボ〉の未来(下) | あしたのコミュニティーラボ
「豊かな社会」のあり方を見つめてきた〈あしたのコミュニティーラボ〉も、おかげさまでオープン1周年を迎えました。前編に引き続き、運営者である富士通株式会社の上嶋裕和執行役員専務と、株式会社インフォバーンの小林弘人代表取締役CEOがこの1年間で見えてきた社会の変化を総括し、今後のメディアの未来像について意見を交わします。

前編はこちらから

地域の人たちに聞くことから、まちづくりははじまる

柴崎 直近の5月に取り上げたテーマは「まちづくり」イベントでは、コミュニティーデザイナーの山崎亮さんをモデレーターに、シブヤ大学の左京泰明さん、クラウドファンディングサイトの米良はるかさん、富士通からは青森で観光クラウドサービスを立ち上げ、NPO法人の代表としても活動している米田剛が登壇しました。左京さんはいったん企業に就職されてから、米良さんは大学での研究からそのまま、米田は企業にいながらと、それぞれ背景は異なりながら、社会のため、地域のための仕事に取り組んでいます。この回は、学生の参加者が半数。社会を良くしたい、日本を良くしたい、という思いを持っている若者がたくさんいて、非常に興味深い議論になりました。

上嶋 「地域の人たちに何が必要かを聞くことからスタートする」という話は、そのとおりだと思いました。人と人とのふれあいがあって住みやすい。それが町というものですよね。ここでもICTは、後ろに隠れていてほしいのです。「こんなシステムがあってボタンひとつでこうなる」みたいな世界を、あまり前面に押し出すべきではない。ICTじゃなくて「人」なんです。

柴崎 行政による公開データを市民が活用する「オープンデータ」についても取り上げました。まちづくりの観点から、この流れについてはどうでしょう?

小林弘人 (株式会社インフォバーン代表取締役CEO)

小林 データを公開することによって、施設の稼働率などの行政の実績も明らかになります。「足りないから、皆さん手伝ってください」というわけで、「正直マーケティング」に近いんですね。どれだけ自らを開けるか、まずは可視化と説明が必要だと思います。

上嶋 公共セクターは当然、個人情報だけは例外としてオープンデータの方向に向かうべきだし、今までそうなっていなかったことが問題だと思いますね。

共創による「コトづくり」にはストーリーが欠かせない

柴崎 「学び」「働き方」「モノづくり」「まちづくり」に共通するテーマとして「共創」があります。企業と個人、企業と公共、個人と公共など、共創のスタイルが幅広くなっている気がしますが、この点についてはいかがでしょう?

上嶋 富士通は、お客さまの業務をサポートするモノづくりをしているわけで、お客さまと共につくらなければ、われわれだけではできません。その意味での共創は、ずっとやってきました。ただし、もっと広げて、ビジネスパートナーとの共創、競合ベンダーとの共創、ほかの業界との共創ということになると、これからの取り組みですね。これだけネットワークが発達し、情報が行き来しているなかで、1社だけで何かを創造することはもうあり得ないような気がしていて……。さまざまなスタイルの共創を、これから模索していかなければいけません。

小林 「共創」のインセンティブとは何だろうと考えると、哲学や思想に裏打ちされたストーリーが欠かせないのではないかと思います。おそらく今後、すごくシンプルな思想こそが、共有するためにも、ますます重要になってくるのではないでしょうか。

柴崎 少し違う観点から質問します。日本は「モノづくり」の国と言われてきました。ところが最近「コトづくり」という言葉をよく聞きます。これからは、単純にものをつくるのではなく「コトづくりの共創」へと向かうのでしょうか? 「モノづくり」と「コトづくり」について、お考えをお聞かせください。

上嶋裕和 (富士通株式会社執行役員専務)

上嶋 ものが欲しいのではなく、ものを使って豊かな世界をつくりたい。消費者は、それを望んでいるんだと思います。「モノ」を含んだ全体が「コト」です。たとえばイオンさんは、イオンモールでは「モノ」を売るのではなく「コト」を売る、と明確に言っていますし、そのために遊びの要素を入れている。おそらく、これからは「モノ」だけでは売れない時代になるでしょう。

小林 WHAT(なに)を売る時代は、もう終わったと思っています。WHY(なぜ)が売れないといけない。なぜ私は、これを買わなければいけないのか。「コト」に近いですね。WHATは、もうあふれてコモディティ化しています。なぜ、という理由には、必ずストーリー、ひいては思想の裏打ちがつきまとうわけです。

社会を動かす共創の場のサポーターとして

柴崎 富士通のブランドプロミスは「shaping tomorrow with you」です。お客さまと共に、豊かな未来を創造する。上嶋さん、今後の〈あしたラボ〉の方向性と、このブランドプロミスは、どう照らし合うのでしょう?

上嶋 「shaping tomorrow with you」の「you」は、お客さまだったわけです。今考えてみると、まさに「共創」であり、「shaping tomorrow」するのはお客さまだけに限りません。先に述べたように、パートナーかもしれないし、競合ベンダーかもしれないし、ほかの業界かもしれない。この「you」はもっと広い意味だろう、と。youを探すために〈あしたラボ〉をぜひ使いたいですね。

柴崎 〈あしたラボ〉のFacebookページを見ると、メインの読者層は20代半ば〜30代半ばくらいです。

上嶋 まさに、その年代の人たちと一緒に考えていきたい。「ヒューマンセントリック・インテリジェンスソサエティ」が目指す豊かな社会は、20代〜30代の若い人たちがつくっていくのですから。と同時に、1年前の小林さんとの対談でも出ましたが、日本の企業を何とかしたい、日本人はこんな力を持っている、ということもバックに走らせておきたいですね。それを際立たせるために、海外の人をワークショップに招いてもいいかな、と。

柴崎辰彦 (富士通株式会社/あしたのコミュニティーラボ代表)

柴崎 昨年の秋からは、富士通の社員も参加して一緒に議論するスタイルが定着しました。今後は弊社のICTの技術者も参加することで、外部の人たちとさまざまな化学反応を起こし、共創につなげていければいいですね。

上嶋 「働き方」のテーマを取り上げるんだよ、と会議で話したら、すごく興味を持ってワークショップに参加した女性がいました。富士通というと堅いイメージがあるのかもしれませんが、実はいろんなことを考えている人がいて、とても広い範囲で仕事をしています。SEも業種ごとにたくさんいるので、さまざまな取り組みをしている人たちがいる。その人たちをもっと前面に出して、外部の人たちと一緒にものを考えたり、ことをつくったりしていければいいなと考えています。皆さんの力を借りながら、一緒に日本を良くしたい。〈あしたラボ〉を、そういう場にしたいですね。

柴崎 社会を動かす共創の場のサポーター。〈あしたラボ〉をそんな位置づけにしていけたらと考えているのですが、最後に小林さんから、今後の〈あしたラボ〉について一言いただけますか?

小林 企業1社だけのイノベーションではなく、コミュニティー、自治体、ひいては国を変えていくこと。そういう大きなイノベーションにつながるプラットフォームとして発展させていくことをお手伝いしたいし、富士通さんなら、それができると思っています。オープンイノベーションを促すためのマネジメントツールはたくさんありますが、〈あしたラボ〉のようにメディアを活用している例は世界でも類を見ません。オープンイノベーションを促進するオウンドメディアになるべく、応援させていただきます。

柴崎 ありがとうございました。1周年記念特集として、7月5日に、「共創」をテーマにサミットイベントを開催します。パネリストは、ファブラボ鎌倉代表の渡辺ゆうかさん、Think The Earth理事の上田壮一さん、弊社から富士通システムズ・イーストの米田剛と、過去にご登場いただいた方ばかり。読者の皆さん、二子玉川ライズの「カタリストBA」にぜひ足をお運びください。

上嶋裕和(うえじま・ひろかず)
富士通株式会社執行役員専務
1976年、富士通株式会社に入社。官公庁向けのシステム開発業務に従事。2013年4月より現職、同社のインテグレーションサービス部門を統括している。
小林弘人(こばやし・ひろと)
株式会社インフォバーン代表取締役CEO
紙とウェブの両分野で多くの媒体を立ち上げるほか、さまざまな企業のメディア化を支えてきたIT界の仕掛け人。現在、デジモ社の代表を兼務、世界に向けてスマートフォン・アプリを使ったサービスを展開する。著書に『メディア化する企業はなぜ強いのか?』(技術評論社)、監修書に『FREE』『SHARE』『PUBLIC』(以上、NHK出版)『戦略的コンテンツマーケティング』(翔泳社)がある。
柴崎辰彦(しばざき・たつひこ)
富士通株式会社インテグレーションサービス部門
1987年、富士通株式会社に入社。数々の新規ソリューションビジネスの立ち上げに従事。2009年よりサービスサイエンスの研究と検証を実践中。2012年に「あしたのコミュニティーラボ」を立ち上げ、代表を務める。著書に『勝負は、お客様が買う前に決める!』(ダイヤモンド社)。

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