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社会課題を解決する先進的なアプローチをご紹介します。

体験ルポ “共創”の現場をゆく──
ファブラボ鎌倉(FabLab Kamakura)で「MAKERS」への第一歩!

2013年06月26日



体験ルポ “共創”の現場をゆく──<br />ファブラボ鎌倉(FabLab Kamakura)で「MAKERS」への第一歩! | あしたのコミュニティーラボ
「こんなものあったらいいのに、どこにも売ってない。それならば自分でつくっちゃえ!」。「ほぼなんでもつくる」というコンセプトのもと、「個人による自由なものづくりの可能性を拡げるための実験工房」と表現されるFabLab(ファブラボ)。そして、日本初のファブラボとして活動しているファブラボ鎌倉(FabLab Kamakura)。その日常を知るべく、編集部が再びお邪魔しました。

アイデアを共有しながら、ものづくりを進めていく

「自転車のライトつくりたい! LEDの」
「Arduinoで基本設計して、Thingiverseからボディ落としてきて、3Dプリンターで出力すれば……」
「いいね! やってみようよ。Arduinoのインプットは何にする?」
「暗くなったら自動で点灯したらいいなあ」
「じゃあ、明るさのセンサーをインプットにして……」
「でも。夜中ずっとついてたらまずくない?」
「そうか、そしたら振動かな。じゃあ、暗くなって、かつ振動を感じたら光る」
「いいんじゃない!? それならできそう!」

ここはファブラボ鎌倉。3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル工作機器を使い、個人が自由な発想でものづくりに取り組む実験工房だ。

毎週金曜日には、プロジェクトメンバーが集合する。この日、集まったのは、工藤野乃花さん、駒野美智さん、森谷仁子さん、渡辺新平さん。
左から、プロジェクトメンバーの工藤野乃花さん、森谷仁子さん、渡辺新平さん、駒野美智さん
各自が個人のプロジェクトの作業に取り組みつつ、それぞれのアイデアを共有しながら、ものづくりを楽しんでいる。そんな雰囲気だ。ちなみに、冒頭の話に出てきたArduino(アルドゥイーノ)というのは、マイコンと入出力ポートを備えたマイコンボード。Thingiverse(シンギバース)は、世界中のユーザーが制作した3DモデルのデータをシェアできるWebサイト。データの数は、なんと10万点を超える。どちらも世界中の「MAKERS」にとって、おなじみのツールだ。
工藤野乃花さん
工藤野乃花さんは昨年の夏、学校のワークショップでファブラボ鎌倉を取材し、デジタルファブリケーションに興味をもった。町の工房や職人とファブラボ鎌倉がどんな関わりをもっているかを調べ、町めぐりの地図をレーザーカッターで制作。おもしろくなって鎌倉通いが続くうち「いつのまにか、プロジェクトメンバーの“ののちゃん”です、と紹介されるように」なった。今は、週に4日、社会人として修行をしつつ、金曜日はファブラボ鎌倉でデジタルファブリケーションの可能性を模索。「大量生産・大量消費ではないプロダクトデザインのあり方をここで見つけ、何か新しい仕事を生み出せたら」と望んでいる。
森谷仁子さん
森谷仁子さんも、仕事と育児の合間を縫って金曜日には鎌倉へ。IT企業でシステムエンジニアとして働いていたが、出産を機に女性の働き方について考え直し、キャリアチェンジのために退職。学生時代から好きだったプロダクトデザインを学び直した。電子工学のバックグラウンドを生かし、子どもたちと電子工作で遊ぶワークショップを手伝ったことがきっかけでファブラボ鎌倉に通いだす。「ここでいろいろ学んで、いつかは、子どもたちと一緒に遊びながらものづくりの楽しさを伝えられるようなスペースをつくりたい」という夢を抱いている。
駒野美智さん
駒野美智さんは、昨年秋からこの春にかけて実施された、ファブラボ鎌倉が関わるプロジェクト「フジモックフェス」に参加した。富士山の森に間伐をしにいき、その間伐材を使って作品をつくるイベントだ。寄木細工の手法を用いて制作したお皿が好評で声をかけられ、現在、ファブラボ鎌倉で修行をしている。「月曜日は、市民の皆さんに開放するオープンラボ。火曜日から水曜日までは、デジタル工作機器のマニュアルづくりや、使い方の実験など、より良い制作環境づくりに務めている。土日は、ファブラボに興味を持ってくださる方へのワークショップや講習会〈来て見て触ってファブラボ鎌倉〉を開催していることが多いですね」と忙しい。
渡辺新平さん
渡辺新平さんは、地元・鎌倉のNPO法人「アートスタジオかまくらの森 アトリエそらのいろ」で、障がいをもつ方の絵を描くサポートをしている。現在は、障がいをもつ方々が描いた絵を商品化する事業に取り組みはじめたところだ。「美術指導をしていた先生がファブラボ鎌倉に通っていて、おもしろそうだな、と。僕は印刷とかが好きなので、レーザーカッターやクラフトロボと呼ばれるカッティングマシンを使っていろいろ試している最中です」と話してくれた。

情報は常にみんなで共有

密度の高い情報や意見が交わされるミーティングの様子
金曜日のファブラボ鎌倉は、蔵のメンテナンスと、各自がこの1週間にあったこと、作業の進捗状況などを報告するミーティングからはじまる。

「こんなウェブサイト見つけたよ、なんていう情報も忘れてしまうので記録をしていきます」と工藤さん。

まずは森谷さんから。Arduinoを使って何ができるか、ネタを考えているところ。来週みんなで共有しながらできることを、今日まとめてみるつもり。そして、もっと自習をしたくてカッティングマシーンのCAMEOを自宅用に購入した。そんな報告をしていく。

「ここに来る時間が限られているので、家で試し、学んだことを共有したくてブログを開設しました。ちょっとずつ家に“マイラボ”みたいなのをつくっていこう、と。母親視点のA Mommy’s Fab Room 。Arduinoで子どもと遊ぶコンテンツをつくっていこうと考えています」

駒野さんは、日曜日の講習会の報告から。その時に3Dプリンターで出力したサンプルが足りなかったので、今つくっている最中。九州大学から来た人や、墨田区で開設予定のファブラボの計画に関わっている人もワークショップに参加したという。

「ロボット研究会の林さんが大仏のサンプルフィギュアを置いていってくださったので、これをハックしようということに。今日これから、〈123D Creature(iPadの3Dモデル作成アプリ)〉でつくってみようと思っています」

工藤さんが目下取り組んでいる作業は、クルマを媒体にしたデジタルファブリケーション。車好きな彼氏から頼まれたという。

クルマのカスタマイズもデジタルファブリケーションでアプローチできる

「彼がサーキットで走る時、リアバンパーの空気抵抗を軽減するために穴を開けたい、と。でも、穴を開けたままだと切り口がきれいではないので、そこをうまく覆い隠せるカバーを3Dプリンターでつくれないか、という話になり……。ああでもない、こうでもないと何個かトライしながら、だいたいこんなイメージだよねと、彼と話し合いながらつくっています(笑)」

それを見た渡辺さんが「こんなの見たことないし、こんなのつくってる女の子も見たことない!」と、その場にいる全員の感想をズバリ代弁する。

渡辺さんは、職場の障がいをもつ方が描いた抽象画をPCに取り込み、レーザーカッターで木片に出力する作業に取り組んでいる。木版画にしてTシャツにプリントするなど、なんとか商品化の道筋をつけたい。
渡辺さんが着用するのはお手製の”Fab”Tシャツ
「僕の働いている〈そらのいろ〉の方にとっては、絵を描くことが生きることでもあります。人によっては、すでに2万枚ちかく描いています。そして、その絵自体が、すばらしい現代アートになりうる可能性を秘めています。その方は、自分の作品を発表したいとか、売りたいという意志はなく、ただ純粋に描くことが好き、描くことだけにしか興味がないのです。それでも、親御さんにしてみれば、作品がTシャツなどの二次加工品になり、別の形で社会と繋がることができれば嬉しいことだと思います。僕個人としても、この方の作品がすごく好きなので、そういうふうに発展させなければ、と思っています」

今日は、レーザーカッターで出力した木版画をバレンで刷ってみて、紙や布にどう印刷すればきれいに仕上がるのかを試してみるつもりだという。

3Dプリンター初挑戦、「カエル地蔵」の仕上がりは!?

3Dモデルを自在につくれるiPad用アプリ「123D-Creature」。写真は駒野さんデザインの「鎌倉の大仏さま」
さて、〈あしたラボ〉スタッフもFab体験。指先でタッチしながら簡単に3Dモデルを作成できるiPad用アプリ「123D Creature」を使って好きなものをつくり、3Dプリンターで出力することに。

駒野さんが使い方を教えてくれる。これは名前のとおり「生き物」のモデリングにふさわしいアプリ。基本形の骨格から、肉付けしたり関節を曲げたり、へこませたりふくらませたり、まるで粘土をこねているような感覚で造形できる。これで作成したゴリラ、カバ、イルカ、ネコ、トカゲなどのサンプルがあった。はたして、ここまでうまく、生き物らしい生き物を産み出せるかどうか……。

しばらく、いろんな動きを試してみる。部位の拡大縮小や回転は自在にできるが、その動きは基本となる骨格に左右される。骨の長さや関節の位置を適当に指定してしまうと、見たこともないような生き物ができてしまう。デッサンの心得のある人なら、うまくつくることができそうだ。

あちこちいじくりまわし、できあがったのは「カエル地蔵」。鎌倉の大仏さまを作成中の駒野さんにあやかったわけでもないが、座禅を組んでいるようなスタイルのカエルだ。本当は人間の立像をつくりたかったが、人の顔を造形するのはけっこう難しい。

「ここからさらに手を加えていただいて……。このツールでちょっと引き伸ばしたり、へこませたり、細かくアレンジできるんです。まずは、口や目や指の部分をハッキリさせてみてください。これだと、ちょっと薄いかもしれません。サイズが小さいので、もうちょっとへこませたほうが、くっきり出力できます」

駒野さんのアドバイスで修正を加える。「なんかちょっと怖くなってきましたけど……大丈夫ですか?」。カエルの目をへこませすぎてしまった!
3Dモデリングアプリで「カエル地蔵」を作成するあしたラボ編集部員
「馬とか牛とかだったら脚の筋肉をくっきりさせたり、人間だったら胸筋の部分とか腹筋を割らせたりとか、このツールでできるんです」と駒野さん。

インストラクターの1人がつくったカバは、あんぐりと開けた口の中の歯も、ひとつひとつ鮮明に再現されている。モデリングだけで5時間かかったという。根気よく時間をかければ、iPadアプリでも、かなりのことができるのだ。

これまでに作られた作品のサンプル

駒野さんが3Dデータの最終的な微調整をしてくれて、ラフト(出力する時の台座)とサポーター(樹脂を溶かして造形するので、垂れないようにサポート材で支える)を設定し、温度を250℃に。出力スピードはロー、ミディアム、ハイの3段階。ハイにするとデータを変換するのに時間がかかるので、たいていミディアムで出力するという。

カエルなので、緑の樹脂材で出力。下から徐々に積層していく。どの部分にサポート材がつくかはマシンが判断するそうだ。

20分ほどで出力完了。隙間が多い造形なので、サポート材をはがすのにけっこう苦労する。はがしているうちに、お尻の部分からパックリ2つに割れてしまった! 「この部分の積層がうまくいかなかったみたいですね。エラーも時々あるのですが、それも貴重な体験です」と駒野さん。
胴体から下が割れてしまった「カエル地蔵」と鎌倉の大仏さまの完成品
完璧とはいかないまでも、とりあえず形になったので、3Dプリンター初体験は満足。駒野さんは、みごとに鎌倉の大仏さまをモデリングした。服のしわしわなどのディティールも出ている。やはり観察眼や絵心が必要のようだ。

「カスタマイズ欲」が強い人はファブラボと親和性が高い!?


森谷さんは2人の子育てを経験して、女性の働き方について考えるようになった。自分の好きなことを仕事にしたほうが、子どもたちも幸せではないか。そこでプロダクトデザインを勉強し直したのだが……。

「落としどころがなかなか見つからなかったんです。今までやってきたITとデザインを結びつける場が意外とない。そんな時に〈MAKERS〉ムーブメントとファブラボに出会って、つながるかもしれないと思いました。ファブラボは、ITとデザインのどちらにも共通した中間に位置する気がしていて。両方ともにバックグラウンドのある私が“通訳”の役割を果たせるのではないか、と」

工藤さんの彼氏は当初、自分の彼女が週1回、「わけのわからない場所」に通っていると思っていた。ところが、バンパーの改造をとおして、次第に活動を理解してくれるようになった。

デザイン、アート、工芸、ITなど、さまざまなバックグラウンドをもつ人たちが、それぞれの興味・関心に応じて関われる。ものづくりの現場をみんなが共有することで、1人では気づかなかった違う視点からものごとを見ることができ、新しいアイデアが生まれてくる。間口は広く、奥行きも深い。そこがファブラボのおもしろさだ。

工藤さんはファブラボ鎌倉で段ボールコンポストをつくろうとしている。家庭から出る生ゴミを、土壌改良剤を敷いた段ボールに入れて堆肥にするのが、段ボールコンポスト。3Dプリンターの樹脂材は生分解性プラスチックなのに、これを燃えるゴミに出してしまったら何の意味もない。かといって、そのまま土に埋めても微生物が足りなくて分解が進まない。コンポストに入れると1週間くらいで分解されると聞いて、工藤さんは「ぜひともこの目で見たい」と思った。
段ボールコンポストのモデリング
「どうせならArduinoを使って、より使いやすい段ボールコンポストにしよう、という話になっています。段ボールコンポストって、温度管理が大切らしいんです。そこでArduinoと組み合わせて、温度センサーを用いて定期的に温度の情報がTwitterに届くようにしたり、一定の基準を下回ったらLEDが光って知らせてくれるようにしたり……。ファブラボならではの段ボールコンポストをつくろうと思っているんです」

ものづくりとITは、産業ベースではすでに結びついている。それが個人ベースで結びついた時、もっと多様な可能性が広がるかもしれない。ファブラボには、そんな未来が芽吹きはじめているような気がした。

FabLab Kamakura http://www.fablabkamakura.com

7月5日(金)イベントでは、ファブラボ鎌倉LLC代表の渡辺ゆうかさんが登場します!
詳細は下記リンクをご覧ください。


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