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社会課題を解決する先進的なアプローチをご紹介します。

体験ルポ 共創の現場をゆく──
みんなで一緒に「未来に良いこと」しよう!「AQUA SOCIAL FES!! 2013」

2013年07月02日



体験ルポ 共創の現場をゆく──<br />みんなで一緒に「未来に良いこと」しよう!「AQUA SOCIAL FES!! 2013」 | あしたのコミュニティーラボ
トヨタのハイブリッドカー「AQUA」が、前例のないキャンペーンを全国で繰り広げている。環境ボランティアをやってみたい人たちを惹きつける「AQUA SOCIAL FES!!」。6月8日に開催された「みんなの北上川流域再生プロジェクト」第2回「津波で消えたヨシ原の大切さを再発見しよう!」に参加してみた。

クルマの所有に関わらず、誰もが参加できる「プロモーション活動」

「少しでも未来の環境に貢献したい」と、10年先を見据えて開発した超低燃費のハイブリッドカー「AQUA(アクア)」。AQUAのマーケティング活動も、社会に役立ちたい、より良い未来をつくりたい人たちと一緒になって、言葉ではなく“振る舞い”で示したい。

トヨタ自動車のハイブリッドカー「AQUA(アクア)」のプロモーションキャンペーンがユニークだ。「AQUA SOCIAL FES!!」(以下、ASFに省略)と題し、「水」をテーマに一般参加型の環境保護活動を展開。海や川をきれいにしたり、生き物と触れ合ったりして、みんなで一緒に汗をかき、楽しみながら「未来に良いこと」をする。つまり、AQUAにこめられた想いを“振る舞い”にして示すプロモーションキャンペーンなのだ。2012年3月の1回目の活動から1年間で、日本全国50カ所、延べ131回実施し、合計1万1,533人が参加した。2年目を迎えた今年も、日本全国で開催している。AQUAユーザーでなくても、クルマの所有に関わらず、誰でも無料で参加できる。

多くの人たちとともに「豊かな社会」を考え続けている「あしたのコミュニティーラボ」としても、いったいどんな“振る舞い”が繰り広げられているのか、気になるところだ。そこで、「みんなの北上川流域再生プロジェクト」第2回「津波で消えたヨシ原の大切さを再発見しよう!」に参加してみた。

長靴と軍手を身につけ、まずは河原のゴミ拾いから

有限会社熊谷産業の社屋での開会式
東京は梅雨入りしたものの、晴れ間が続く6月8日の東北地方。仙台駅前に集合し、バスで石巻市の北上川河口へ向かう。参加者は80名ほどで、学生や20、30代も多い。

地元で復興支援活動を行うNPO法人りあすの森との共催で行われたこの日は、ヨシを使った茅葺き屋根工事に携わる有限会社熊谷産業の社屋を借りて、開会式とオリエンテーション。熊谷産業の社屋は、建物の外壁が茅葺き。茅葺き屋根はおなじみだが、壁面が茅葺きというのははじめて見た。

4チームに分かれ、2台のバスに分乗して近くの河原へと向かう。泥の中の作業になるので全員、持参した長靴に履き替える。「ASF」のロゴが染め抜かれた鮮やかな水色のビブスと軍手を装着し、ゴミ袋を携えて──。
北上川でのゴミ拾い
石巻市の北上川河口一帯は、ヨシの群生地。河口から十数kmにわたって、川の両岸はヨシ原に埋め尽くされていた。だが、河口から6~8kmまでのヨシ原は、今やまばらな状態に。東日本大震災の津波で砂が流入し、50~70㎝も地盤沈下したためだ。

今日みんなで取り組むのは、ヨシの株分けと移植作業。土手の護岸工事がはじまる前にヨシを別の場所に植え替えて、ヨシ原の再生の種にする。曇り空となり少し肌寒いくらいだが、体を動かして作業するにはちょうど良い。

目的地へ向かう間、全員で河原のゴミを拾い歩く。川べりの道になぜかバナナの皮が点々と。並走する車道から投げ捨てられたのか。ヨシ原に入ると、いろいろなものが泥に埋まっている。長靴と軍手が大活躍する。長さ1m近いゴムシート状のものを引き抜いた。津波で流されたものの一部かもしれない。
あしたのコミュニティーラボ編集部もいきいきと作業に励んだ

スコップとバケツリレーでヨシを植え替える

掘り出したヨシの株をバケツリレーで運ぶ
いよいよヨシの移植作業。スコップで株を掘り出すチーム、それを上流の湿地まで運ぶチーム、植え付けるチームに分かれる。

「株を掘り出す時は地下茎を傷つけないように気をつけて」と、スタッフからのアドバイス。ヨシは冬になると枯れて、全体に蓄えられていた栄養分が地下茎に移る。地下茎があるからヨシは元気に育つそうだ。

スコップで掘り出した株をバケツに入れて、30人ほどが横一列に並び、バケツリレー方式で運ぶことに。だが、すぐにバケツが足りなくなる。

「バケツなしでそのまま手渡しすればいいんじゃない?」

参加者の提案でそう決まった。ヨシの茎の部分を持つと、根に付着している泥が途中でドサッと落ちるのではと思ったが、そんなことはない。地中にしっかり根を張っていることがわかる。大きめの株はずっしりと重い。

バケツリレーというのは「みんなでやっている感」が盛り上がる。およそ100株あったそうだが、なんだかあっという間に移植地へ運べた気がした。
運ばれたヨシは湿地に移された
植えつけるほうの作業の手が足りなくなったので、全員でとりかかる。移植するのは、盛り土したところと、平地の湿地。今回の活動を提案した、ヨシ原の再生に取り組む東北工業大学工学部環境エネルギー学科の山田一裕教授によれば、ヨシは比較的塩分に強いが、海水の割合が4割以上になると種が発芽できないそうだ。このあたりは津波の影響で地盤沈下し、潮が入りやすくなっている。また、湿地の表層が津波による土砂をかぶって、それも芽の発芽を妨げている。だから土を盛って「かさ上げ」したほうが、ヨシが生長しやすい。地盤沈下前の地面の高さを想定して50cmかさ上げしてある。平地の部分に植えたほうがきちんと定着するかどうかは、今後の観察が必要とのこと。

次に、ヨシ原にはどんな生き物がいるのか、環境調査を開始。干潮時にとったマハゼの幼魚、ヤマトシジミ、モズクガニなどがバケツに。すべてヨシとの共生関係にある生き物だ。ヤマトシジミはこのあたりの特産物で、幼生のころはヨシの根にくっついて生きている。モズクガニも海水と淡水の混ざる汽水域で産卵し、ひたすら歩いて川を遡るそうだ。上流100kmの川辺でも生息している。

よく見ると、泥地の表面にポツポツとたくさん穴が開いていた。少し掘り返してみたら、出てきたのはミミズのような生物で釣り餌にも使われるゴカイ。上流から流れてくる有機物を食べている。環境を浄化してくれるのだ。と同時に、水鳥などのエサにもなる。

ヨシ原がなくなると、こうした生き物もいなくなってしまう。水辺の生き物にとってもヨシ原がいかに大切なものか、よくわかった。

午後を過ぎると、だんだん満ち潮になって、川の水かさが増す。株の植え替えが終わるころにふと気づくと、干潟に川の水が迫っていた。
環境調査では、参加者が生き物の説明にじっくりと耳を傾けた
これで本日のフィールドワークは終了。河原で記念写真を撮る。

仙台市から参加した田中治美さんと齋知恵さんは友達同士。新聞でASFを知り、初めて参加した。

「知らないことがたくさんあったから、来てよかったです」と田中さん。

「北上川のヨシが有名で、全国の茅葺き屋根に使われていることは知っていたんですけど、ヨシって自然に増えてくると思っていたし、地盤沈下しているのも知らなかった。植えても、もしかたら根付かないかもしれないとは意外でした。もっと頻繁にこういう機会があって、知ってもらえると良いですね」

齋さんも「楽しかったです」と話す。

「ボランティアに参加したいと思いつつ、なかなか機会がなかったので。生物のこともわかって良かった。自分にできることって本当に少ないですけど、できることがあればやりたい。いいきっかけになりますよね。今度は友達を、もっといっぱい誘います!」
仙台市から参加したと齋知恵さん(左)と田中治美さん(右)

中間支援組織を仲立ちに、企業が地域と手を携える

昼休みを利用して、スタッフの人たちに話を聞いた。

「ASF」は、トヨタの企業活動にとってどんなプラスになっているのだろうか。このプロモーションキャンペーンで、AQUAの売り上げは伸びたのか。
株式会社トヨタマーケティングジャパンの折戸弘一さん
株式会社トヨタマーケティングジャパンの折戸弘一さんは、こう話す。

「テレビCMのような、通常の広告宣伝活動もしています。一方で、未来を見据えてつくった世界一低燃費なクルマ(*1)なので、未来に何か良いものを残したいという気持ちで展開している活動が「ASF」です。したがってASFが短期的な販売増にどの程度結びついているかは言えませんが、2012年10月に、16カ月連続で国内販売台数首位だったプリウスを抜いてAQUAがトップになりました」

*1) 2013年3月現在。ガソリン乗用車(除くプラグインハイブリッド車)。トヨタ自動車(株)調べ

 

多くの参加者の動機は、敷居の低さにあるようだ。環境保護のボランティア活動をしてみたかったけれど、なかなか一歩を踏み出せなかった。でも、「これなら何となく楽しそうなので参加してみよう」という気になる。トヨタという誰でも知っている企業の冠が、気軽さと安心感を生んでいるのだろう。

「今、若い人たちのクルマ離れが叫ばれていますが、なかなか普段アプローチできない方々と接点を持ちたいという想いもありました。参加者の約6割が30代以下の方々です。ボランティア初体験、という方も多数いらっしゃるようです」と、折戸さんは言う。各地域のトヨタ販売店からも多数参加があり一般の参加者と一緒になって汗を流している。参加者にとってみれば、普段なかなかできないボランティアのキッカケを提供しているAQUAに対して好感を抱く。────そんな新しいファン層を開拓しているのかもしれない。

全国各地で活動しているので、地域の課題に精通している地方紙や地元の団体、NPOとのコラボレーションが不可欠だ。7回のシリーズを予定している「みんなの北上川流域再生プロジェクト」は、一般社団法人いわて流域ネットワーキングをはじめ、各イベントが行われる地域のNPO団体や企業が共催、協力で全面サポートしてくれている。
一般社団法人いわて流域ネットワーキング代表理事の内田尚宏さん
プログラムの企画・運営を引き受けている、一般社団法人いわて流域ネットワーキング代表理事の内田尚宏さんは「単発のイベントや助成金活用の事業はありましたが、今回のケースのような企業との連携は初めて」と言う。「お話をいただいた時、ふだんやっている活動ができるならすばらしい、と思いました。いつも財政的には困っているものですから。バスを出せる、道具をそろえられる、スタッフの手当てもできる──協力団体の方々にも、いつもだと〈すみません、ありがとうございます〉と頭を下げて終わるところを(笑)、ある程度お礼ができます」

行政との連携でも常に課題となるのは財政面で、企業の支援は心強い。

ASFの鶴見川流域と北上川流域の企画全体に関わり、企業と地域との橋渡し役として重要な役割を果たしているのが、一般社団法人Think the Earthだ。コーディネーターの原田麻里子さんが言う。
一般社団法人Think the Earthコーディネーターの原田麻里子さん
「皆さん根底では同じ想いなのですが、やはり企業の論理と地域の団体やNPOの論理は違いますから、そこをいきなりストレートにぶつけあうと、あっという間に決裂しかねません。私たちは双方の事情をよくわかっているので、お互いの気持ちを汲んで解決の道筋を頭に入れながら相談しています」

内田さんも「とても上手につないでいただいています。こういう組み方というのは今後も必要ですね」と話す。企業が中間組織を仲立ちに地域と手を携え、市民と一緒に行う社会貢献活動。しかもそれが、企業のイメージアップにつながる具体的な商品プロモーションになっている。新しい「共創」のあり方の1つに違いない。

みんなで動くと、見えないところでも何かが起きる

昼食時には、地元でヨシの腐葉土を使った米づくりを行っている大内産業さんから、石巻ならではのホタテ汁が振る舞われた。大ぶりのホタテだけでじっくり出汁をとってあり、思わずため息がもれるほどおいしい。

午後2時から、茅葺き壁の熊谷産業の社屋で今日のおさらいのレクチャー。
「ASF」アドバイザーの岸由二・慶應義塾大学名誉教授
ASFアドバイザーでNPO法人鶴見川流域ネットワーキング代表理事の岸由二・慶應義塾大学名誉教授からは、ヒトが決める行政区分を超えた、河川と支流で決まる「流域思考」の大切さを学び、山田一裕・東北工業大学教授からは、北上川河口のヨシ原の保全と活用について改めて学んだ。

「地域がヨシを生業に利用し、それによってヨシが保存され、ヨシ原特有の生態系が守られる。そうしたサイクルが回ることがもっとも大切」と、山田教授は力説した。茅葺き屋根こそ神社仏閣のような文化財にしか見られなくなったが、ヨシ殻の腐葉土やよしずなど、利活用の方法は、いろいろ考えられそうだ。

まとめに、参加者同士によるキーワードトーク。気づいたことや大切に思ったことを1つのキーワードにして、2人1組で5分間、そのことについて話し合う。最後に参加者全員がキーワードを掲げ、登壇者とスタッフが気になったキーワードを書いた人を指名し、コメントをもらった。
参加者全員で行われたキーワードトーク
「ヨシリレー」(男性)————「一番楽しかったのは、掘ったヨシのバケツリレー。ヨシの株を手に持っているだけでは何もはじまらないけれど、ああやってみんなで動くといろんなことが起きるんだなあ、と思いました」

「見えない部分」(女性)————「これをキーワードに選んだ理由は3つ。地下茎を切ってしまうとヨシは育たないこと。湿地の中にいたゴカイが有機物を分解したり鳥のエサになること。最後に……実は昨日、足をくじいてしまい、皆さんとは別に特別待遇でスタッフの方とご一緒させていただいたのですが、そのおかげで裏方のご苦労がわかりました。見えない部分の大切さに気づきました」

「みんなとだから、できること。」がASFのキャッチフレーズ。その言葉はたしかに“振る舞い”として共有されているようだ。

AQUA SOCIAL FES!! http://aquafes.jp/top/
ASF公式Facebookページ http://www.facebook.com/aquafes
一般社団法人いわて流域ネットワーキング http://p.tl/U_-P
村づくりNPO法人 りあすの森 http://www.riasnomori.jp/
有限会社熊谷産業 http://kayabukiyane.com/
一般社団法人Think the Earth http://www.thinktheearth.net/jp/

7月5日(金)イベントでは、一般社団法人Think the Earth理事で「AQUA SOCIAL FES!!」のアドバイザーでもある上田壮一さんが登場します! 詳細は下記のリンクをご覧ください。


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