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あしたラボのイベントとその様子をご紹介します。

1周年記念イベントレポート
「社会を動かす“共創”」を考える (上)

2013年07月24日



1周年記念イベントレポート<br />「社会を動かす“共創”」を考える (上) | あしたのコミュニティーラボ
7月5日(金)、〈あしたのコミュニティーラボ〉の1周年を記念して、ワークショップイベントを開催しました。タイトルは、「社会を動かす“共創”を考える――3年後に向けてイノベーターが取り組むコト」。各分野のイノベーターをお招きし、「共創」について考えたイベントの様子を詳しくレポートします。

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あしたのコミュニティーラボの1年間を振り返って

盛夏のきざしを感じる7月5日、多摩川を見下ろす二子玉川駅そばのイベントスペース「カタリストBA」。“共創”によって何が実現できるのか、“共創”がビジネスのどんな地平を開くのか、関心をもつ人たちが集まりました。

参加者全員が「3年後に自分が実現したいこと」を手元の用紙に書き込み、近くの人と自己紹介がてら、それについて話し合う。「あしたのコミュニティーラボ」1周年記念のワークショップイベントは、こんなアイスブレイクから始まりました。

〈あしたのコミュニティーラボ〉代表・柴崎辰彦

1年間の取り組みで浮かび上がってきたキーワードが“共創”。モデレーターを務める〈あしたのコミュニティーラボ〉代表・柴崎辰彦が、「百人ビールラボ」「神山町サテライトオフィス」「データシティ鯖江」など、メディアで取り上げた“共創”の事例を紹介しつつ、あらためて〈あしたのコミュニティーラボ〉の目指す姿を明示しました。

「あしたのコミュニティーラボ」が目指す未来像

それは、企業・個人・公共をつないでイノベーションを促進する場。
ウェブサイトのヴァーチャルな場と、ワークショップイベントのリアルな場を行き来しながら、今後も多くの人たちと共に意見交換や思考実験を続け、広く社会に開かれた価値を創造していきたいと願っています。

世界とつながる“社会的なものづくり”

FabLab Kamakura(ファブラボ鎌倉)LLC代表の渡辺ゆうかさん

「社会を動かす“共創”」に取り組むイノベーターのトップバッターは、FabLab Kamakura(ファブラボ鎌倉)LLC代表の渡辺ゆうかさん。渡辺さんはファブラボ鎌倉の活動についてプレゼンテーションしてくれました。

ファブラボとは、3Dプリンター、レーザーカッターなどのデジタル工作機械によってさまざまなものづくりをするオープンワークショップスペースです。よく「パーソナルファブリケーション(=個人によるものづくり)」と呼ばれますが、むしろ「ソーシャルファブリケーション(=共創によるものづくり)」のほうが実態に近い、と渡辺さんは言います。ファブラボはDIY(Do It Yourself=自分でつくる)ではなく、Do It With Others(みんなでつくる)です。

ファブラボはウェブを基盤にした情報化社会の次世代インフラ。そこでは教育、まちづくり、ビジネス、研究開発、町工場活性化、芸術表現、人材育成、適正技術など多様なテーマに取り組んでいます。2013年6月現在、約50か国200か所以上に広がる国際的な草の根ネットワークです。日本では2011年5月に鎌倉とつくばが同時にオープンし、順調にその数を増やしています。

渡辺さんによれば、ファブラボに必要な要素は4つ。第1に「ほぼ何でもつくるが、人を傷つけるものはつくらない」などのファブラボ憲章を掲示し、その理念に従って運営されていること。第2にデータやアイデアをオープンにしながらものづくりをすること。第3に世界ファブラボネットワークに参加すること。第4に他のファブラボとコラボレーションしやすいように標準的なデジタル工作機器を備えていること。

ファブラボ鎌倉の月曜日は地域に開かれたオープンラボです。朝9時に集合して1時間掃除した人はラボを自由に使える、というルールにしたところ、いろんな人が集まりました。ロボット工学を学んでいたアクティブシニアから、3Dプリンターで帯留めをつくりたい着付師まで。見学に来ていた小学生の「わからない」の一言をきっかけに3Dモデリングソフトの勉強会が自然に始まったりします。通って来る人が互いに教え合うのがファブラボの特長です。過日、「あしたラボ」スタッフも3Dモデリングに初挑戦してみました(体験ルポ “共創”の現場をゆく―― ファブラボ鎌倉(FabLab Kamakura)で「MAKERS」への第一歩!)。

設計データがあれば、世界中のどこでも同じものをつくることができる(提供:渡辺ゆうかさん)

地元の革職人がつくったスリッパのキットは、レーザーカッターで開けた穴に沿って縫えば誰でもスリッパがつくれる、というもの。100%完成品ではなく、関われる余白を残したものづくりです。このスリッパキットのデータはウェブ上でクリエイティブコモンズライセンスを付けオープンにしています。ケニアのファブラボでは商品として販売し、収益源となっているそうです。こうした世界とつながる“共創”のありかたもファブラボならではのものでしょう。

モデレーターの柴崎から、ファブラボ鎌倉はどのような収益源で運営しているのか、との質問がありました。渡辺さんによれば、スタートアップ時は内閣府の助成金を受けていましたが、認知度が上がるにつれ、企業とのコラボレーションでリサーチから商品開発までの支援を収益モデルとしています。これから企業との新しい“共創関係”を模索していきたい、とのことでした。

一緒に汗を流す“共働”があってこその“共創”

株式会社スペースポート代表で一般社団法人Think the Earth理事の上田壮一さん

企業・NPO・個人。この3者を“ソーシャル・クリエイティブ・コミュニケーション”で結ぶ仕掛けをつくるのが、株式会社スペースポート代表、一般社団法人Think the Earth理事としての上田壮一さんの仕事です。3者が結ばれることで、企業にとってはブランディング、NPOや教育機関にとっては広報支援、個人にとっては啓発といった価値が生まれることを目指しています。

個人・企業・NPOの三者をつなぐ仕事のイメージ

上田さんは、今回のテーマ「共創」にふさわしい事例として、Think the Earthが協力している株式会社トヨタマーケティングジャパンのプロモーションイベント「AQUA SOCIAL FES!!(以下ASF)」についてプレゼンテーションしてくれました。

トヨタがコンパクトハイブリッドカー「AQUA」のプロモーションとして、日本全国で地域のNPOなどと連携し、市民参加型の水辺再生活動を行っています。それがASF。2012年から、全国50か所で年間100回以上実施し、延べ1万人以上が参加しています。

AQUAは世界最高の低燃費(*)を実現。岩手工場で生産し震災後の雇用を創出しています。環境性能が高く、社会的な意義も充分持っているクルマなのですが、この活動が画期的なのは、トヨタがCSRとしてではなく、商品の販売促進費を使って社会貢献をしていること、と上田さんは指摘します。

*2013年3月現在。ガソリン乗用車(除くプラグインハイブリッド車)。トヨタ自動車(株)調べ

 
ASFの実際の活動は、NPOが年間を通じて行っている活動に市民が参加する形をとることが多いそうです。有名な企業が主催するイベントで、ロゴの入った水色のビブスと軍手をつけ、まさにフェスっぽい、賑やかで楽しい雰囲気。「あしたラボ」スタッフも北上川河口でのアシ原再生活動に参加して、そんな様子を経験してきました(体験ルポ 共創の現場をゆく―― みんなで一緒に「未来に良いこと」しよう!「AQUA SOCIAL FES!! 2013」)。

ふだんNPOが自然回復の活動を呼びかけても、参加するのは年配の方がほとんどですが、ASFは楽しい雰囲気をつくり、ウェブやFacebookで呼びかけたこともあって、若い人たちが多く集まります。そしてまた友だちを誘ってリピーターになる。そうした好ましい循環ができているとのこと。

環境保全活動を地域住民が参加して行う機会を提供し、企業、NPO、メディア(地域のことをよく知っている全国各地の地方新聞がコーディネーターとして協力)が共に働く場を実現していることが、この活動の主要な社会的価値です。

“共創”を加速させた最大の要因として上田さんが挙げたのは「トヨタが本気であったこと」。企業とNPOをつなぐときにいちばんポイントになるのがこの点だそうです。企業が単なるイメージ戦略としてNPOに接すると、うまくいきません。上田さんがNPOと一緒に働くうえで、いつも企業にお願いしているのは「短期的な成果を見て終わるのではなく中長期的に取り組むこと」「企業の都合で進めるのではなくNPOの活動やペースを尊重すること」「社員が自ら汗をかくこと」「数字だけではなく人づくりもゴールにすること」。

“共創”の前に、企業、NPO、教育機関、メディア、市民など多様な人たちが一緒に汗を流す“共働”の場をつくる。そして何かをつくって終わりではなく“共育”にまでつなげる。それが望ましいあり方と上田さんは考えます。

右から、東北工業大学の山田一裕教授、トヨタマーケティングジャパンの折戸弘一さん、NPO法人りあすの森の豊沢幸四郎さん。企業、NPO、大学など複数のセクターが同じ目的の下に集う場として、ASFは機能している
(Copyright AQUA SOCIAL FES!! 事務局)

「会社が変われば社会が変わる」。上田さんの印象的なフレーズです。企業とNPOが社会価値の創造や社会的課題の解決のため、互いのプロフェッショナリティを提供しあう対等なパートナーになり、目的達成のための効率的で戦略的な連携がとれるようになったとき、社会は変わるに違いありません。

ICTを活用した地域共創のプラットフォームに向けて

NPO法人地域情報化モデル研究会代表理事で富士通システムズ・イーストの米田剛さん

地元青森をもっと元気にしようと、プロボノ(職能を活かした社会貢献)活動に取り組んでいるのは米田剛さん。富士通システムズ・イースト社員として、またプロボノ集団のNPO法人地域情報化モデル研究会代表理事として、ICTという職能を活かし、地元の有志と共に新たな地域価値を創造しています。

米田さんは、ICTを使って地域の埋もれた魅力を浮上させ、地域をつなぐ情報連携基盤を創造した「観光クラウド」サービスを紹介してくれました。

観光クラウドの最も主要な機能は、自治体などの観光サイトに組み込まれている「Webルートガイド」。ネットショップの買い物かごに入れるような感覚で、行きたい観光スポットをランダムに選ぶと、最短で回れる順番に最適ルートをマップ上に提示し、走行距離と走行時間も自動計算するサービスで、個人的な興味・関心に応じた旅の計画に役立つセルフツールです。

米田さんが強調するWebルートガイドの特長は、移動ルート周辺にある小さな観光資源も「立ち寄りスポット」として浮上させ、気づいてもらう仕掛けを施してあること。これを利用すると、有名な観光スポットだけを回るのではなく、旅の醍醐味である“自分なりの小さな発見”があって、より立体的な旅ができることは、「あしたラボ」スタッフも実体験済みです(体験ルポ 共創の現場をゆく 観光クラウド「Myルートガイド」で青森を楽しむ!)。

Webルートガイドは県内30団体、全国12県に展開。モバイル端末でも地元の観光パンフレットやレンタカー会社と連携したルートガイドが可能です。

「官」は観光情報をオープンデータ化。「民」は現場の生の声、旬の話題を提供。それらが観光クラウドという、企業の提供するプラットフォームに集結し、WebルートガイドやMobileルートガイドなど旅行客向けのツールとしてアウトプットされる。これが青森流の、地域をつなぐ“共創”のスキームです。

米田さんは「人と人との関係価値」である「ソーシャルキャピタル(=社会関係資本)」がこれから重要になると考えています。人と人とがつながって、何らかの新しい価値を地域社会にもたらす。まさしく“共創”にほかなりません。

ソーシャルキャピタルをめぐる環境は大きく進化している(提供:米田剛さん)

NPOでのプロボノ活動も、プロの知恵と社会のリソースの結合であり、ソーシャルキャピタルの一つ。こだわっているのは、委託などのお金をもらわないこと。お金がからむと不純物が生まれる。逆にお金のないほうが、知恵が生まれる。必要最低限のお金しか使わず、みんなの持っているリソースを持ち寄るほうがむしろイノベーションはしやすい。それが米田さんの経験知です。

もともと地域に内在しているソーシャルキャピタルをICTでどう顕在化し、地域共創のプラットフォームへと育て上げるか。自治体のオープンデータによって社会的に価値のあるアプリケーションを作成するなど、ICTエンジニアの社会参加をどう促すか――米田さんの挑戦はこれからも続きます。

モデレーターの柴崎から、青森でこのような地域情報化が実現できたのはなぜか、との質問がありました。田舎は人口が少ない分だけ自分の価値が相対的に上がり、仲間も発見しやすい、と米田さんは言います。東京でやろうと思ったら大変だけれど、青森なら等身大のアプローチで可能だし、自分のできる範囲で愛着のある郷土をなんとかしようという想いが根底にあったそうです。


(編集部より)

ここでは取り上げられなかった内容も多岐にわたります。
イベントの様子を、ぜひ下記のYouTubeアーカイブからダイジェストでご覧ください。

※モバイル環境でご視聴の際は、WiFi接続でご覧いただくことをお奨め致します。

後編に続く


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