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「日本ファブラボ会議2013」イベントレポート
——第1部「ファブラボのいま」(後編)

2013年10月01日



「日本ファブラボ会議2013」イベントレポート <br/>——第1部「ファブラボのいま」(後編) | あしたのコミュニティーラボ
FabLab Japan Networkと〈あしたのコミュニティーラボ〉がタッグを組み、2013年8月30日(金)に行われたイベント「日本ファブラボ会議2013」。ここでは引き続き、国内のファブラボ運営者を中心に行われた第1部の模様をお届けします。ファブラボが描く、今後の内外ネットワークとの連携の可能性に迫りました。

前編はこちらから

地域固有の課題を解決するものづくり

「FabLab Kitakagaya」は2013年4月にオープンしたばかり、関西初のファブラボです。ニューヨークのソーホーなどをモデルにした「クリエイティブ・ビレッジ構想」が進む大阪市住之江区北加賀屋の協働スタジオで、建築事務所やアートギャラリーなどともに拠点を構えました。バスを使った移動型ファブラボ、子どもたちに「なぜ学ぶのか」を考えてもらう「ファブキッズ」、ランニングサンダルをつくる「ワラーチプロジェクト」などを行っています。

FabLab Kitakagayaの津田和俊さん

FabLab Kitakagayaの津田和俊さんは大阪大学工学部助教ですが、FAB9では海外のファブラボ関係者と初めて出会い、学生に戻った気分で刺激を受け、エキサイトしたと言います。夜のバーでは、ファブラボのコンセプトであるLearn、Make、Shareというそれぞれの色のカクテルが用意されていて、ファブラボで推奨されているとおりに3種類の違いを楽しんでいたら、次の日寝過ごしてしまったのだとか。

「FabLab Sendai FLAT」は仙台市のクリエイターのためのものづくり支援事業として、公的予算で運営されているというのが特徴。駅近のテナントビルで2013年5月からオープン。ほぼ無料で週5日、夜9時まで利用できます。仙台に多い工芸関係者との連携が使命の1つです。柄をレーザーカッターで作成した漆塗りの浴室用タイルなどをFAB9では展示しました。子ども向けのワークショップや学生の研究にも活用されています。子どもの夏休みの宿題に利用することを口実にして、お父さんが遊びに来る光景もこの夏は見られたそうです。

FabLab Sendai FLATの渡辺圭介さん

FabLab Sendai FLATの渡辺圭介さんがFAB9ですごいと思ったのは、企業とつくり手の関係性に変化を感じられたこと。たとえば、特設作業スペースの「スーパーファブラボ」にはローランド ディー. ジー. 株式会社の新品のデジタル工作機械が設置されていましたが、お土産として参加者に配られたUSBメモリーのデータには、ローランドのマシンをハッキングするのに必要なコマンド、秘密のウェブサイトに入るためのIDとパスワードが記されていたそうです。使う道具すらも自分たちでプログラミングし、企業もハッキングを推奨する。次世代のものづくりの予感がしたと言います。

「FabLab Kannai」はNPO法人横浜コミュニティデザインラボが運営するコ・ワーキングスペースに入っていて、テストランが始まったばかり。クリエイティブシティを標榜する横浜市にはクリエイターやアーティストが集まっており、関内はそのど真ん中に位置しているので、ローカルなつながりを強化する一方、港町だけに「ファブの港」として世界ともつながりたいと考えています。また、レーザーカッターを使って町の標識などを補修する活動を通じてどんどん町中へ出ることによって、ファブラボの裾野を広げていきます。

FabLab Kannaiの古川英幸さん

FabLab Kannaiの古川英幸さんはFAB9で学生スタッフとして裏方で汗だくになりました。最大のインパクトはグローバルなコミュニケーションにあった、と古川さん。最終日がファブラボ関内のオープニングデイに当たる日でしたが、3Dレーザーカッターで加工した欄間や網戸を展示したら、あるフランス人がとても気に入ってくれたそうです。いわく、「日仏のデザインマインドが交流できたひとときだった」。

最後にプレゼンテーションしたのは、フィリピンでファブラボをセットアップしている青年海外協力隊員の徳島泰さん。フィリピンのボホール島は美しいダイビングスポットですが、貧富の差が激しい地域です。竹やココナッツシェルなど、ローカル素材を使った独自のデザインのものづくりで産業を興し、雇用を生む社会的ミッションを掲げたファブラボが、日本の国際協力機構 (JICA)やフィリピン政府、州立大学の支援で誕生しようとしています。増加するプラスチックゴミを溶かして原料に戻し、デザインを加えて製品化するリサイクルプロジェクトも進めるつもりです。

青年海外協力隊員の徳島泰さん

途上国のファブラボには材料が手に入りにくい、メンテナンスがしにくいなどの課題があります。FAB9では途上国間で情報交換できたのがよかったとのこと。最終日にアジアアソシエーションが発足しました。アジアならではの素材、スキルによるものづくりで協働します。ファブラボには地域固有の課題を解決する文脈があることに徳島さんはあらためて気づかされました。日本のものづくり教育の関係者からも研究のフィールドに使いたいと声をかけられたそうです。日本のものづくりと途上国との掛け橋になれたらいい、と徳島さんは考えています。

ファブラボに参加するとは、当事者になること

終盤、会場を訪れていた参加者からは、「日本の町工場の優れた技術を活かす場をファブラボに期待したが、すこし見当ちがいだったかもしれない」という意見が述べられました。

それを受けて、登壇者は「フェイズの違いではないか」と言います。その技術で何ができるか、ファブラボの多様なバックボーンをもつ人たちとともに考え、リサーチしてプロトタイプ段階が終わり、1,000〜2,000個レベルの「中量生産」フェイズになったとき、町工場と連携できる。そうした事例は今後出てくるはずです。

別の参加者からは、こんな意見が挙がりました。

「企業で設計技師をしていた技術を活かしたいとファブラボ鎌倉に行ってみたら“そこには何もなかった”。でも、いろんな人に出会えて、さまざまなアイデアを交換し合える。そこから何かが始まるかもしれない。ファブラボとはそういう可能性のある場所ではないか」

また、農業や漁業の第一次産業も含めて、地域に潜在している知恵や技術をいかに掘り起こしてビジネスに結びつけられるか、そのインキュベーション機能もファブラボに期待されているのではないか、との意見も寄せられました。

こうした議論に呼応して、ファブラボ・ボホールを立ち上げようとしている徳島さんは、「日本の町工場や第一次産業の技術がフィリピンで生きるかもしれません。ぜひファブラボのネットワークに参加してください!」と力強いメッセージを送りました。

また、登壇者からは「ファブラボに期待したい」と言われるのは光栄だが、一方でファブラボは「期待される存在ではない」ということもきちんと伝えていかねば、という主張も出ました。ファブラボに参加することは、すなわち人まかせではなく当事者になること。「ものづくり」を通じて自分たちがこれからの社会をつくっていく当事者意識。ファブラボとは異質な背景と価値観をもつ人たちが集まるプラットフォームであり、だからこそ多様なプロジェクトが立ち上がります。

企業も行政も学校も、組織が大きくなり硬直化して前例主義になると、そうしたクリエイティブな刺激の生まれるプロセスをたどりにくい。そこに風穴を開けられるのがファブラボのイノベーティブなところなのかもしれません。

最後は参加者を巻き込んで、ファブラボの本質に迫る議論になりました。第2部「あしたのFABのカタチ」へ向けて、会場はますます熱を帯びていきます。

第2部はコチラ


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