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「日本ファブラボ会議2013」イベントレポート ——第2部「あしたのFabのカタチ」(前編)

2013年10月04日



「日本ファブラボ会議2013」イベントレポート ——第2部「あしたのFabのカタチ」(前編) | あしたのコミュニティーラボ
FabLab Japan Networkと〈あしたのコミュニティーラボ〉がタッグを組み、2013年8月30日(金)に行われたイベント「日本ファブラボ会議2013」。第2部では、これからのFab(=パーソナルファブリケーション)が世の中にもたらすソーシャルファブリケーションの可能性について、ファブラボを含めたさまざまな立場の人たちと一緒に考えました。

第1部はこちらから

日本のパーソナルファブリケーションは“ホビ”ー?

「日本ファブラボ会議2013」第2部では「あしたのFabのカタチ」と題し、FabLabが未来のものづくりの可能性をどう開くのか、深掘りしました。

デジタルファブリケーションもしくはパーソナルファブリケーションと呼ばれる動きは、単なるデジタル工作機器を使ったDIY(Do It Yourself)ではなく、リアルな場とソーシャルネットワークを介して異質な人たちがつながり、学び合いながら多様なアイデアを共有するDIWO(Do It With Others)であることに最大の意義があります。ものづくりがクローズドな企業の専有から開放され、ネットワークでつながった個人を担い手とする「ソーシャルファブリケーション」へとオープン化したとき、どんな新しい価値が生まれるのでしょうか。そうした観点から「あしたのFabのカタチ」を考えていきます。

この先、ファブラボで活動する人とそうでない人がどのように交じり合って新しい社会を生んでいくのか。そんな予感をはらみつつ幕を閉じた第1部でした――。第1部最後での参加者と登壇者の議論を受け、第2部のモデレーターを務めるFabLab Shibuyaの梅澤陽明さんは冒頭でそう述べました。
FabLab Shibuyaの梅澤陽明さん
梅澤さんはFAB9(第9回世界ファブラボ会議)に参加した東ティモールの人から、こんなことを言われたそうです。

「日本でのパーソナルなものづくりを見ていると、ホビーですね。趣味の延長でファブラボを使うというのは、東ティモールでは参考になりません。東ティモールには社会的な課題が多くひそんでいて、そこへ直接的に結びつくような場所としてのファブラボをつくりたいんです」

たぶん日本でもホビーを楽しんだ先に、社会的な場所へとつながっていくのではないか。梅澤さんはそう考えています。今のところまだ「個人的なものづくり」に留まっている「パーソナルファブリケーション」が、どう「社会的なものづくり」=「ソーシャルファブリケーション」に広がっていくのか。

第2部では、産官学の立場から登壇者が問題提起を行った後、参加者全員がテーブルディスカッションに参加し、議論を深めました。

あらゆる前提を問い直せるクリエイティブな場へ

多摩美術大学教授の久保田晃弘さん
研究所、図書館、公民館、学校……ファブラボはいろんなものにたとえられますが、重要なのはファブラボがリアリティをもってどう社会に存在し得るのか。それを考えたい、と多摩美術大学教授の久保田晃弘さんは言います。

仮にファブラボが大学のようなものだとすれば、既存の慣習や制度に対してあらゆる前提を問い直すことができる。そういう人材を育てる場所が大学です。学生が卒業後もそうしたクリエイティブな活動を続けるための受け皿になり得ること。それがファブラボの意義ではないか。きっかけは趣味の延長の「個人性」でもよい。人との出会いや学びで「普遍性」に昇華したとき社会に役立つ。ファブラボはそうあってほしい、と久保田さんは考えています。

性急に答えを求めるのではなく、むしろ問いを立て続けること。“Do It With Others” が本当によいことなのか。それすらも検証の対象にして、自己批判的に問題を考える姿勢が大切ではないか。そう久保田さんは指摘します。

続いてプレゼンテーションをしたのは、文部科学省で産学連携を推進する鷲崎亮さん。これまで「産学官連携」といわれてきたが、これからは「個学官連携」という新しいスタイルによってもイノベーションを起こせるのではないか。鷲崎さんは、「個人的な考えですが」と前置きしたうえで、ファブラボにそんな可能性を感じています。「個人・大学・行政がファブラボというプラットフォームを通じてどんな連携をとれるのか、楽しみにしている。楽しくなければイノベーションは起きないのでは?」と鷲崎さんは提言しました。
文部科学省で産学連携を推進する鷲崎亮さん
最後のプレゼンテーターとして登壇し、開口一番、「ぜひ〈産〉も仲間はずれにしないでほしい」と会場の笑いを誘ったのは、富士通株式会社ネットワークビジネス戦略本部の村西明さん。農業や医療などの社会的な分野にネットワーク技術を展開する仕事に取り組むなかで、100円均一ショップのタッパーウェア・物干竿・秋葉原部品というファブラボ的な発想で、センサーと無線を組み合わせた安価で簡易なマルチセンシングネットワーク、通称「カモ」を開発しました。プロジェクト「カモ」 と呼んで、全国津々浦々、牡蠣の養殖場、牛舎、ワイナリー、茶畑などで実証実験を繰り返し、散水や防除のタイミングなどをピンポイントで効率的につかみ品質と収量を上げたい農業の「見える化」のニーズに「現場起点の技術」で応えようとしています。
富士通株式会社ネットワークビジネス戦略本部の村西明さん
富士通の顧客は全業種にわたっているので、現場起点のファブラボ的な技術によって情報を価値に変え、ビジネス展開していくことは可能です。しかし、このような日常業務から逸脱した社内起業的な取り組みは、よほどうまくやらないと、四半期決算や本業との板挟みでなかなか続かない、どうしてもこじんまりしてしまう、と村西さんは本音を漏らします。もっと広げ、もっと弾けさせるには、市民や学生との“共創”が必要で、それがソーシャルファブリケーションにつながっていくのではないか、と問題提起しました。

小さなイノベーションはすでに起きている

会場からは、「話を聞いていてもどかしい」との声が挙がりました。
「超高齢化社会を迎えた今、たとえば認知症の人と一緒に生きるためのものづくりは、すぐにでもファブラボで取り組むべきテーマ。また、企業には危機感が足りないのではないか。ユーザーのコミュニティーとともにカスタマイズしたものづくりをしないと、ファブラボ発の小ロット製品がいくらでも出回る。そんなことが現実になろうとしているのに、日本の状況は静止しているように見える」というわけです。

これに対しては会場から、すでに日本のファブラボのネットワークでは、認知症の人への介護をサポートするためにシール状の薬を日付ごとに貼れる「お薬カレンダー」などを一例として、福祉の領域でも小さなイノベーションがたくさん起きている、という応答がありました。また、企業の観点からは「ある程度の規模にならないとビジネスとして成立しない」という文脈が崩れるのではないか、との指摘がありました。ファブラボでは生産のコストが下がりスピードも格段に速くなる。すると小ロットでもビジネスの成り立つ小企業がたくさんできる。そうしたニーズと、大企業ならでのファシリティやパワーを結びつける場にもビジネスが生まれるのではないか、というわけです。

登壇者の鷲崎さんからは、「果たしてファブラボはお金を稼いで雇用を生む持続可能なシステムになりうるのか?」という問題提起もありました。成果をウェブでオープンにして共有するとなれば社会貢献に近く、どんどん模倣されて発案者に利益が還元されなくなる。知的財産権の問題です。

これはファブラボの間では常に議題に上るテーマで、どこまでオープンにしてアイデアを共有するか、その線引きは悩みに悩んでいる、とモデレーターの梅澤さん。登壇者の村西さんは、企業とファブラボが連携するには知財の問題を避けて通れず、逃げないで互いに研究していくことが大切、と言います。

FAB9実行委員長の田中浩也さんからは、まさにその問題を考えてもらうために、企業の人にもびっしり1週間、FAB9に参加してもらったわけで、その共通体験が今後生きるのではないか、とのコメントがありました。
FAB9実行委員長を務めた田中浩也さん
後編はこちらから


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