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社会課題に参加するきっかけをつくる ──Change.org ハリス鈴木絵美インタビュー(下)

2013年11月20日



社会課題に参加するきっかけをつくる ──Change.org ハリス鈴木絵美インタビュー(下) | あしたのコミュニティーラボ
ウェブで賛同者を募り、すこしずつ社会を動かす「Change.org」。世界196か国、4500万人が利用する署名キャンペーンサイトだ。日本代表を務めるのは、ハリス鈴木絵美(エミ)さん。私たち1人ひとりは社会の問題に、どのようにコミットしていけるのか。後編では、彼女自身の経験からひも解いていく。

前編はこちら

オバマのキャンペーンは、みんなで一緒につくった

──エミさんはアメリカの大学を卒業してコンサルティング会社で働いていたそうですが、どんな経緯でChange.orgとめぐりあったのですか。

エミ 仕事は楽しかったんですが、ストレスもきつくて。働きすぎて2年足らずで腰を悪くして、リハビリ状態に追い込まれました。がんばっていい会社に入ったつもりなのに、あまりにも早い挫折にショックを受け、英語でいう“quarter life crisis”(20代の危機)を経験したんです。そんなとき、友だちに誘われたのが、現アメリカ大統領オバマさんの講演。企業では得られなかった社会的な意味や価値を、彼はアメリカの未来という文脈で語っていて、なんて素敵な人だろう、と。ブッシュ政権の末期で、インターネットの活用も重なり、若い人たちを巻き込んだ新しい風が吹いていました。それで会社を辞め、オバマの選挙運動キャンペーンのボランティアに参加したことが、ターニングポイントでしたね。

──そこからキャンペーンの世界へ入っていったわけですね。

エミ テレビの制作会社でアソシエイトプロデューサーをするなど、寄り道しながらもたどりついたのが、ソーシャルアントレプレナーの立ち上げたPurposeという会社です。オバマの選挙キャンペーンでも使われた、CSRをマーケティングに活かすというコンサルティングからはじめて、4年目には、社会的なキャンペーン組織をインキュベートする仕事まで手がけました。

──それで日本でも同じことをしようと?

エミ Purposeでの仕事は、たとえば人身売買撲滅のキャンペーンに数万人を動員するというような、問題をこちらで設定してそれに対して人を集めるというものでしたが、Change.orgは個人を起点にして、誰でも署名キャンペーンが展開できるウェブサービス。どちらかというと、FacebookやTwitterに近い大規模なプラットフォームなんですね。わたしがなぜChange.orgを日本で立ち上げる仕事に興味があったか。それは、日本に関するプロジェクトがPurposeにいた4年間でまったくなく、もったいないなあと思ったからです。

──あくまでも個人発信の署名キャンペーンがChange.orgの特徴なんですね。

エミ そうそう。そして誰でも無料で使えて、完全にオープン。キャンペーンの良し悪しの審査もしないし、ある意味ユーザーに委ねています。署名は実名ですし、あんまり変な内容にはそもそも賛同者が集まりません。わたしが2008年のオバマの選挙キャンペーンで目からウロコだったのは、ボランティアが自分の友だちを誘って、選挙活動に参加していくこと。「そうか、みんなで一緒につくっていくのね」と実感できたことなんです。多くの人にそんな経験をしてほしいと思って、Change.orgの仕事にたどり着いたって感じですね。

企業の最大の社会貢献は社員を6時に帰すこと

──署名を集めるのは大変な作業に思えますが、ウェブサイトを利用すれば比較的簡単にできるわけですよね。

エミ 1人が強い思いを持ったときに、街頭に立たなくても1週間で2万筆を集められる可能性があるのはいいことです。社会のために何かしたいという人は日本にもたくさんいると思うんですが、会社以外の団体に所属して社会活動を行うのはハードルが高い。だから、Change.orgみたいなところで、自分の名前を貸すだけで気軽に誰かの応援をしてあげられるというのは、バリバリ働いているビジネスパーソンでもできる、ハードルの低い社会貢献ですよね。

──なるほど。ではまさにその、日本のビジネスパーソンの働き方について、エミさんはどう思いますか。

エミ 自分も体を壊した人として言うと、みんな働きすぎですよ。もちろん、私は日本企業で働いたことがないし、あくまでも第三者の意見として言うんですけど。データを見ていると、生産性が低い長時間労働を強いられることで、家庭や生活や健康が犠牲になっている。この大きな社会課題を、まず変えなくちゃいけないですよね。企業としても、今後の経済は人材活用で勝負が決まると思うので、何年も継続してクリエイティブに働ける環境づくりをしないと、優秀な人材が集められず、生き残っていけないんじゃないでしょうか。

──そんな環境を、どうしたら変えられるでしょう。

エミ トップリーダーがロールモデルになるしかないと思います。だって日本企業はトップダウンでしか変わらないじゃないですか。トップリーダー自身が短時間で生産性の高い働き方をして、同じような働き方をするチームを高く評価する。そんな組織体制にする必要がありますね。

──ワークライフバランスをしっかり保つことこそが、ひいては社会課題の解決につながる、と。

エミ そうですね。たとえば男性の長時間労働で家庭内の負担がすべて女性にしわ寄せされているとしたら、絶対に女性は職場で活躍できない。日本の大企業ができるいちばんの社会貢献は、社員を6時に帰すことです。これ、記事に書いてくださいね、ほんとにそう思ってますから(笑)。

ハリス鈴木絵美(はりす・すずき・えみ)

Change.org日本代表。高校まで日本で育ち、米イェール大学に進学。卒業後はマッキンゼー&カンパニー、オバマキャンペーンで経験を積み、ソーシャルインキュベーター企業Purposeの立ち上げ期に参画、同サービスの成長に貢献。2012年7月に日本に帰国後、現職。Change.org は、「変えたい」気持ちを形にするソーシャル・プラットフォーム。誰でも無料で署名キャンペーンを発信し、声をあつめられるサービスを提供し、環境や健康、人権など多岐に渡るキャンペーンが毎月約1万5000件立ち上げられ、世界中の人々に発信されている。


Change.org


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