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アイデアを生む「遊び」のある働き方とは? ──福島発ベンチャー、Eyes,JAPANのワークスタイル

2014年03月28日



アイデアを生む「遊び」のある働き方とは? ──福島発ベンチャー、Eyes,JAPANのワークスタイル | あしたのコミュニティーラボ
あしたのコミュニティーラボ(以下、あしたラボ)では、4月、東北に人を呼びこむアイデアをみんなで考える「さくらハッカソン2014」を開催する。ハッカソンのモデレーターを務めるのは、会津大学発のベンチャー企業経営に18年の実績を持ち、あしたラボのインタビューにも登場いただいた株式会社Eyes,JAPANの山寺純さん。さくらハッカソン2014に先立ち、そもそもどんな働き方が自由で柔軟な発想を生み出すのか、山寺さんのワークスタイルから探ってみた。

オレたちは人類の4番目のリンゴになる!

「優れたテクノロジーは魔法と区別がつかない」。

現代のデジタルカルチャーを予言したかのような、映画『2001年宇宙の旅』の原作者として知られる英国のSF作家アーサー・C・クラークの言葉だ。
アーサー・C・クラークの言葉が入ったネームプレート
株式会社Eyes,JAPAN(アイズジャパン)の使命は、魔法のようなデジタルカルチャーをつくり出すこと。日本最初のコンピュータサイエンス単科大学である会津大学の事務局通訳員を務めていた山寺純さんが、会津大学の学生たちと1995年に起業した。モーションキャプチャーやステレオ3Dを含む3次元CGの制作、ロボティクスや医療セキュリティの研究開発、ウェブサイトの企画制作・運営、モバイルアプリ開発、ネットワーク構築とシステム管理などを手がけている。
Eyes, JAPAN代表取締役社長 山寺純さん
特に医療分野での実績が高い。医療ICTに関する世界最大のカンファレンス「Health2.0」の福島チャプター事務局を務め、医療アプリとセキュリティ技術を競うハッカソンを2010年から運営している。77の国と地域が参加したHealth2.0の世界大会コンテスト「2013 Developers World Cup Finals」では、Eyes,JAPANスタッフと会津大生による合同チームが、ワクチンの行き渡らない国の乳幼児を救う予防接種基金への寄付を呼びかけるWebサービスを開発し、みごと優勝の栄冠を勝ち取った。

Eyes,JAPANの社員12名は、システムやネットワークの研究開発を手がけるエンジニアと、クリエイティブワークを手がけるデザイナーの混成部隊。ロシア、ドイツ、中国など国籍も多様で、社内では自然に英語が飛び交う。ドイツと神戸にも事務所があり、近くシリコンバレーにも新会社を設立する予定だ。十数名の優秀な会津大生もアルバイトとして参画している。

近くの畑にリンゴの木を1本、会社で持つ。毎年11月に実るとスタッフみんなで収穫祭を開く。「オレたちが人類の4番目のリンゴになりたい。そんな想いで仕事をしていることを確認する機会です」と山寺さん。

最初はアダムとイヴの禁断のリンゴ。2番目はニュートンが万有引力の法則を発見したリンゴ。3番目はパーソナルコンピュータをつくったアップルのリンゴ。3つのリンゴが世界を変えた。

そして、自分たちが4番目のリンゴになろう————。
「創業者のいちばん大切な仕事は会社のカルチャーをつくり、魂をこめること」。壮大なビジョンを掲げてスタッフを鼓舞する山寺さんならではの言葉だ。

社内でひときわ目立つSSS(社長サンドバッグシステム)

会津若松市内のEyes,JAPANオフィスから車でほんの10分。毎朝5時起床の山寺さんは、ときおり東山温泉の旅館「庄助の宿 瀧の湯」で朝湯につかり、おふくろの味の朝食バイキングを食べてから出勤する。スタッフを交えての「パワーブレックファスト」でも、よくここを利用するという。
オフィスの外で行われるパワーブレックファスト (提供:Eyes, JAPAN)
地産地消の旬の食材を使った朝食と温泉。ストレスをためこむことなく、頭と体をリフレッシュして仕事に臨める環境だ。

本社オフィスを案内してもらった。かつて電話交換機が設置されていたNTTの建物の2フロアを借りている。ミーティングデスクの真上にミラーボール。コーナーにはバーカウンター。コーヒーとコーラは飲み放題のカフェインフリー。立って仕事ができるスタンディングデスク。米がストックされているのは、毎月第三金曜日の「同じ釜の飯を食う会」略称「同釜(おなかま)会」用だ。

PCだけが目立つ無機的で殺風景になりがちなオフィスに、人間味と遊び心がふんだんに注入されている。極めつけは、山寺さんの似顔絵がサンドバッグに描かれた「SSS」(社長サンドバッグシステム)。
山寺さんの似顔絵付き社長サンドバッグシステム(SSS)
「居酒屋で隣に座ったサラリーマンが2時間延々と上司の悪口を言っていたんです。ウチの社員も同じだったらイヤだなと思って、ストレス解消に導入しました。けっこう女性社員も正確に顔だけ狙って打ちます。でも、目の前でやられると、さすがにへこむんで、オレがいないときならいいよ、と(笑)」

かつては簡易なパンチングボールだったが、すぐ倒れてしまうので、ボクシングジムにある本格的なサンドバッグにした。重たそうな鉄骨の支柱と台座がかなりのスペースを占め、オフィス内でひときわ存在を主張している。

「足をひっかけたりして邪魔だからなんとかしてくれ、という社員もいるんですが、〈これは自由の象徴だ〉と」

南東北最大のスキーリゾートにサテライトオフィス

サテライトオフィスの裏手に広がる「アルツ磐梯」のゲレンデ
「みんなをその気にさせるのがオレの役割」と言い切る山寺さんは、これまでスタッフのモチベーションを上げる施策をさまざまに工夫してきた。

なかでも、フリーカフェインとともに好評なのが「フリービタミン」。毎週1回、朝に季節のフルーツが届く。スウェーデンの会社でオレンジを社員が自由に食べているのを見て「これはいい」と取り入れた。

「朝、食べてこない人も多くて。血糖値が低い状態でパフォーマンスの悪い仕事をしてもらいたくないので、月額4,000円くらいで八百屋さんに持って来てもらう。みんなのテンションが上がるんだったら安いものです」

もう1つ、スタッフのテンションを上げる大きな要素が、本社から車で40分のスキーリゾート「アルツ磐梯」にあるサテライトオフィスだ。

「集中的に仕事をしたいときには〈山ごもり〉といってここに来ます。チームワークでアイデアを練らなきゃならない場合も、ここで合宿したり。スキーやスノーボードができるし、温泉もあるし、食事もレベルが高い。気分転換の材料に事欠かず、クリエイティブワークにはぴったりの環境」と山寺さん。

株式会社星野リゾートが経営するアルツ磐梯は、南東北最大のスキー場を持つ。同リゾートのウェブサイト構築の仕事をしたとき、震災後に落ち込んだ客足回復のアイデアの相談を受けた。山寺さんは、会津大学と共同でスキー場をフィールドワークの実験場にしてはどうか、と提案。たとえば、スキーやスノーボードのスピードが眼前に表示されるヘッドマウントディスプレイを貸し出す。雪山でプロジェクションマッピング(空間や建物にCG映像を映し出す技術)をする……などなど。

「おもしろいから全部やりたい、という話になって。でもこういうのって、リーンスタートアップ的な手法がなじむというか、いったん試してみなければ成果はわからないものじゃないですか。ラピッドプロトタイピングをするのはそんなにお金のかかることじゃないんで、オレらがマンパワーを出す代わりに、空いている事務所スペースを提供してもらうことになりました」

こうしてスキーリゾートのサテライトオフィスが誕生した。ここに出社する日はみんなウキウキ、ワクワクするらしいが、さもありなん。リゾートホテルのバックステージにオフィスがある、というのもスペシャル感をくすぐる。

旺盛な知的好奇心から物事を組み合わせる

スキーリゾートのサテライトオフィスは、集中してアイデアを練り上げるクリエイティブワークにはもってこい。だが、アイデアというのは、腕組みして考えたあげくにひらめくようなものではない、と山寺さんは語る。

「Facebookなどで情報をシェアしていると、興味ある人たちが集まってきますよね。そこからヒントをもらったり。これとこれを組み合わせたらおもしろいんじゃないか、とかね。基本、人と話したり、海外へ行ったとき不便を感じたり、そんなことがネタになっています。あとは新しいガジェットをいじりながら、この技術要素を使えばこんなのができるかも、なんて考えるのは好きですね」

山寺さんは、自転車のホイールに装着したLEDにGPSで広告を流すビジネスモデルをシリコンバレーの新会社でスタートさせようとしている。これはそもそも、自転車に線量計を付けて町中を走れば「動くモニタリングポスト」になるという、原発被災地ならではの発想が元にあった。だが、それだけでは楽しくないから誰もお金を払わない。そこで出会ったのが、アメリカ西海岸の会社が開発した自転車のホイールに取り付けるLED。ただのデザイン照明ではもったいない。GPSで広告を取り、ナビやセンサーも付けたら……コラボの話がまとまった。
山寺さんは自転車を使ったスタートアップをアメリカで進めている
(提供: Eyes,JAPAN)

きわめてユニークなリクルートツールがEyes,JAPANにはある。クロスワードパズルが印刷してある紙ナプキン。ただのクロスワードではない。縦のカギと横のカギがプログラミングで使う正規表現(文字列の集合)になっている。これが解けると、ある英文とメールアドレスが現れる。この紙ナプキンを10万枚印刷して、国内の2、3の大学とドイツの大学の学食に寄付した。
実際に配布した紙ナプキン
「ハードルが3つあって。まずプログラムのわかる人でないと気づかない。それが第一のハードル。第二はけっこう難しいこと。第三は、解けたとしても会社の説明も何もないから普通はコンタクトしません。ドメイン名をウェブで調べればわかるんですけど。3つのハードルを超えるのは、よほど知的好奇心が旺盛な人です。今まで14人からメールが来ました。去年からはじめたので、採用にはまだ至っていませんが、これをきっかけにアルバイトをはじめた学生はいます」

一緒に働くスタッフの資質として、能力以上に山寺さんが重視するのは知的好奇心。そのことがよく現れているリクルートツールだ。

知的好奇心の高さとは要するに、物事をおもしろがれる幅の広さ。知的好奇心に乏しいとアイデアは生まれにくい。それがすべての基本だろう。Eyes,JAPANには、おもしろがれる心を刺激してやまないワークスタイルと環境がある。

Eyes,JAPAN http://nowhere.co.jp/

4月12日(土)、13日(日)の「さくらハッカソン2014」では、Eyes, JAPANの山寺純さんがモデレーターとして参加します。ぜひ、みなさんの「東北に人を呼ぶアイデア」を実際にカタチにしてください。詳細は下記のリンクから!


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