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ヘルスケアビジネスの新しい可能性~「コミュニティーで健康を支える」というアプローチ~イベントレポート(前編)

2014年04月16日



「あしたのコミュニティーラボ」2014年最初の主催イベントは、3月13日、春の嵐吹きすさぶなか、東京・西麻布のKREI SALONで行われました。テーマは「ヘルスケアビジネス」。登壇者はもちろん、豪雨をものともせず集まった熱意ある来場者とともに、コミュニティーの視点から考える新しいヘルスケアビジネスのあり方について、熱い議論が交わされました。前編では、モデレーターによるキーノートスピーチと、1人目の登壇者プレゼンテーションの模様を中心にレポートします。

今回のイベントには、コミュニティーヘルスを専門とするモデレーターと、いずれもヘルスケアビジネスの最先端で活躍する3人のパネリスト、計4名が登壇しました。

モデレーターは慶應義塾大学環境情報学部准教授の秋山美紀さん。健康・医療に関するコミュニケーションを専門とし、地域医療の分野などで提言を続けています。

川添高志さんは、さまざまな事情で1年以上健康診断を受けていない3300万人を対象にした「ワンコイン健診」や、24時間訪問看護を展開するケアプロ株式会社代表取締役社長。1982年生まれの若き起業家です。

竹林一さんは、ドコモ・ヘルスケア株式会社代表取締役社長。スマホを活用したデータの蓄積・可視化による健康管理支援で、1人ひとりに応じたスマートライフを実現するビジネスモデルを提供しています。

今林徹さんは、富士通株式会社イノベーションソリューション事業本部シニアディレクター。「どうぶつクラウド」のサービス開発を通じ、家族としての「どうぶつ」と飼い主が安心して暮らせる社会を目指します。
 

「コミュニティー」で支えるこれからの健康

イベントに参加して登壇者にどんなことを聞きたいか、隣の人と話し合うアイスブレイクに続いて、モデレーターの秋山さんが今回のキーワード「コミュニティーと健康」について最初に触れました。

まず「コミュニティー」と聞いて思い浮かべることは何でしょうか? 秋山さんが会場の参加者に尋ねます。寄せられたのは「価値を共有する場」「公民館での集会やお祭り」「同じ趣味をもつ人たちが瞬間を共有する音楽フェスのようなこと」……といった声でした。

秋山さんは著書『コミュニティヘルスのある社会へ』で、「コミュニティヘルス」という言葉に、提供者目線の「地域医療」を超え、1人ひとりが当事者となるコミュニティーによって健康を支える社会へ、という想いを込めました。「コミュニティー」には単に「地域」だけでなく、社会的な相互作用、共通の絆、特定の集団への帰属意識……といった意味が含まれています。


モデレーターを務めた、慶應義塾大学環境情報学部准教授 秋山美紀さん

では「健康」を感じるのは、どんなときでしょう? 会場からは「体より心が充実しているとき」「運動ができるとき」、登壇者からは「病気が治ったとき」「大声でおはようが言えたとき」「朝起きて顔がむくんでいないとき」といった声が上がりました。

健康は目的そのものではなく、自分らしく生きる資源。超高齢化時代を迎えて、ヘルスケアには3つのパラダイムシフトが起きています。

第一に、提供者と受益者の境目が曖昧になっていること。たとえば生活習慣病の予防は自助努力であり、介護は家族が担い手になります。

第二に、医療と介護の連携など、垣根を越えた職種間のコラボレーション。

第三に、ヘルスケア産業の裾野の広がり。いま最も期待されている国の成長戦略の1つが医療・健康産業です。厚生労働省だけでなく、経済産業省、国土交通省、農林水産省など省庁横断でヘルスケア産業への注力が始まっています。

以上のような前提をふまえ、3人の登壇者のプレゼンに移りました。

 

自分の健康維持が社会貢献につながる

東大病院に看護師として勤務していた川添高志さんは、健診の機会がなかったため糖尿病に気づかず、合併症で足を切断することになってしまった30代フリーターの患者さんの姿に衝撃を受けました。

医療費の約3割、10兆円が糖尿病など生活習慣病関連に使われ、超高齢化社会の進展と共に拡大の一途を続けています。このままでは健康保険制度の財源は破綻必至。生活習慣病の予防と早期発見には定期検診が欠かせません。しかし、厚労省のデータによれば、ホームレス、フリーター、主婦、自営業者など、定期検診を受けていない成人は3300万人を超えています。病状が重篤になってから「健診を受けていればよかった」と多くの人が後悔するのです。

ケアプロ株式会社代表取締役社長 川添高志さん

 
この現状を何とかできないか。川添さんが思い出したのは、米国研修で見聞した、買物途中に保険証がなくても利用できる「ミニッツ・クリニック」。しかし日本では医師がいないと看護師だけで採血や診断はできません。

そこで構想したのが「ワンコイン健診」です。ワンコイン健診は、機器を使った指先からのわずかな採血で数分後には結果がわかる簡易なしくみ。医療行為ではなく自己検査の場を提供することなら、日本でもできます。

1000万円の貯金をはたいて2008年にケアプロを起業。東京・中野に第1号店を開いて以来、当初は利用者がまったく来ない時期もあったものの、徐々にサービスが浸透し、5年間で利用者は21万人を突破しました。そのうち異常値があった人は3割。東日本大震災の被災地でも1,000人以上の健康支援を行いました。

ふだんから健康に気づかい生活習慣病はできる限り自分で予防。病院は深刻な病気にかかったり事故に遭ったりした人が安心してかかれる施設。目減りする一方の医療財源をそうやってキープし、みんなでシェアするオールジャパン体制で取り組まなければならないほど事態は切迫している、と川添さんは指摘します。自分の健康維持が医療費削減という社会貢献につながる。ケアプロはそんな使命感から、予防医療に革命を起こし、すべての人に健康の気づきを届ける事業を進めています。

ヘルスケアのパラダイムシフトと、医療財源という喫緊の課題。それぞれの立場から、新しい健康管理のしくみをつくる必要性が示唆されたイベント前半でした。後編のレポートでは、ICTとコミュニティーを組み合わせて革新的なヘルスケアビジネスを推進する、2人のパネリストによるプレゼンテーションを紹介します。

後編へ続く


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