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ソーシャル時代のコミュニケーションのために

2012年04月27日



ソーシャル時代のコミュニケーションのために | あしたのコミュニティーラボ
FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアが、消費し口コミを広げる「生活者」と企業のコミュニケーションを大きく変えつつある昨今。企業の経営体質も大きくシフトさせる必要がありそうです。マーケティングへのソーシャルメディア活用を専門とする株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役の斉藤徹氏に、お話を伺いました。

ソーシャルメディアで「絆」をつくる

── 昨今の社会情勢やソーシャルメディアの普及によって、人々の価値観はどのように変わっているでしょうか?

斉藤 穏やかな毎日と小さな幸せの積み重ねこそかけがえのないものだと、皆が気づきはじめています。大きなテロや災害などがたびたび起こり、自分や家族の身にいつ何が起こるか誰もわからない。加えて、2007年に端を発した世界的な金融危機は、お金を尺度にしたグローバル資本主義を大きく転換しました。

さらにもう一つ、生活者に大きな影を落としているのが環境問題です。今の若い世代にとって、地球温暖化や環境汚染は人ごとではありません。自分が生きている間に、社会や生活に重大な影響を与えるかもしれないのですから。

お金はもはや、価値観の基軸ではなくなりつつあります。人より飛び抜けてリッチになって贅沢な暮らしをすることは、以前のように重要ではないのです。

── 他者とつながりたい、という意識が増したように思います。

斉藤 2011年の「今年の漢字」に選ばれた「絆」は、2、3位の「災」「震」と比べ倍以上の票を獲得しています。互いのつながりを大切にしたいという、日本人の意識がよく表れているでしょう。

そこへ、ちょうどよい具合に浸透してきたのがソーシャルメディアです。特にFacebookは従来のSNSと違い、リアルの人間関係を強化します。私がすばらしいと思うのは、知り合いのアイコンが常に表示されていて、相手の近況が簡単にわかること。実際には何年も顔を合わせていなくても、昨日や今日に会ったような近さでコミュニケーションできるのです。時間が経っても心の距離感を維持できる仕組みは、絆を大切にする現代の日本人にマッチしています。

企業がコントロールできないコミュニケーション

── ソーシャルメディアが社会に浸透するなかで、企業と生活者のコミュニケーションはどのように変わっていますか?

今まで、消費者の行動パターンはAIDMA(注釈:AIDMA(Attention – Interest – Desire – Memory – Action) 広告に対する消費者の心理プロセスや購買行動を示すマーケティングモデルとして、1920年代にアメリカ人サミュエル・ローランド・ホールが提唱した概念。消費者が商品を知ってから購買に至るまでの動きを「注意⇒関心⇒欲求⇒記憶⇒行動」という段階に分けて可視化することにより、企業は段階に応じたコミュニケーション策が取れるとした。AISAS(注釈:AISAS(Attention – Interest – Search – Action – Share) AIDMAに代わるインターネット時代のマーケティングモデルとして、株式会社電通が提唱(2005年に商標登録)。インターネット利用者の購買行動のパターンとして、「検索」と「情報共有」が追加されているのが特徴。口コミ情報の影響力の拡大により、従来型のマス・マーケティング志向の広告戦略は薄れ、企業は消費者志向のマーケティングへの移行が求められるようになったとされる。のプロセスで表現されてきました。いずれも、商品やサービスの販売を目的とした、「企業→生活者」のコミュニケーションです。販売後の口コミも重要ですが、リアルの世界では限定的な広がりにすぎません。

ところがソーシャルメディアでは、生活者が商品を購入したりサービスを体験したあとも、SIPS(注釈:SIPS(Sympathize – Identify – Participate – Share & Spread) 「ソーシャルメディア時代の新しい生活者消費行動モデル概念」として、電通モダン・コミュニケーション・ラボが提唱。「共感⇒確認⇒参加⇒共有・拡散」という段階別に整理される。購買行動を企業活動への参加として、情報伝播の変化を拡散として捉えるのが特徴で、広告は共感を重視する方向へと変化することが予測されている。
(出典)「電通SIPS」http://www.dentsu.co.jp/sips/index.html
のプロセスで口コミが拡散します。企業にとっては、ソーシャルメディアで情報が流れる仕組みづくりと人間的な交流が重要です。

AIDMA(注釈:AIDMA(Attention – Interest – Desire – Memory – Action) 広告に対する消費者の心理プロセスや購買行動を示すマーケティングモデルとして、1920年代にアメリカ人サミュエル・ローランド・ホールが提唱した概念。消費者が商品を知ってから購買に至るまでの動きを「注意⇒関心⇒欲求⇒記憶⇒行動」という段階に分けて可視化することにより、企業は段階に応じたコミュニケーション策が取れるとした。AISAS(注釈:AISAS(Attention – Interest – Search – Action – Share) AIDMAに代わるインターネット時代のマーケティングモデルとして、株式会社電通が提唱(2005年に商標登録)。インターネット利用者の購買行動のパターンとして、「検索」と「情報共有」が追加されているのが特徴。口コミ情報の影響力の拡大により、従来型のマス・マーケティング志向の広告戦略は薄れ、企業は消費者志向のマーケティングへの移行が求められるようになったとされる。は企業主体のコミュニケーションですが、企業がSIPS(注釈:SIPS(Sympathize – Identify – Participate – Share & Spread) 「ソーシャルメディア時代の新しい生活者消費行動モデル概念」として、電通モダン・コミュニケーション・ラボが提唱。「共感⇒確認⇒参加⇒共有・拡散」という段階別に整理される。購買行動を企業活動への参加として、情報伝播の変化を拡散として捉えるのが特徴で、広告は共感を重視する方向へと変化することが予測されている。
(出典)「電通SIPS」http://www.dentsu.co.jp/sips/index.html
をコントロールするのは不可能です。つまり、企業にとっては、すばらしい商品とサービスを提供するというもっとも基本的なことが何より大切になります。

ソーシャルメディアで「絆」をつくる

── FacebookやTwitterの公式アカウントを持つ企業が増えているようです。

斉藤 たしかに、一部の企業はソーシャルメディアを経営に活用しはじめています。しかし、本質を突き詰めると経営そのものを変革しなければならず、その必要性に気づいている企業はまだまだ少数です。

しかし、元から共感経営を掲げている企業や、ものすごい顧客志向の企業は強い。たとえば。茨城のスーパー「カスミ」は2010年から3か年計画で「共感創造の経営」を掲げています。最近ソーシャルシフト(注釈:ソーシャルシフト(Social Shift) ソーシャルメディアを利用して、企業がマーケティングやリーダーシップ、組織構造など経営改革に取り組む動きを指す言葉。斉藤徹氏が提唱し、硬直化しがちな国内企業に風穴を開ける考え方として企業の注目を集めている。
(参考)斉藤徹『ソーシャルシフト』日本経済新聞出版社、2011
への取り組みも始めましたが、実際に行ってみると、店長が自筆でお客様の声に回答するなど、すごく生活者の声を大事にしているのがわかります。このように、本当に共感を大切にする経営を目指す企業は、すでにほとんどその理想に近づいており、ソーシャルメディアにより一層完成度を高めるでしょう。

ソーシャルメディアは、隠れた名品を世に出す反面、粗悪品を叩くなど、二極化を促すツールです。よい会社の経営革新を促進し、悪い会社をさらに停滞させます。

── 日本人がソーシャルメディアでできることとは何でしょうか?

斉藤 日本人の強みは、何といってもおもてなしの心。ソーシャルメディアとの相性は抜群だといえます。ビジネスに生かした好例が、Twitterを使ったアスクルさんのアクティブサポートです。「商品の到着が遅い」というユーザーのつぶやきを、アスクルのサポートがいち早く発見してTwitter上で対応。その人がファンになったのはもちろん、リツイートして口コミが拡散します。また、この方はわざわざFacebookでも「アスクルはすごい!」と投稿しました。従来のカスタマーサポートは、できるだけ高いレベルで均質なサービスを提供するのが命題でした。お客様の対応に差をつけないのが基本ですが、アクティブサポートの事例はそれを突き抜けています。とにかく、目に入った方を全力でサポートしようという、本来的なおもてなしの心が見えます。

── 一時的なクレーム対応より、もっとダイナミックな効果が期待できそうですね

斉藤 早期にお客様の不満の芽を摘み、反対にその人のライフタイムバリュー(注釈:ライフタイムバリュー(Life Time Value) 長期にわたる取引を志向することで得られる利益や価値を指すビジネス用語またはマーケティング戦略。個々の取引で利益の最大化を目指すのではなく、製品やサービスの満足度を高め、ファン化することで長期にわたりより大きな利益が得られるとする考え方。を高めることができたと思います。また、結果的に多くの人へ、サービスのすばらしさを伝えることができました。売上の面でも、高額な広告を出稿するより、よほど効果があったかもしれません。

アクティブサポートを担当する人たちは、生き生きと仕事にあたっています。クレームを受けるより、感謝される確率が高いからです。人は、誰かを幸せにすると自分も幸せを感じます。企業で働く社員自身が幸せになるということも、ソーシャルメディア時代の経営には大切なポイントではないでしょうか。

斉藤 徹 プロフィール

2005年にループス・コミュニケーションズを創業。ソーシャルメディアのビジネス活用に関するコンサルティング事業を幅広く展開する。年間公演回数は100回を超え、11年の「Webクリエイション・アウォード」ではWEB人賞を受賞した。『ソーシャルシフト』など著書多数。

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