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漢方医学の歴史に、ICTで新たな幕開けを
── 北里大学「漢方診療標準化プロジェクト第1回シンポジウム」 イベントレポート後編

2014年05月19日



漢方医学の歴史に、ICTで新たな幕開けを<br/>── 北里大学「漢方診療標準化プロジェクト第1回シンポジウム」 イベントレポート後編 | あしたのコミュニティーラボ
漢方医学の更なる普及には診療の標準化、エビデンス化が課題となります。これに向けた取り組みとしてどのような活動をしているのでしょうか。後編では2014年4月19日(土)に開催された「漢方診療標準化プロジェクト第1回シンポジウム」の様子をレポートします。

イベントレポート前編はこちら

漢方医学の標準化に向けた、COI-Tの取り組み

漢方医学が抱える暗黙知に対して、最先端のICTをもって解決を図ろうとするのが、北里大学東洋医学総合研究所が進めるCOI-T(文部科学省「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」のトライアル)という取り組みです。「漢方診療標準化プロジェクト第1回シンポジウム」は、その発表の場として開催されました。

冒頭、COI-Tのプロジェクトリーダーである森下仁丹株式会社研究開発本部本部長 杉本敬之さんによる開会のあいさつでは「少子高齢化を迎えた日本では国家成長戦略としても健康対策が必要であり、特に重要なのが〈未病〉対策である。このタイムリーでホットな分野に信念をもって取り組み、漢方医療全体の底上げに貢献していきたい」と力強く宣言しました。

森下仁丹株式会社研究開発本部本部長 杉本敬之さん(提供:株式会社富士通総研)

続いて、北里大学東洋医学総合研究所所長 花輪壽彦さんが登壇。「全国で12のCOI、14のCOI—T(トライアル)の研究開発拠点が採択されているなかでも、漢方医学をテーマとしているものは本プロジェクトのみ。産業育成促進や海外展開などにもオールジャパン体制で積極的に取り組み“漢方は普及すれども定着せず”と言われてきた過去を変えていきたい」と、熱い思いを述べました。

北里大学東洋医学総合研究所所長 花輪壽彦さん(提供:株式会社富士通総研)

どうやったら標準化ができるのか

「これまで以上に、漢方医学の診療・教育・研究を発展させていくためにはICTを活用した漢方診療のプロセスの可視化や形式知化が重要である」とは、東洋医学総合研究所副所長 小田口浩さんの言葉。「そのためにCOIでは、医師が自分の目や手の感覚で判断している所見をセンサーで客観化するとともに、医師が患者のどこを重点的に診て、頭のなかで何を考えて処方(漢方薬)に導いているのかという診断過程のロジックの抽出に取り組む」と続けました。

東洋医学総合研究所副所長 小田口浩さん(提供:株式会社富士通総研)

前者のセンサー開発は現在、脈診・腹診・舌診の3つについて取り組んでおり、ISO/TC249とも連携しながら国際標準化もふまえて検討しています。センサー開発に参画している東洋医学総合研究所医員 川鍋伊晃さんは「デジタルに人体を評価できるセンサーがあると、医師間でのばらつきを抑えることができ、教育や診療の品質を向上させることができる」と、センサーの重要性を提唱しました。

東洋医学総合研究所医員 川鍋伊晃さん(提供:株式会社富士通総研)

「診断過程のロジックの抽出」は患者の過去のカルテデータをもとに、多重ロジスティック回帰モデルなどの統計学的手法を用いて解析が推進されています。データの蓄積が進むと、漢方診断を行ううえでの知識プラットフォームとなり、より高い精度のロジックを提供することができます。ロジック開発に参画している東洋医学総合研究所医員、石毛達也さんは「漢方医学の客観的指標が少なく、医師個人の術的・経験的要素に左右されやすいという課題はICTを活用し、データに基づいて診断のプロセスを可視化していくことで解決を図ることができる」と話しました。

東洋医学総合研究所医員 石毛達也さん(提供:株式会社富士通総研)

ロジック開発は自治医科大学、千葉大学、東海大学、富山大学、福島県立医科大学などの日本漢方界を牽引する漢方診療施設との連携も推進されています。この5大学はいずれもCOIで取り組むテーマに対して深い関心を示しており、北里大学との相乗効果が期待されています。

標準化に対してICTが貢献できること

センサーとロジック。この2つを支えるのがICTです。本COIではセンサーとロジックを用いて、患者データを大規模に集積し、新たな科学的根拠に基づく漢方ドックの普及や漢方簡易自己健康管理システムの確立を目指しています。

富士通株式会社のミイ・シャオユウさんからは「たくさんの人々が正確な漢方医学的診断を受けられるような、センサー、ロジックを垂直統合した漢方医学プラットフォームの開発を推進したい。その実現に向けてみんなで努力していこう」という呼びかけがありました。富士通はビックデータ、クラウド、センシングなどの先進技術を有し、ヘルスケア領域では電子カルテのシェアで日本一を誇っています。本案件における貢献も期待されるところです。

富士通株式会社 ミイ・シャオユウさん(提供:株式会社富士通総研)

漢方医学が日本で普及して約1,500年とも言われます。その間、産業界ではさまざまなイノベーションが起き、人々の生活や価値観は大きな変化を遂げてきました。一方で、漢方医学の診療や教育の現場は、未だ口伝や口訣とも言われるアナログの暗黙知に満ちています。今回、北里大学と富士通株式会社が総力を挙げて取り組むプロジェクトが、漢方医学の歴史にどのような動きをもたらし、我々の生活をどのように変えてくれるのでしょうか。これからの展開に目が離せません。

北里大学と富士通のCOIメンバー(提供:株式会社富士通総研)

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