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各界の専門分野を持つ有識者の方々から、社会を変えるイノベーションのヒントを学びます。

目に見えないものをデザインする人=NOSINGER。大きな問いを見出し、社会に必要な関係性を設計したいと語る太刀川英輔(たちかわ・えいすけ)さんは、東日本大震災の直後から復興支援の活動を開始した。デザインはソーシャルイノベーションのために何ができるのか。デザインで社会課題を解決しようとするのではなく、デザインを社会課題に何とか紐づけられないか、と考えること。そこにはどんな仕事にも通じるヒントがありそうだ。全4回に分けてお届けする太刀川さんのインタビュー。第1部は、太刀川さんが学生時代に専攻していた建築デザインを通して感じた「認知の設計」の重要性を中心にお話を伺った。

領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい――NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(2)
領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい――NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(3)
領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい――NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(4)

認知の問題としてデザインを見ると境界はない

――今の仕事に至るバックグラウンドについて聞かせてください。太刀川さんはもともと建築を専攻していたのですね。

太刀川  建築家になるつもりでデザインを研究していたのですが、あるとき建築というハードウェアだけではできないことがたくさんあると気づきました。名建築といわれる物件を見てまわると、メディアで大きく取り上げられているのに残念な印象だったこともあれば、あまり知られていないけれどすごくいい使われ方をしていると思ったこともあります。何がその違いを生んでいるのか。だんだんそっちに興味が出てきて、建物そのものよりも、人が建物をどう認知するのかという「認知の設計」に関心が移っていったんですね。

――建物を設計するのではなく、「認知を設計」する?

太刀川  建築もデザインも、結局そういうことなのかもしれない、と。そう考えると、領域の境界がぼんやりしてくるわけです。人間の認知に境目はないので、どこまでが建築の領域で、どこからがプロダクトデザインなのか、グラフィックデザインなのか、わからなくなってくる。空間の設計とテーブルの設計とタイポグラフィの設計が僕のなかで同一線上につながったわけです。

僕にとってすごくラッキーだったのは、建築という学問は、人や土地との関係性を探るデザインリサーチと、建築や工法に関するエンジニアリングの両方を学ばなければいけなかったこと。世の優れた建築物は、デザインリサーチとエンジニアリングという2つの条件要素を必ず高いレベルで満たしています。大学院のとき、デザインとエンジニアリングを修行するために、いきなり独立して仕事をはじめました。そのほうが覚えるし、試してみたいし、大学院生だったら、コケても社会に復帰できるだろう、と考えて。

――具体的にどんなことを練習し、試してみたのですか。

太刀川  認知の問題としてデザインを見ると境界はないのですが、専門家ないしは職人として見ると、建築家とプロダクトデザイナーとグラフィックデザイナーの間には猛烈な断絶があって、それぞれコミュニティーができています。本当は創発が起こるであろう領域が分断されているわけですが、それだからこそ、同時にものすごくディープかつマニアックに、たとえばただひたすらタイポグラフィ(フォントなど文字の表現の仕方)だけを追究している人もいるわけです。大学院生の僕には、足りなかったそういうナレッジの部分を各領域のプロから学ぶ時間が必要でした。

学びながら何をしていたかというと、世界中のコンペに参戦していました。挑戦しては落ち、を繰り返して。たまに当たることもありましたけれど。ただ同時に確信としてあったのは、各領域の深いナレッジを1個1個学んだ先には、相互につながって、必ずオリジナルなものが出て来るはず、ということでした。

「認知の設計」の重要さに気付き、大学院生時代よりコンペに応募するなど活動をはじめた太刀川さん。そのなかで、現在のNOSIGNERとしての活動につながる仕事に出会う。第2部では、「デザインによって何を解決するべきか」「デザインとは何か」といった太刀川さんの考えるデザイン論を中心にお話を伺う。

領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい――NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(2)へ続く
領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい――NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(3)
領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい――NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(4)

関連リンク
NOSIGNER
OLIVE
OCICA
TOHOK(とーほく)
株式会社 和える

太刀川英輔(たちかわ・えいすけ)

NOSIGNER株式会社代表取締役

慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。同大学院在学中の2006年に「見えない物をデザインする人」という意味を持つデザインファームNOSIGNERを創業。ソーシャルデザインイノベーション(社会に良い変化をもたらすためのデザイン)を生み出すことを理念に活動中。従来のデザイン領域にとらわれず、複数の技術を相乗的に使い、ビジネスモデルの構築やブランディングを含めた総合的なデザインを手がける。

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