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各界の専門分野を持つ有識者の方々から、社会を変えるイノベーションのヒントを学びます。

大学院生時代よりコンペに応募するなどの活動をしてきたなかで、太刀川さんにとってNOSIGNERでの現在の活動につながる2つの仕事があった。第2部では「デザインによって何を解決するべきなのか」「そもそもデザインとは何なのか」という話を中心に太刀川さんのインタビューをお届けする。

領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい──NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(1)
領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい──NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(3)
領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい──NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(4)

より大きな問いにつくりかえる作業が大切

──ソーシャルイノベーションを志向するデザインファームNOSIGNERの今につながるきっかけになったような仕事はありますか。

太刀川 大学院生のときにはじまったプロジェクトが2つあって。1つは徳島の木工職人さんたちが存続の危機に瀕しているので何とかしてほしい、という話。もう1つは、東京大学の先端科学技術の研究があまりにも専門分化しすぎて一般人の理解を超えているので、サイエンスコミュニケーションをやってくれないか、という話。そうした大きな問いを投げかけられたことによって、デザインすることの意味を見出せました。

ともすれば、カッコいいものをつくることがゴールになりがちですが、そこはゴールにならない。なぜなら明確な課題があったからです。つまりは、専門分化された先端研究をわかりやすくするグラフィックの課題。産地を活性化しマーケットを創造するプロダクトの課題。「デザインによって何を解決すべきなのか」を最初から問われたのはラッキーでした。

──なるほど、課題解決のためのデザイン。そうすると太刀川さんにとって、そもそもデザインとは、どういう概念なのですか。

太刀川 「デザインとは何か」。それを定義できないのに、デザインがうまくなるはずがないですよね。それで大学院の修士論文は、まさにそれをテーマにしました。そのときは「デザインは言語だ」と定義しました。たとえばこのICレコーダーだって、ポンと渡されたときに、説明書を読まずにすぐに使えなければ、そのデザインの意図が伝わっていないことになる。そういう事態は往々にして、いろんなデザインで起こっています。どのように認知され、理解され、受け止められるか。そこにしかデザインの価値はない、と考えるとわかりやすい。

──デザインは認知の設計のための手段だから、言語だというわけですね。

太刀川 そういうことです。だから修士論文では言語学としてデザインを分析しました。すると、優れたアイデアにはいくつかのルールがあることがわかった。まさにデザインの文法ですね。第5文型はこうである、とか。その論文『デザインの言語的認知』は、慶應義塾大学の図書館に収めてから2週間でなくなりました。デザインのアンチョコとして人気だったのかも(笑)。

──太刀川さんの考えるデザインの概念を最も良く反映できたプロジェクトには、どんなものがありますか。

太刀川 空間とプロダクトとグラフィックがインテグレーションされ、なおかつもう1つ欠かせない要素として「問い」をより良くつくりかえる作業があります。依頼されたことをやっているのにうまくいかない。そういう場合は、いつのまにか「問い」を矮小化していることが多い。より大きな「問いB」に答えることによって、もとの「問いA」がそこに包含されていなければなりません。

その意味でも、最近の例では、ブラウザのFirefoxを提供するMozillaのオフィスデザインの仕事は良くできました。一部の家具を含めてオフィス空間をデザインしたのですが、その図面をオープンソースにし、誰でもダウンロードできるようにしています。世界中の人々にレファレンスされ、オフィスの施行会社なども参考にし、いつのまにか増殖して、Mozillaのグローバルキャンペーンにまで広がっています。オフィス空間のデザインだから建築、プロダクト、グラフィックのどれが欠けてもダメで、同時に、引っ越しをお洒落にしたいというクライアントの問いを包含した、世界初のオープンソースオフィスにすることが僕のミッションでした。

Mozillaの事例を紹介するNOSIGNERのwebサイトでは、
実際に使われている家具の図面をダウンロードすることができます

投げかけられた問いをより良くつくり変えつつ、もとの問いも包含されているソリューションをつくり上げる。仕事をしながら自身のデザイン論を進化させてきた太刀川さん。ところが、2011年3月11日に起きた東日本大震災によって、彼の前に大きな壁が立ちはだかる。
第3部では、震災発生後40時間で立ち上げた「OLIVE」プロジェクトの話から、社会課題に対してのデザインの捉え方についてお話を伺う。

領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい──NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(3)へ続く
領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい──NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(1)
領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい──NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(4)

関連リンク
NOSIGNER
OLIVE
OCICA
TOHOK(とーほく)
株式会社 和える

太刀川英輔(たちかわ・えいすけ)

NOSIGNER株式会社代表取締役


慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。同大学院在学中の2006年に「見えない物をデザインする人」という意味を持つデザインファームNOSIGNERを創業。ソーシャルデザインイノベーション(社会に良い変化をもたらすためのデザイン)を生み出すことを理念に活動中。従来のデザイン領域にとらわれず、複数の技術を相乗的に使い、ビジネスモデルの構築やブランディングを含めた総合的なデザインを手がける。


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