Opinions
各界の専門分野を持つ有識者の方々から、社会を変えるイノベーションのヒントを学びます。

太刀川さんは、与えられた問いをより良くつくりかえる作業が大事だと語る。
しかし東日本大震災を前に、そのあまりに複合的すぎる問いに呆然としてしまった──第3部では、そのような状況のなか、震災直後に立ち上げた「OLIVE」の話や東北復興支援での自身の関わりなど、社会課題に対してのデザインの捉え方について伺った。

領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい──NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(1)
領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい──NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(2)
領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい──NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(4)

自発的な集合知からスタートした復興支援

──東日本大震災発生の直後に、災害が起きたときすぐ役立つ知恵を集めたWikiサイト「OLIVE」(オリーブ)を立ち上げましたね。

太刀川 今までの話につなげると、日々の仕事で、より大きく望ましい問いを常に探していたわけですが、東日本大震災が起き、解決のめどが立たないほど巨大な問いが目の前に立ちふさがりました。あまりにも複合的すぎて、どうしようもない。無力感に打ちひしがれた人は多かったはずで、僕もそうでした。

でも、何もできないとは思いたくないので、とりあえずドアを開けよう、風呂に水をためよう、なんてことをすぐにTwitterでつぶやきはじめました。すると、そういうことをやっている人が多いのに気づいたんです。みんな同じ気持ちだったのでしょう。だけどタイムラインが速すぎて届かない。これは辞書にしなければ、と考えてGoogleのサーバーにWikiサイトを上げ、アカウントを公開してみんなに書き込んでもらおう、と。それができたのは震災40時間後です。

Wikiサイト「OLIVE」に集まった情報はまとめられ、単行本にもなった

──協力してくれる人たちはたくさんいましたか。

太刀川 はい。人間って捨てたもんじゃないなと思いました。みんな助けたいんです東北を。ライフラインが断たれ、物資がないなかで、たとえば1円玉とセロテープとA4の紙で単三電池から単一電池をつくるなど、身のまわりのものから簡単に必要なものをつくるアイデアがたくさん集まりました。あっという間に想像以上のデータベースができあがった。同時に、被災地へ届けるにはフリーペーパーにしなければ、といった課題を抽出して解決する人たちも現れました。

余談ですが、「生きろ日本」との願いからO(日の丸)+LIVE(生きる)でOLIVEと名づけたところ、香港の友人から「旧約聖書のオリーブだよね? ネーミングがすごくいい。応援するよ」とメールが来ました。何のこと? と調べたら、ノアの方舟は、大洪水にあった際にオリーブの葉をくわえたハトが飛んで来たから陸地があることを知り助かった。つまり旧約聖書では大洪水からの復興の兆しだったわけです、オリーブは。知らなかった。

東北の暮らしの素敵さを届け、縁を結ぶために

──偶然の一致とはいえ、それはすごいですね……。
ところで、それ以来、東北の復興支援にはどのように関わっているのですか。

太刀川 OLIVEがその役割を果たしたのは震災後2〜3カ月までです。その後、被災地のコミュニティーづくりを支援する一般社団法人つむぎやの友廣裕一さんに出会い、石巻市牡鹿半島のお母さんたちの手づくりアクセサリーのブランド「OCICA(おしか)」のプロジェクトに協力することになりました。牡鹿半島のお母さんたちのために頑張りたい、という友廣さんの気持ちがビシビシ伝わってきたし、僕もOLIVEが一段落し、東北のために何かやりたいとウズウズしていましたから。

──鹿角と漁網でつくられたネックレスやピアスなどですね。

太刀川 今や日本全国だけではなく、海外でも買えるようになっています。売れる商品にして、お母さんたちの収入が増え、その結果コミュニティーが元気になるしくみをつくりたかった。小さなプロジェクトですが、東北には同じような試みがいくつもあります。お互いにヒントを出し合える状況になればいいなと思って、1個あたりお母さんたちにいくら入るか、つむぎやとNOSIGNERにはいくら入るか、すべてオープンにしています。

──ビジネスモデルとして確立していると。

太刀川 そうでないと続けられませんから。OCICAから発展して、つむぎやのチームと最近立ち上げたのがギフトショップのサイト「TOHOK(とーほく)」です。福島、宮城、岩手からつくり手の暮らしと想いがこめられた商品を集積し、ストーリー付きで販売しています。悲しい記憶を乗り越えて互いに縁を結ぶことができるように、東北の暮らしの素敵さを届けたい、というのが主眼です。

復興支援活動をビジネスとして成立するようにデザインする。太刀川さんは一貫して、デザインを通してできることは何かという視点を持ち、活動を続けている。次回、本インタビュー最後となる第4部では、日本の伝統産業に関わる仕事を通して太刀川さんが感じた問題意識、何をどう解決したいのかという欲求や無数にある社会課題に対して、デザインがどのような形で機能しうるかについて、お話を伺う。

領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい──NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(4)へ続く
領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい──NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(1)
領域を超えデザインの射程距離を伸ばしたい──NOSIGNER 太刀川英輔さんインタビュー(2)

関連リンク
NOSIGNER
OLIVE
OCICA
TOHOK(とーほく)
株式会社 和える

太刀川英輔(たちかわ・えいすけ)

NOSIGNER株式会社代表取締役


慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。同大学院在学中の2006年に「見えない物をデザインする人」という意味を持つデザインファームNOSIGNERを創業。ソーシャルデザインイノベーション(社会に良い変化をもたらすためのデザイン)を生み出すことを理念に活動中。従来のデザイン領域にとらわれず、複数の技術を相乗的に使い、ビジネスモデルの構築やブランディングを含めた総合的なデザインを手がける。


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