Cases
社会課題を解決する先進的なアプローチをご紹介します。

提供:NPO法人 東北開墾

議員の職を辞して、牡蠣漁師に弟子入りをした高橋さん。現場に飛び込んだからこそ、生産者と消費者の間にある課題が見えてきた。『東北食べる通信』のアイデアの源になった経験についてお話を伺う。

生活者が食のつくり手に「恋」する関係へ ――『東北食べる通信』が目指す日本版CSA(1)

食べてよし、見てよし、会ってよし。消費者と生産農家の顔の見える関係――『東北食べる通信』が目指す日本版CSA (3)

口を動かすより現場で実践したい、とすべてをリセット

高橋さんは岩手県会議員を2期務め、2011年9月、震災後の岩手県知事選に立候補した。16万票を獲得したが次点で落選。高橋さんには、今の社会に訴えかけたい明確なビジョンがあった。

豊かさを測るものさしが単一なのはおかしい。岩手県は、貨幣経済のものさしで測ると、たとえば47都道府県の平均県民所得ランキングでは低位。だが、自給経済と贈与経済(お裾分け)のものさしで測れば、きっとランキングは高い。

3つの経済のバランスをとると、東京都よりむしろ豊かではないか。貨幣に換算できない価値を切り捨ててきたところに多くの問題の根源がある。失ってきた大切な価値がまだかろうじて残っているのが第1次産業の世界。ならば、その価値を「見える化」しようと高橋さんは考えた。

だが、しだいに「口を動かすだけで現場がない」政治の世界が虚しく思えてきた、と高橋さんは振り返る。

「知事選に負けた後、4年後にもう1回挑戦しようと、数か月は政治活動をしていたのですが、被災地では若い人たちがリスクを負って日々刻々と新しいものを生み出そうと努力しているのに、のぼりを立て演説して名刺を配ってる場合じゃないと痛感しました。それで後援会を解散し、政治家を辞め、すべてをゼロにリセット。とにかくまず現場を経験しなくてはと、石巻の牡蠣漁師さんのところでお手伝いをはじめたんです」

つくる人と食べる人をつなぐ、キャッチーでハードルの低い入口


提供:NPO法人 東北開墾

手もかじかむ冬場、寒さに耐えて地味な作業を繰り返し、シケの海に出れば命がけ。そうやって手間ひまかけてつくった牡蠣が、1個たったの30円で出荷される。もちろん、生産現場も変わらなければいけないが、結局のところ消費者の意識が変わらなければ生産者は報われない。高橋さんはそれを学んだ。

「問題の根源は食べる人とつくる人が離れすぎて、完全に分断されていること。地産地消が生きていた昔は、つくる人の苦労を食べる人もわかっていました。消費者もまた生産者で、両者は適度に交じり合っていたからです。“こないだの牡蠣、うまかったよ”と喜んでくれる人が身近にいた。でも今のつくる人は孤独です。食べる人の喜ぶ顔が見えない。心が折れそうになるのもわかります」

流通システムの垣根を越え生産者と消費者を直結するしかない。欧米で広がるCSAの仕組みを東北ではじめるにあたってのキャッチーでハードルの低い入口。それが『東北食べる通信』のアイデアだった。食べる人は月額1,980円で、つくる人の生きざまを知りながら、付録としてその食材を味わい、応援する。


提供:NPO法人 東北開墾

「何より生産者が喜んでくれるのが嬉しい」と高橋さん。「まだビジネスモデルとして採算が取れるラインまで到達していませんが、大量消費文化に一石を投じる試みなので、生産者の顔が見える食べものを欲している人たちへウェブサイトやSNSで訴えかけ、地道に1人ずつ読者を増やしていきたいです」

つくる人と食べる人をつなぎ、お互いに顔の見える存在にする。高橋さんの取り組みは徐々にこれまでの1次産業を取り巻くコミュニティーを変えていく。次回は、『東北食べる通信』のプロジェクトに参加する生産者の1人、白石長利さんにお話を伺う。

食べてよし、見てよし、会ってよし。消費者と生産農家の顔の見える関係――『東北食べる通信』が目指す日本版CSA (3)へ続く

生活者が食のつくり手に「恋」する関係へ ――『東北食べる通信』が目指す日本版CSA(1)

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