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各界の専門分野を持つ有識者の方々から、社会を変えるイノベーションのヒントを学びます。

イノベーションを創出するためには「場づくり」も大切だが、それと同じくらい「イノベーター」の存在も不可欠だ。「人は関心を持たないと生きていけない」と語る西村さん。ではどのようにして、イノベーターを企業や組織の中で育てていけばよいのか。西村さんの意見を伺った。

未来が生まれる場所をつくる ――ミラツク西村勇也さんインタビュー前編はこちら

他人のアイデアを受け容れられないと、チームは生まれない

柴崎 トピックスを絞ってアイデアを出すワークショップに絡めていうと、あしたラボでは先日、東北に内外から人を呼び込むアイデアとサービスをチームで競う「さくらハッカソン2014」を開催しました。富士通社員も含め40人が参加して、エンジニアもいればデザイナーもいればマーケッターもいた。


「さくらハッカソン2014」の様子

参加者の声を聞くと、もっとこの方面のスキルを上げなければ外で戦えないことがわかった、とか、いろんな気づきを得られたようです。打ちのめされて帰ってくるほうが、社員をハッカソンに参加させた企業としてはありがたい、という話も聞きました。他社の人に刺激されて、どうしたら次は勝てるか、一生懸命に考えるようになる。なるほど、と思いました。

西村 イノベーションのアイデアを生み出す場としてハッカソンはおもしろいですよね。僕らの場合は、場づくりの次の段階として、偶発的にチームが生まれる仕掛けも考えています。偶発的に生まれたチームならマネジメントコストがかかりません。

偶発性を高める条件は3つあります。第1にセクター、テーマ、地域の多様性。第2に各人が行動を伴う実践者であること。化学物質の反応と同じで、動き合っている者同士はつながる可能性が高い。第3に相手の協力を受け取れる人であるかどうか。これが実は重要です。協力したい人がたくさんいても、その協力を受け取れる人がいないと、コラボレーションは起きません。

他人のアイデアを受け容れられるかどうか。行動を伴う実践者には、かたくなに自分のやり方に固執する人もいます。しかし素直さがないと偶発的な出会いは活きません。

人は誰でもイノベーティブになれる

柴崎 企業内で、イノベーターをどう育成していくか。この課題については多くの企業が模索しており、あしたラボでも追究していきたいテーマだったりします。イノベーションを起こす特異点というか、やはりコアになる人材がいて、その人たちをアシストする場づくりやファシリテーションの方法について、さまざまな可能性を試す。そうした波及効果を重ねて、コアになり得る人材が同心円状に広がっていくようなイメージでしょうか。

西村 感覚としてはわかるのですが、僕は少し違う見方をしています。人はもともと多面的です。ある面ではイノベーティブでなくても、ある面ではイノベーティブな可能性がある。その人の多面性のなかでイノベーティブな部分がヒットしやすいように、さまざまな層をつくっておくのが重要ではないでしょうか。ヘルスケアの領域ならイノベーティブになれるかもしれないし、地域のことだったらイノベーティブになれるかもしれない。そういうトピックスをどれだけ組織のなかで数多く用意できるか、ということだと思います。

柴崎 なるほど。そういう意味でも玉手箱的にいろいろなトピックスを、あしたラボで扱いたいですね。可能性を発見できる場として。

西村 そうですね。人は必ず何かに関心を持っていないと生きていけません。それが何か見つかれば、その人はイノベーティブになれる。

柴崎 いろんなレイヤーで眠っているイノベーティブな可能性を引き出すしくみが必要ということですね。

西村 量子力学でいう存在可能性みたいな話で、ある閾値になったら粒子として現れるわけです。でも、そこに至るまでは「あるけれど見えない」状態。そういう前提で見ると育てられます。

あとはやはり存在可能性の確率を上げる「場」が必要です。本人の努力だけで可能性を上げられるわけではありません。しかもその場は、凝縮した密度の濃い場でなければいけない。ボルテージの高い場を用意し、そこに少しずつ新しい異質な人を入れていくのが大切です。

シルク・ドゥ・ソレイユ型のイノベーション装置

西村 「場」に関連した話でいえば、以前、「シルク・ドゥ・ソレイユ」のショーを見てすごく感動しました。人間ってこんなことができるんだ、と思った。あのエンタテイメント集団がとても興味深いのは、1人ひとりが切磋琢磨し、あり得ないようなトレーニングを積んでいて、公演が決まればチームを結成し、すばらしいパフォーマンスを披露して、公演が終わるとまた個人に戻る。個人の切磋琢磨の部分と、コラボレーションによって起こるクリエイティビティの部分が、とてもうまく出ています。見せる場があるからこそみんなが切磋琢磨できるし、また個人の切磋琢磨がなければ、あの場は成立しません。その関係性がとても美しかった。

柴崎 あしたラボも「イノベーションを起こすシルク・ドゥ・ソレイユ」のような存在になれたらおもしろいですね。テクノロジーとアートとエンタテイメントの掛け算も重要。われわれの強みといえばICTです。外部の方々と掛け算しながら、社会的な広がりのある素敵なイノベーションを起こす。そんなデザインのできる舞台づくりを続けたいと考えています。

西村 テクノロジーがなければ、価値の高いイノベーションは実現しません。大学の講義で僕がよく話すソーシャルイノベーションの事例に、「切手」があります。切手は1837年にイギリスのある教師が考えました。それが3年後に法案として成立した。それまで後払いの郵便制度だったのが切手によって前払いになりコストダウンされたわけですが、そのしくみを考えたことはもちろん重要です。しかしそれ以上にイノベーティブだったのは、当時最先端の技術だった印刷という手法を使えば大量に複製品ができる、というアイデア。いつの時代も最新テクノロジーを知っている人たちと、アイデアのある人たちが交わってこそ、ソーシャルイノベーションが起こるのです。

柴崎 とても勇気づけられるお話ですね。あしたラボはこれから、多様な人たちが集まって社会課題を解決したり、よりよい価値を生み出していく、そんなハブのような場にしていきたいと思っています。ぜひ西村さんにも注目いただき、ご参加いただけるとうれしいです。今日は、ありがとうございました。

未来が生まれる場所をつくる ――ミラツク西村勇也さんインタビュー前編はこちら

関連リンク
NPO法人ミラツク
さくらハッカソン2014


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