Opinions
各界の専門分野を持つ有識者の方々から、社会を変えるイノベーションのヒントを学びます。

考え方だけでなくイノベーションの種を育て、大きくしていく過程もイノベーションの芽を潰さないために必要不可欠な要素。独自の視点でイノベーションの種を育ててきたリバネス 丸さんは、生まれてきたイノベーションの種をどのように育ててきたのだろうか。実践から見いだしたノウハウを聞いた。

「イノベーションを起こす」はもう古い ──リバネス丸幸弘さんインタビュー前編

イノベーションを起こす「QPMI」サイクルとは

──イノベーションが生まれる過程について、今までの活動の中で見いだした方法論のようなものはありますか。

 P(計画)D(実行)C(評価)A(改善)サイクルは、生産管理や品質管理の向上には効果がありますが、イノベーションにはもっと自由で柔軟な仕組みが必要です。僕が考えるに、それは「QPMI」サイクル。Question(さまざまな事象から課題を見いだす)Passion(課題解決に対して情熱を抱く)Mission(課題を使命と捉え、チームをつくり取り組む)Innovation(チームの推進力により新たな価値の創出を目指す)のサイクルをまわすのです。あくまでも起点は個人のクエスチョンとパッション。周囲を巻き込めるミッションにそれを落とし込めたら、試行錯誤の先にイノベーションが待っています。

日本の戦後復興期には、あちこちでクエスチョンとパッションが沸き上がり、ミッションを同志的チームで実現しようとする自由な風土がありました。今のようにレギュレーションやコンプライアンスでがんじがらめだと、個人のクエスチョンとパッションを活かせない。社員1人ひとりとじっくり話し合い、クエスチョンとパッションを拾い上げれば、QPMIは勝手に回り始めます。そのとき「事業計画は?」などと聞いたらダメ。社員のグッドアイデアがどうしたらビジネスになるか一緒に考えるのが、マネージャーや役員の仕事です。

──なるほど。上司の役割はマネタイズで、そこまで部下に押しつけるなと。

 そもそも、誰も考えつかなかったアイデアの市場規模など、わかるわけがない。数字なんか出しても、しょせん机上の空論です。だから僕が社員のアイデアを採用して新規事業を立ち上げる基準は3つだけ。「新しいか」「面白いか」「自分でやり続けられるか」。誰かがすでにやっていることなら、それを手伝えばいいわけですから、新しいのは当然の条件です。さらに、それが広まったらワクワクするような面白い世界になるのか。そして、最後まで諦めないでやり続ける意思が本人にあるのかどうか。パッションの強さを見るわけです。

栽培しているところをショールームのように見せて認知度を高め、外食産業とコラボした「店産店消」モデルの「植物工場ラボ」も、飼料開発からブランド豚の販売まで6次産業化し、養豚ノウハウ自体をパッケージで売る出口戦略を構築した「福幸豚プロジェクト」も、そうやってスタートし、QPMIサイクルを回すことで実現した新規事業にほかなりません。

熱量がなければ化学反応は起こらない


──パッションは誰の中にもあるものでしょうか。あるかないかを見分けるのではなく、引き出すのが重要ということですか。

 パッションのあるなしというよりも、パッションを中心に生きたいかどうか、だと思いますね。そうはいっても仕事より生活第1、という人はそれでいいんですよ。それぞれの生き方だから。でもそういう人にはイノベーションは起こせない。「あのとき、思い切ってやっていれば……」と後悔したくない人たちがリバネスで働いてます。採用試験の最初の面接は、僕がやるんですよ。いきなり30分くらい、バーッと「世界を変えたい野望」をひたすら話します。

──反応がきれいに分かれてしまうそうですね。

 たいてい後で「お祈りメール」が来ます。「世界を変えたいというパッションのこもったお話しありがとうございました。御社のますますのご成長をお祈りしております」。そうか、就職活動での不採用通知「ますますのご活躍をお祈りしております」ってこれか、と。なんべんも心が折れました。ショックですよ。大企業は「お祈りメール」やめたほうがいいですね(笑)

──でも、食いついてくる人もいるわけですね。

 そう、10人中1人か2人は「やりたいことがすぐできる会社が初めて見つかった!」と目がキラキラしはじめます。そこでほぼクリアです。そしたら社員のメンターを付けて、やりたいことのプレゼンをさせます。社員全員の合格がなければ再プレゼン。何度も落ちる人は多いです。諦めないのが採用の条件の1つ。プレゼンではボコボコにされます。なにせウチの会議はいつも喧嘩みたいですから。

知識製造業に「予定調和、シャンシャンで終わる会議」はありえません。熱量がなければ化学反応は起こらない。それに耐えられるかどうかが最終チェックです。議論のできない人間はいりません。よく僕は、社員と議論して負けたなと思ったら「うん、そっちで行こう」とパッと変えます。上司も部下も関係ない。いつでも熱量の高いほう、パッションの強いほうが勝つんです。

「イノベーションを起こす」はもう古い ──リバネス丸幸弘さんインタビュー前編

関連リンク
株式会社リバネス
Tech Planter

丸 幸弘

株式会社リバネス 代表取締役CEO・農学博士

大学院生や企業の研究者が子どもたちに自分の研究を紹介し、最先端のサイエンスの面白さを伝える「出前授業」のパイオニアであり、研究と教育の「知識プラットフォーム」を構築しているベンチャー企業、株式会社リバネスを設立。「科学発展と地球貢献を実現する」というビジョンのもと、さまざまな事業を手がけている。

いいね!を押して
Facebookページをフォロー

あしたラボの最新情報をお届けします。

Twitterであしたラボ(@ashita_lab)をフォローしよう!

皆さんの感想をお聞かせください!





  • facebook
  •  twitter
  • USTREAM
  • RSS

Copyright 2017 あしたのコミュニティーラボ