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社会課題を解決する先進的なアプローチをご紹介します。

2011年からはじめた下町ボブスレープロジェクトは、2014年ソチ冬季五輪の夢こそ叶わなかったものの、2018年平昌冬季五輪に向け大きなうねりをつくりながら、ついに目標が手に届くところまで成長した。しかし、オールジャパン体制をつくるための基盤としてはこれからだとGM兼広報の細貝さんは話す。これからどのような展開を予期しているのか、下町ボブスレープロジェクトのこれからを聞いた。

初の国産ボブスレーに詰まった、日本の意地 ──下町ボブスレーのこれから(1)
消えないプロジェクトのつくり方 ──下町ボブスレーのこれから(2)

自分のつくった部品が使われている誇りと喜び

2012年12月12日、13日に長野市のトラックコース、ボブスレー・リュージュパーク(スパイラル)で下町ボブスレー1号機のテスト走行がマスコミ公開で実施された。この時、女子2人乗りの吉村美鈴選手・浅津このみ選手のベストタイムは56秒25。2011年の全日本選手権優勝タイム(56秒26)を上回り、両選手にとっても自己記録を更新した。

テスト走行の様子(提供:下町ボブスレーネットワークプロジェクト)

12月23日、ボブスレー全日本選手権女子2人乗りの部。下町ボブスレーに乗った吉村・浅津組が55秒23のタイムで優勝し、全日本3連覇を成し遂げた。下町ボブスレーはニュースや報道番組で頻繁に取り上げられるようになる。マスコミの注目を浴び、晴れ舞台に立つ気分なのは、あまり陽の目を見ることのなかった町工場の社員たちも同じだ。

ふだん、自分のつくった部品がどこに使われ、どう役立っているのかわからないし、人に知られていない。だが下町ボブスレーは違う。自分たちの手がけたものだ、と胸を張って自慢できる。

「すばらしいプロジェクトに関わっているんだ、という意識の高揚が生まれ、ひいては社内の活性化にもつながっています」と黒坂さん。町工場の共創によるものづくりは、社員のモチベーションアップにも貢献している。

下町ボブスレー1号機はオリンピックで勝つため、競技環境や技術で世界とのレベル差が小さい女子選手用に特化して開発した。予算の都合でソチ冬期五輪のボブスレー出場枠が1つになり、連続出場している男子チームのみの参加となったので、急きょ半年間で2号機、3号機をつくり、レギュレーションチェックもクリアした。だが選手側の調整と準備が間に合わず、下町ボブスレーのソチ冬期五輪デビューは果たせなかった。

悔しかったが気を取り直し、今は2018年の韓国・平昌(ピョンチャン)冬期五輪に照準を合わせ、新たなステップを踏み出したところだ。

“これからのものづくり”を示唆するストーリー

ソリの性能をいくら上げても、当然ながら世界と互角に戦える選手がいなければオリンピックの上位入賞はできない。そこで、世界との差が小さい女子選手の発掘・育成にも乗り出すことにした。その活動母体となる「東京都ボブスレー・スケルトン連盟」を発足させ、日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟の公認も受けた。選手発掘トライアウトを何度か開催し、大学や企業と連携し筋力トレーニングやアスリート教育のプログラムを導入する。

ソリ開発では、女子2人乗りで上位入賞を目指す4号機を、2016年秋の競技シーズン前に完成させる予定だ。1~3号機を改良して最速を目指す。サスペンションのセッティングやフレーム構造、ランナーの組み合わせなどの性能を検証するため、国内外のコースで滑走を繰り返し、数値データをとる。

走行データは車載カメラとデータロガー(衛星から位置情報、速度、加速度などを測定するツール)を連動させ測定しているが、ICTで選手の育成をもっと促進できないか、と細貝さんは企業や大学の技術協力に期待をかける。

「たとえばヘルメットにノイズキャンセラー付きの通信機能があり、監督と選手が相乗りしてリアルタイムで指示を出せるようなツールがあればいいな、と思います。日本では12月~1月の長野でしか滑走できません。短期間で密度の濃いトレーニングをするには技術力でサポートするしかないんです」

下町ボブスレーの協力企業・団体は109に及び、メインスポンサーのひかりTV、サブスポンサーの全日本空輸株式会社をはじめ、18社のサポーター、6社のサブサポーター、1社の素材スポンサーに支えられている。

下町ボブスレーの横断幕には、応援する人の想いが詰まっている

平昌冬期五輪に向けて、年々メディアへの露出も多くなるだろう。町工場がネットワークを組んだ共創プロジェクトは、大田区という一地域を超えて、オールジャパン体制での共創気運を盛り上げている。細貝さんが言うように「志で動いている」ところが多くの人の心の琴線に触れるに違いない。

2014年6月に行われた新体制発表会の様子

超高精度の技術力を誇る小さな企業連合と、スポンサーやサポーターとしての大企業が手を携えて世界を目指す。地域の町工場を営むたった1人の願いが、いつの間にか巨大な渦になっていったこのプロジェクト。「地域にも日本にも力になる」を考え方の基盤として、さまざまなステークホルダーを巻き込みながら進むその姿は、これからの日本のものづくりに関して、示唆に富む構図とストーリーを描き出している。

初の国産ボブスレーに詰まった、日本の意地 ──下町ボブスレーのこれから(1)
消えないプロジェクトのつくり方 ──下町ボブスレーのこれから(2)


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