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漢方医学から世界標準をつくる ISO/TC249における北里大学・富士通の挑戦(後編)

2014年09月24日



漢方医学から世界標準をつくる ISO/TC249における北里大学・富士通の挑戦(後編) | あしたのコミュニティーラボ
世界で広がる伝統医療の普及と世界標準化の動き。6世紀中国の漢の時代に日本に伝来し、独自の理論体系を確立してきた「漢方医学」を支える先端技術開発は、世界12カ国の参加者にどのように受け入れられるのでしょうか? この春日本で行われた国際会議ISO/TC249を通じて考えていきます。

漢方医学から世界標準をつくる ISO/TC249における北里大学・富士通の挑戦(前編)

京都会議のはじまり

ISO/TC249(国際標準化機構中医薬標準化技術委員会)第6回全体会議は、2014年5月末、三十三間堂に隣接するハイアットリージェンシー京都で4日間にわたって開催されました。日中韓をはじめ、欧州諸国や南アフリカなどの世界12カ国から計209名が参加しました。


会場はハイアットリージェンシー京都(提供:富士通株式会社)

初日の全体会議の冒頭では、日本東洋医学会の石川友章会長は「日本には、鍼や生薬などの漢方の長い歴史がある。その地で会議が開催されたことは非常に光栄であり、活発な議論を期待したい」とあいさつ。ホスト国代表として、初の日本開催への期待を寄せました。

ISOは、コンセンサスを基礎とした国際標準の開発を行っており、参加者の総意による全会一致の採択が望ましいとされています。しかし、WTO(世界貿易機関)/TBT(貿易の技術的障害に関する協定)が準ずる公的な基準であり、ISOへの自国提案の採用の有無は、製品の製造・輸出が有利に進むだけでなく(ISOに則った新たな開発や工程の変更が必要ない)、世界的に自国の標準を採用されたという権威も左右することから、会の総意を得るまでには長い道のりが待っています。


ワーキンググループにおける議論の様子(提供:富士通株式会社)

全体会議後は、5つのワーキンググループ(=WG、詳細は下表)に分かれて、提案のIS(International Standard;国際規格)化に向けてさまざまな議論が行われました。日本からは、WG2、3、4での提案が行われました。


各ワーキンググループの議題(提供:富士通株式会社)

史上初の成果へ向けて大きく前進

北里大学と富士通の合同プロジェクトチームは、WG4でCOIプログラム (漢方医学の歴史に、ICTで新たな幕開けを)で開発している、Abdominal physiological parameter detector (腹部生体情報検出器)という、漢方医が経験的・感覚的に実施している診断を客観化するための漢方診断を支援するための腹診関連センサーの提案を行いました。

その結果、議場で採択され、IS成立に向けたステップに進むことができることとなりました。この提案は、ISO史上初の日本主体での診断医療機器提案となる可能性を持っており、本研究の大きなアピール要素となります。

同チームはその他にも、医師が肉眼で診断しており、診断結果に医師間のばらつきがある、舌の診断を客観化するための上海道生医療科技有限公司(中国・上海)との舌診関連装置の光源、医師が触診で診断しており、同じく医師間でばらつきがある脈診関連装置のトランスデューサーに関する提案に共同PJリーダーとして参画しており、NPに向けての投票にかけられることになりました。


北里大学 川鍋 伊晃医師、富士通研究所ミイ・シャオユウ研究員(提供:富士通株式会社)

4日間にわたる白熱した議論が終わると、各WGで議論した内容を全体会議で再度承認し、京都会議としての結論を出しました。これまでももぐさや鍼などの東洋医学に関するあらゆる規格が議論されてきましたが、今回の会議では、時代の潮流も受け、センシング技術などを活用したデジタルデバイスに関するものが増えていました。

その後、ウェスティン都ホテル京都に場所を移し、参加者の労を労うFarewell partyが開催されました。この場では、京都の伝統文化を楽しめるような、舞妓・芸子によるアトラクションが催されました。


Farewell partyにて舞妓・芸子さんの踊り(提供:富士通株式会社)

会議の場では、熾烈な議論から一転、参加者同士が笑顔でお酒を酌み交わしている姿が印象的でした。TC249の場は、各国を代表する、伝統医学の研究や臨床に従事しているメンバーが世界中から集まってきています。それゆえ、懇親の場も、議論だけでは知り得ない互いのバックグラウンドを知るための良い機会になっています。

ISOへの提案は、大変な労力とコストがかかり、あらゆる国とネゴシエーションを図らないとISとして成立しないことから、提案を行う側にとっては負担が大きいという側面もあります。しかし、提案を行わないと、自らが開発した製品の優位性を世界に対して適切にアピールしていくことができません。

TC249は東洋医学がテーマとなっていることもあり、中国、韓国、日本が中心に議論が行われていますが、東洋医学は伝統医学というカテゴリーに内包されるため、他国の伝統医学を担っている側からもIS化に向けた議論を静観することはできません。

そんななか、北里大学と富士通の共同提案は、初めての挑戦ではありましたが、TC249における確実な存在感を発揮することができました。伝統医学には、中医学、韓医学、漢方、アーユルヴェーダ、タイ伝統医学など沢山の種類がありますが、その真理は1つだという声もあります。その真理がISにつながるよう、来年の中国会議でのさらなる飛躍が期待されます。

漢方医学から世界標準をつくる ISO/TC249における北里大学・富士通の挑戦(前編)


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