Cases
社会課題を解決する先進的なアプローチをご紹介します。

ITが子どもの人生を変え、世の中を変える ──Life is Tech!前編

2014年09月25日



ITが子どもの人生を変え、世の中を変える ──Life is Tech!前編 | あしたのコミュニティーラボ
「すっごい!」「新しい!」「へええ!」「楽しそう!」「なるほど!」「革命だよ、これは!」──あちこちから賞賛の声があがる。夏休みも終わる8月29日、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)では、中学生、高校生向けにプログラミング学習の機会を提供することで、創造する力とつくる技術の習得を目指す「Life is Tech!」主催のITサマーキャンプの最終発表会が行われていた。Life is Tech!がつくり出すポジティブな場づくりの秘訣と、参加した子どもたち、メンターたちの熱い1日を2回に分けてお届けする。

子どもとメンターが”楽しみながら育つ場”をつくる ──Life is Tech!後編

ポジティブな場がつくり出されるしくみ

5~8日間かけて開発したスマートフォンのアプリやゲーム、デジタルアートなどのプレゼンの映像と中高生の説明に対して、そんなリスペクトを捧げるのは、大学生、大学院生のメンターたち。サマーキャンプ中、グループごとに1~2名ずつのメンターが付き、子どもたちと一緒に楽しみながら作業をサポートしてきた。

Life is Tech!代表取締役CEO 水野雄介さん

料理の「さしすせそ」は「砂糖、塩、酢、醤油(せうゆ)、味噌」の基本調味料だが、ほめる「基本フレーズ」にも「さしすせそ」があるという。「さすが! 知らなかった! すごい! センスある! そうなんだ!」。いずれも、相手の承認欲求や自己肯定感、自己顕示欲などを満たす言葉だ。中高生向けのプログラミング・ITキャンプ/スクール「Life is Tech!(ライフイズテック)」は、このセオリーを重視している。目的は「ポジティブな場をつくること」と代表取締役CEOの水野雄介さんは話す。

Life is Tech!がポジティブな場づくりを何より大切にしていることは、発表会を垣間見るだけでわかる。モデレーター・コンビの司会進行が、息の合った掛け合い漫才のようで子どもたちの笑い声が絶えない。

選択したコースごとに発表が行われる。数時間にわたる長丁場だ

さらに、中学生、高校生ともなれば心の機微に敏感な年頃。全員がすんなり集団に溶け込めるとも限らない。また、Life is Tech!の参加者はリピーターが4割で、初参加の子どもたちは「自ら望んで」と「親から言われて」が半々という。初参加の中高生の8割はプログラミング初体験だ。だからこそ最初のアイスブレイクに工夫を凝らし、昼休みには毎日、メンターと一緒にみんなで協力しないとできないようなアクティビティを楽しみ、だんだんと打ち解けてゆく。発表会が終わっても、なかなか帰ろうとしない。参加者もメンターも泣いている、卒業式のような光景が広がっていた。

2011年7月にスタートしたLife is Tech!の参加者は、今夏で累計8,000人におよぶ。中高生をひきつける場づくりは、どのような考えのもと行われているのだろうか。

子どもたちが「ヒーローになれる」瞬間をつくる

1982年生まれの水野さんは、慶應義塾大学理工学部大学院在学中に高校の非常勤物理講師を2年間務めた。そのとき感じていたのは日本の教育の遅れだった。大学センター試験や新卒一括採用は高度経済成長を支えたような、与えられた仕事を正確にこなし、一定の枠組みのなかで決められた目標を達成する人材を育てるにはふさわしいしくみだが、個人に独自性と創造性が要求されるグローバリズムの時代には、もはやそぐわない。新しい教育のしくみが求められている。

「教育を変える手段として起業を選択しました。ベンチマークにしたのはキッザニアです。エンタテインメントとして多くの子どもたちを集め、しかもちゃんと教育をしている。新しい教育のしくみのヒントがそこにありました」

では、なぜプログラミング教育に絞り込んだのか。これも講師時代の経験からきている。水野さんが教えていた開成高校ではパソコンやゲームが好きな生徒が多かった。昼休みにやってきては「僕がつくったゲームを見て」という。

「見てほしいのは、つまりほめてほしい、ということなんです。パソコンやゲームが好きな子って、スポーツの得意な子やクラスの人気者に比べると、学校ではヒーローになりにくい。でも、世の中ではITスキルは最も求められている能力の1つです。本人にやる気があって、なおかつ社会的にも必要とされているのに、機会や環境がないだけで、その子たちの可能性を伸ばせないのは、あまりにももったいないと思ったのです」

人生が変わるような空間にシリコンバレーで出会った

まずITならシリコンバレーと、水野さんは「シリコンバレー IT 教育」と検索することからスタートした。すると、スタンフォード大学で実施している子どもを対象にしたITキャンプに行き当たった。息子が参加したとFacebookで紹介していた米国在住の日本人女性にコンタクトを取り、ぜひ現場を見るべきとすすめられた。水野さんは、起業を共にする2人と現地見学を実施。そこでは子どもたちが、楽しげにアプリなどを開発していた。

開発を行う会場は、気持ちを高揚させる音楽と笑い声で満ちていた

これなら日本でもできそうだし、パイオニアになれる。起業するなら最低限、日本にまだない事業でなければ意味がない。それが水野さんの信条だった。

「数日間のキャンプで人生が変わるような場を提供してあげたい。それには、ディズニーランドのように中高生にとって非日常の空間であることが大事だと思いました。そこで大学のトップの東大と、母校の慶大を会場にしてスタートしよう、と。東大大学院情報学環の馬場章先生とスクウェア・エニックスの和田洋一会長の対談記事をウェブで見つけたら、僕らの考えかたと共通するところがあったので、馬場先生の研究室に電話し、15分のアポをいただきました」。中学生、高校生のIT 教育を伸ばしたい。そのために東大の力を借りたい。馬場教授は水野さんの企画に対して即座に共感し、協力を快諾した。

Win-Win-Winのスキームでメンター育成

ITキャンプの開催準備は並行して、着々と進行させた。起業した3人自らが高校生を講師に、iPhoneアプリのプログラミングを学ぶところからスタートしたという。カリキュラムをつくり、メンターの大学生を採用し、無料体験会で地ならしをするなど、地道でも着実に場をつくっていった。

数日間寝食をともにしたグループは、コール&レスポンスの息もぴったり

2011年スタート時のサマーキャンプは40人ほどが参加。ほどなく新聞やテレビ番組が取り上げると、参加者はさらに増えた。中学2年生の女子が開発した、お弁当づくりをサポートするiPhoneアプリ「iBento」がリリースされ2万5,000ダウンロードを達成、というニュースも追い風になった。仮想の弁当箱に詰めたおかずをタップすると有名レシピサイトに飛ぶ、というアイデアだ。

Life is Tech!で重要なのはメンターの役割。現在登録しているのは300人で、60時間の研修を受けたあと採用される。メンター、後のITリーダーを育てる研修プログラムにはGoogle、Yahoo!、クックパッドなど9社が場所と資金を提供している。企業のねらいは優秀な大学生、大学院生の採用、学生側からみると、自身のITのスキルアップができる。さらにLife is Tech!側からみるとメンターの育成。トリプル・ウィンのスキームが成り立っている。

若年層向けのプログラミング学習の機会提供を通じて、新しい人材育成の方法も確立しようとしているLife is Tech!。いったい、現場ではどのようなプログラムを組み、どんなスタッフが子どもたちに接しているのだろうか。つづく第2回目は、現場づくりのプロフェッショナルと、最前線にいるメンターたちに現場づくりの方法と、そこにかける想いを聞いた。

子どもとメンターが”楽しみながら育つ場”をつくる ──Life is Tech!後編へ続く


いいね!を押して
Facebookページをフォロー

あしたラボの最新情報をお届けします。

Twitterであしたラボ(@ashita_lab)をフォローしよう!

皆さんの感想をお聞かせください!





  • facebook
  •  twitter
  • USTREAM
  • RSS

Copyright 2017 あしたのコミュニティーラボ