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未来が生まれる場所をつくる――ソーシャルイノベーションを体験する―― イベントレポート(前編)

2014年09月29日



未来が生まれる場所をつくる――ソーシャルイノベーションを体験する―― イベントレポート(前編) | あしたのコミュニティーラボ
9月10日に、この日が初披露となった「HAB-YU」で行われた「未来が生まれる場所をつくる」イベント。今回は、あるトピックス(課題)に関して参加者とアイデアを出し合い、意見をまとめるプロセス(ダイアローグ=対話)を実践し、“これからの場づくり”を体験してみよう、という実践的なイベントでした。登壇者、参加者それぞれが熱い想いを語ったイベント、前半は登壇者が実践する“場づくり”についてお届けします。

未来が生まれる場所をつくる――ソーシャルイノベーションを体験する―― イベントレポート(後編)

場づくりの秘訣は? 専門にする4名の登壇者たち

今回のイベントには、“場づくり”を専門とするモデレーターと、高校生のキャリア教育、未就学児の創造性を活かした教育、ビジネスマンのワークスタイル変革と、分野は違えど“場づくり”をそれぞれの場で実践する3名の実践者、計4名が登壇しました。

モデレーターは以前インタビューにも登場いただいた、NPO法人ミラツク代表理事の西村勇哉さん。今回取り入れた「ダイアローグ」という手法を使い、日本全国で地域を活かした場づくりを実践しながら、イノベーションを起こそうと活動されています。

堀井勇太さんは、認定NPO法人カタリバ統括ディレクターとして、対話を通じて高校生のキャリア教育を行う認定NPO法人の現場で活躍するほか、カタリバという組織、場づくりを行っています。

石戸奈々子さんは、世界でも類を見ない子ども向けワークショップ博覧会を主催するほか、企業や地域、自治体を巻き込んでデジタル教育ワークショップを展開するNPO法人CANVASの代表理事です。

平野隆さんは、富士通デザイン株式会社 ソフトウェア&サービスデザイン事業部でフィールド&環境情報デザインに携わっています。今回の会場となった「HAB-YU」をはじめ、デザインを通じて、企業のイノベーション活動を後押しすることを目指しています。

共通の話題こそが対話への第1歩

前半は社会課題の解決に挑んでいる3人の登壇者が自らの活動をプレゼンテーションし、どのように未来が生まれる場づくりをしているのか、語りました。3人には、後半に行ったダイアローグのトピックスも提供してもらいます。


NPO法人ミラツク代表理事 西村勇哉さん

まずはウォーミングアップのアイスブレイクを西村さんがモデレート。近くの3人ずつで参加者がグループを組み、①名前②どこから来たか③自分の背景がよくわかること(仕事でも趣味でも何でもいい)の3点を10分間で話し合ってもらいました。共通の話題があることは、場づくりの第1歩だからです。

最初の登壇者は認定NPO法人カタリバ統括ディレクターの堀井勇太さん。「少し年上の先輩」との対話型プログラム授業で高校生の意欲を引き出しています。子どもや若者の未来を生き抜く能力が、生まれ育った環境によって左右されてしまうこと。この課題を解決し、生き抜く力(自立・共生・イノベーション)を子どもと若者につかんでもらう。それがカタリバの目指すことです。


認定NPO法人カタリバ統括ディレクター 堀井勇太さん

2011年に発表された財団法人日本青少年研究所のアンケート調査によれば、「私は価値のある人間だと思う」という質問に半数以上の高校生が「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」と回答しました。自己肯定感の低さが著しいと堀井さんは話します。

ニートや引きこもりといった若者の課題はどこに原因があるのでしょうか。県民所得と大学進学率、世帯年収と学力の相関性。10〜20代の自殺率の増加。相対的貧困率や1人親世帯の貧困率の高さ。……種々のデータを見ると、個人の怠惰や甘えではなく社会の構造的な問題から生じていると考えざるをえません。カタリバは機会格差の解消を通じてこうした課題の解決を図ります。

年間240校、5万2,000名の高校生に2時間の対話型プログラム授業を提供し、ボランティアスタッフは約7,000人。多数の大学生や社会人が流動的に関わるからこそ、高校生は多様なロールモデルに出会うことができ、ボランティアスタッフもその経験をのちのキャリアに活かすことができます。大切にしているのは親や先生や友だちとは違う「斜めの関係」。互いに学び合い教えあう「半学半教」の授業と、斜めの関係の動機づけスイッチによって「社会に守られる人」から「社会を変えて行く当事者」に若者を変えていきます。

カタリバの運営メンバーは3年前24名でしたが今は96名に拡大。堀井さんが提示したダイアローグのトピックスは、「組織の成長のスピードに振り回されず、高い視点を持ってチャレンジし続けるには?」でした。

まるでファッションショー! “ポップな学びの場”を

NPO法人CANVAS代表理事の石戸奈々子さんは、子どもたちの創造的な学びの場をつくる活動を続けています。全国の子どもたちによる博覧会イベント「ワークショップコレクション」を実施し、今年の8月末に行われた第11回ワークショップコレクションは2日間で約5万7,000人が集合。


NPO法人CANVAS代表理事 石戸奈々子さん

OECDの学習到達度調査(PTSA)で日本の子どもたちの学力低下が話題になりましたが、それ以上に課題とすべきなのが、アンケート調査で「勉強が楽しいと思わない」「将来役に立つと思わない」と回答する子どもが多いことだと、石戸さんは話します。要するに、“やる気のない子”が増えてしまっているのです。一方で経団連が新卒採用時に重視する力は、圧倒的にコミュニケーション力。次に主体性、協調性。学業成績と出身校の注目度は低い。石戸さんは、子どもたちのやる気が出ないのは、社会が求めている力と学校現場で学ぶ力にギャップがあるからと考えます。

先生が知識をいっせいに生徒へ伝達する場としての学校。それは江戸時代の寺子屋から150年間、変わっていません。しかし、インターネットで知識を検索できるようになった今、知識を持つことの優位性は低下しました。それよりも、これからの子どもたちに必要なのは、コンピュータに代替できない創造力と、多様な価値観の人たちと共創できるコミュニケーション力。そうした力がつく主体的・協調的・創造的な学びの場を、学校も家庭も行政も地域も企業も、すべての人々が手を取り合ってつくる。それがCANVASの目指すことです。

新しい学びの場をファッションショーのようにポップな感じでつくれないか、とはじめたのがワークショップコレクション。地域ごとにさまざまなセクターの人たちが集まって子どもたちのワークショップ(たとえば地域の特産物を子どもたちなりのアイデアで紹介する映像づくりなど)をサポートします。

そして、新しい学びへと変化するきっかけを提供するのが“ICT”。CANVASでは、「PEGプロジェクト」などの子どもたちのプログラミング学習の場づくりも全国的に展開しています。大人と子どもが手を取り合って新しい未来を創造していくにはどうしたらよいのか。後半ではそんなテーマで話し合いたい、と石戸さんは結びました。

未来を見据えた、ビジョンに到達するための施策を

富士通デザイン株式会社の平野隆さんの仕事は、空間デザインのディレクター。これまでは顧客の現場の差し迫った課題を解決するという仕事のやり方でしたが、それが次第に変わってきていると言います。

2011年、九州工科大学のキャンパスマスタープランを策定したときのこと。30年先のキャンパスのあるべき姿を文科省に提案し予算がつくのですが、従来のように設備を中心としたプランではなく、人が中心のプランを立てました。教員、学生、地域、自治体と、大学に関わるさまざまな人たちとワークショップを重ねてわかったのは、現在の課題だけからでは、30年先の未来は見えない、ということです。大事なのは、現状を把握するフィールドワークに加えて、多様なセクターの人たちとのコラボレーショと、仮説を立てて市場に問うてみるプロトタイピング。“現状から次を見つける”のではなく、“未来を見据えたビジョンを描き、そこに到達するための施策を考える”。そうしたアプローチに変わってきたのです。


富士通デザイン株式会社 平野隆さん

昨年8月、富士通グループ12社18部門から40名が集まり、富士通の考える未来のワークスタイルのビジョンを描きました。それが次のような「Work Renaissance」です。これは4ステージに分けられます。

①アナログとデジタルを融合したアシストで個人の能力を最大限に拡張 
②リアルタイムに情報共有しいつでも自然に支え合える強いチームづくり 
③多様性から生まれるアイデアを具現化し新領域への可能性を拡げるプラットフォームの創出 
④自分らしい働き方、生き方のできる多様で豊かな暮らしの実現。
そして、こうしたワークスタイルが夢物語ではなく現実に可能であることを裏づける24のICTをマッピングしました。

今回のイベント会場となった東京・六本木の「HAB-YU」は、社内外の多様な人を巻き込んでワークショップやツール開発などをする「共創の場」として富士通デザイン主導で設けたもの。こけら落としがまさにこの日、このイベントでした。

平野さんはダイアローグのトピックスに「デザインの意味と価値を広く捉えて、これからのデザイナーに期待することは?」と提示してくれました。

それぞれの“場”で日々実践を行っている堀井さん、石戸さん、平野さんの背景や活動内容、そこでの工夫などを聞き、登壇者も参加者側もダイアローグの準備は万端! の状態に。いよいよ、参加者全員による“場づくり”がスタートします。

未来が生まれる場所をつくる――ソーシャルイノベーションを体験する―― イベントレポート(後編)


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