ものづくりのスタートは、動きを楽しむことから
子どもむけのプログラミング言語Scratchを使い、自分でロボットの動きをプログラムできるキット「Rapiro」や、シンセサイザーの機能を搭載したモジュールをマグネットで自由につないで簡単に電子工作が楽しめる「littleBits」、iPhone/iPod Touchアプリとキャタピラつきのベースを組み合わせたロボット「Romo」など、全部で6つのプログラムが集まりました。
バリエーションに富んだ各プログラムは、どれもサイト上などでソフトウェアが公開されているなど、探求することで創意工夫を重ねられるものばかり。ブースでは子どもたちが思い思いのものづくり、プログラミングを体験していました。
ScratchでRapiroをうごかそう!(株式会社スイッチサイエンス)
まず訪問したブースは、教育機関向けの教材としても期待されている「Rapiro」。今までは拡張性の高い制御基板「Arduino(アルドゥイーノ)」やカードサイズPC「Raspberry Pi」を搭載していたロボット工作キットでしたが、今回はScratchのわかりやすいインターフェースを活用し、子どもでも簡単にロボットを動かすことのできる体験ブースを設置していました。
ブース入口で、ひときわ目立っていた「Rapiro」ブース
プログラムを行うためのブロックをPC画面上で自由に移動させ「Rapiro」を動かす様子
Scratchの画面内で、動きを組み合わせることですぐにプログラミング体験でもとても楽しげ。やはり実際にそこにあるロボットが動くのは子どもたちにとって大きいようでした。
littleBitsで電子工作体験!(littleBits x KORG)
光ったり音が出たり、動いたりと具体的なアクションをする「アウトプット」と、圧力センサーやマイクがついた「インプット」といったモジュールなどをマグネットで自由につないで、簡単に電子工作が楽しめる「littleBits(リトルビッツ)」。
モジュールを組み合わせて自由に遊ぶ子どもたち
電子回路の知識はなくても、パズルのように組み合わせるだけで、自分だけのおもちゃができてしまうとあって常に子どもが絶えない大人気のブースでした。音を吹き込みさらに増幅させたり、モジュールをひたすら長く組み合わせたりと、工夫の方法はさまざま。長時間遊んでいる子どもが多く見られました。
モジュールを組み合わせることで、楽器も作れる!
日本の楽器メーカーであるKORGはlittleBitsと組んでシンセユニットをアメリカ本社と企画・開発し、販売している企業。机の上には音を発振するオシレーター、音階を調整するキーボード、音を加工するフィルターやディレイ等のエフェクターが用意されていました。株式会社コルグの山藤さんによると「遊ぶことで一般的なシンセサイザーのしくみを学ぶことができ、慣れればどんなシンセでも音づくりができるようになる」そうで、電子工作だけでなくシンセサイザーの成り立ちも学ぶことができる一石二鳥の製品です。
エデュケーショナルロボット 「Romo」を動かそう!(ロモティブ日本総代理店セールス・オンデマンド株式会社)
最後に訪れたのが、無料アプリとiPhone/iPod Touchとキャタピラつきのベースを組み合わせたロボット「Romo(ロモ)」の体験コーナーとワークショップスペース。「突かれたら」「顔を見たら」「暗くなったら」「動けなくなったら」などの条件と、「走る」「回転する」「写真を撮る」「ビデオを撮る」「光る」など様々な動作、更には「早さ」「距離」などのパラメータを組み合わせて、まるで生きているかのように、簡単にRomoをプログラミングすることが可能です。
アプリを起動すると、画面には顔が表示される
ワークショップ会場でより複雑な道を進めようと奮闘する子どもたち
画面上のRomoの表情が自在に変化することで子どもたちはその表情に惹かれ、あっという間に仲良くなっている様子がみてとれました。セールス・オンデマンド株式会社の小暮さんによると、「教育用途のほか、SDKが無償で開放されていることもあり、エンジニア向けのハッカソンなどでも活用されている」とか。できた! できない! と試行錯誤しながら子どもたちが創造力を膨らませながら楽しんでいるのが印象的なブースでした。
継続的でよりよい学習を──PEGの活動が目指すもの
そのほかにも、電気回路を写真紙に描くことができ、電源やLEDと組み合わせれば、簡単に絵や文字を回路にできるのが特徴の「マーカー・プリンタ」(AgIC)や、誰でもつくれ、Scratchで疑似的に会話が可能なソーシャルロボット「Mugbot(マグボット)」(東京都市大学小池研究室)、樹脂を溶かしながら立体物を描くことができる3Dペン「3Doodler」が展示コーナーに登場。いずれも多くの子どもたちでにぎわっていました。
マグカップをさかさまにしたフォルムが女の子に人気だったマグボット
マーカー・プリンタでは複雑な絵を描いてしまい、回路をつくるのに苦労する子どもも
メガネをつくるコーナーが親子連れに大人気だった「3Doodler」
PEGプロジェクトのディレクター・熊井晃史さんと監修の阿部和広先生(CANVASフェロー・青山学院大学非常勤講師、津田塾大学非常勤講師)は「興味を持った子どもが続けられなくなってしまう、“はしごを外す”ことはしたくない。継続的な活動をしていきたい」と、このプロジェクトに対する意気込みを話します。子ども向けに目新しい“ものづくり”や“プログラミング”というツールを体験させるだけでなく、地域の小中学校と連携し、子どもを教える側への研修会も同時に開催しているPEG。その言葉は子どもの教育が点で終わらない、線で行うことの重要性を示しています。
プログラミング学習のきっかけをつかむための「点」が今後どのように発展・進化していくか、あしたのコミュニティーラボでも引き続き支援していきます。
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