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都市と農村がつながる地域共生型社会モデルのつくり方 ──NPO法人えがおつなげて(2)

2014年10月14日



都市と農村がつながる地域共生型社会モデルのつくり方 ──NPO法人えがおつなげて(2) | あしたのコミュニティーラボ
農村コミュニティーに溶け込む努力が実り、少しずつ地域との関係も深まり、仲間も集まってきた曽根原さんは、「NPO法人えがおつなげて」を立ち上げる。しかし、そこには収益という大きな壁があった。どのようにして、その壁を乗り越えていったのか。曽根原流の乗り越え方を聞いた。

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地域共生型社会モデルに立ちはだかった“収益”の壁

曽根原さんは約5haの山林の地上権を買い、伐採をはじめた。間伐材を薪にして、薪ストーブを使う八ヶ岳山麓の別荘族に販売したところ、これが大ヒット。最盛期には年間300トンを売った。東京の自然食品店と連携して耕作放棄地を開墾し、収穫した野菜も販売。別荘地などに配布したフリーペーパー「南アルプスいなか新聞」が販促ツールの役割を果たした。2000年には1,000万円弱の事業収入を上げるようになる。東京へ通う経営コンサルティングの仕事も続けていたが、労働時間の配分は2割足らずになった。


NPO法人えがおつなげて代表 曽根原久司さん

こうした活動に関心を示す仲間たちが地域にも都会にも増えてきた2001年、「NPO法人えがおつなげて」を発足させる。都市と農村の交流を通じて地域共生型、分散型社会モデルを築きたい。そんな事業コンセプトをわかりやすく表すネーミングは、ジャズミュージシャン渡辺貞夫さんの曲名から拝借した。

当時、NPO法人は農地を借りることができなかったが、2003年に須玉町および山梨県農政部と連携し内閣府に構造改革特区の申請を出すと、限界集落の増富地区が地域振興交流特区として認定され、農地の貸与が許可された。地元の人たちとともに「子どもファーム」「手前味噌仕込み会」などの都市農村交流イベントを盛んに開催。首都圏の若者に開墾ボランティアを呼びかけると延べ5,000人も集まり、3年間で3haの耕作放棄地がよみがえった。


3年で5000人もの開墾ボランティアが集まったというのも驚きだ
(提供:NPO法人えがおつなげて)

都会から多くの若者が集まり、NPOのスタッフも育って、開墾・農作業の受け入れ体制も確立したが、大きな問題があった。収益が上がらないのだ。

“収益を上げる農業”のビジネスモデルづくり

そこで曽根原さんは「企業と農村をつなぎ農村に仕事をつくろう」と考え、2004年に企業ファームの事業を立ち上げた。第1号は山梨県内にチェーン展開している和菓子店、菓子処清月。従業員には開墾からはじめてもらい、栽培した青大豆と花豆で大福とモンブランを開発するとヒット商品となった。三菱地所グループとの出会いは、2008年に主催した「限界集落ツアー」にCSR担当者が参加したこと。その頃からニーズが増えてきた、と曽根原さんは言う。


菓子処清月の企業ファームでの様子(提供:NPO法人えがおつなげて)

「農業に社会の焦点が集まってきました。日本の農業は今後3つの流れで発展すると思います。第1に大規模化の〈生産性向上型農業〉。第2に、私たちが実践している〈付加価値型農業〉。そして第3に〈ライフスタイル型農業〉。農地法が規制緩和され、たとえばロシアのダーチャ(農園付きセカンドハウス)のようにして、農地に小屋を建ててもよいことになったら、ライフスタイルに農を取り入れたい人たちの関心を呼び、都市近郊の耕作放棄地はずいぶん解消されるでしょう。現在の市民菜園の活況を見れば明らかです」

日本には眠れる農村資源が豊富にあることはたしかだが、ビジネスモデルにするにはノウハウが必要だ。農村の資源と都市のニーズをつないでサプライチェーンを構築し、農商工連携による6次産業化をめざす人材育成の場「えがおの学校」を福島、山梨、三重、福岡、熊本で2008年から展開している。曽根原さんが経営コンサルタントのスキルを生かして作成した「都市農村交流マネジメントコーディネーター育成マニュアル」に基づいたカリキュラムで6~8回、約半年間の研修プログラム。これを学んで起業に至った受講生も数多い。


さまざまな年代の人が集まる、えがおの学校(提供:NPO法人えがおつなげて)

農村に仕事をつくりたいという思いから、企業の研修の場となる企業ファームづくりへの変化、そして、それを育てる人材づくりへ──。農業への注目が集まるにつれて、大きな輪を広げていった曽根原さん。農業と企業、地域社会、人材育成など、多様な視点を持つ曽根原さんの元に集まる多くが若者たち。彼らがなぜ、農業を志すのか。“輪”に参加する若者たちのリアルな声をお届けする。

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