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デザイナーにこれから求められるスキルはさらに高度化する  ──九大 平井康之准教授インタビュー(3)

2014年10月23日



デザイナーにこれから求められるスキルはさらに高度化する  ──九大 平井康之准教授インタビュー(3) | あしたのコミュニティーラボ
無意識ながら社会的に排除されてしまった人たちが持つ熱い思いを取り入れながら、みんなで新しい価値づくりを行う「インクルーシブデザイン」という考え方には企業からも注目が集まっています。日本における第一人者である九州大学大学院 芸術工学研究院 准教授の平井康之先生に定義やプロジェクト内容について伺ってきた全2回に続き、最終回となる第3回は、企業がインクルーシブデザインを取り入れる際のコツや、これからのデザイナーに求められるスキルとは何かを伺いました。

人と人、社会にある課題を解決する「インクルーシブデザイン」という考え方  ──九大 平井康之准教授インタビュー(1)
複雑に絡み合った想いをco-designする、インクルーシブデザイン  ──九大 平井康之准教授インタビュー(2)

そこに絶対的な解はない、だからこそみんなで考える

──インクルーシブデザインの視点でもある「みんなで行うものづくり」の弊害として、できたものが八方美人的になってしまうという意見がありますが、その点についてどのようにお考えですか。

平井 インクルーシブデザインは「意見を聞いて取り入れてものをつくる」ものではありません。デザインに協力していただく多様な人々と一緒に課題を共有することが基本ですが、最終的なまとめ役はデザイナーです。みなさんからの意見をどう取り入れるか、さじ加減が非常に重要ですが、決して彼らの「ために」つくるわけではありません。


九州大学大学院 芸術工学研究院 平井康之准教授

そこにいる人々はデザインに対する気づきやインスピレーションを得て、一緒にデザイン(co-design)を行うための「パートナー」なんです。個人個人の持つ複数の主観を組み合わせ、同意を成り立たせている状態「間主観」という考え方がありますが、それに近いと思っています。

──企業がインクルーシブデザインを取り入れる場合、どのようなポイントがありますか?

平井 一番のポイントは体制づくりです。デザイン部門だけじゃなく、R&Dやマーケティング、エンジニアも含めて、最初からそれぞれのメンバーが入って共通課題を持ってプロジェクトを進めるようにする必要があります。当たり前のことのようで、これがなかなかできていませんし、僕自身、企業に講義を行う際は必ずそう伝えています。

最初から関わるメンバーを揃えず、徐々にエスカレーションしていく方法だと、途中まで合意がとれて進んでいるのに、あるセクションでその部署に都合のよい製品に突然変わったりしてしまいます。それはなぜか。「こうすれば必ず何かが解決する」、という“絶対的な解”はないからです。その意義や結果を問われた際に、プロジェクトが途中で止まってしまう可能性は大いに考えられます。

ユニバーサルデザインのように基準のあるものならば論理的に考えられますが、インクルーシブデザインは課題発見型です。「すべてがすべて合理的には説明できない」ということも全員が理解しておく必要があります。まずは課題を見つける、バレーボールのように「トスを上げる」という作業の必要性を大事に考えてもらいたいと感じています。どちらも必要な考え、インクルーシブデザインとユニバーサルデザインは車の両輪です。

──インクルーシブデザインとユニバーサルデザイン両方の視点を持った人材、今後デザイナーはどんな存在であるべきか、どのようにお考えですか。

平井 今後、デザイナーに求められるものは、さまざまな価値観を取り入れるために人々をリードするファシリテーション能力と、「なるほど!」と単純に感動できる高度なデザインを生み出すスキルだと考えています。


新しく手掛ける「きづき×ひらめき×デザイン」プロジェクトはデザイナー育成のしくみでもある

IDEOの共同経営者であるトム・ケリーがこれからのデザイナーに必要なスキルは「T字型」だと話していましたが、まさにそんなイメージです。広い分野に興味を持ちながら、ある部分で深いスキルを持つことで、企業とユーザーを最適な形でブリッジできる、求められているそんな人材です。

そこに至るまでは多数の経験が必要ですが、その根幹にあるのは「キュリオシティ(人への興味)」。社会的に排除されてしまっている状態の方と、まず対話できるソーシャルコミュニケーションのスキルを持つことが最も重要だと思います。

人と人、社会にある課題を解決する「インクルーシブデザイン」という考え方  ──九大 平井康之准教授インタビュー(1)
複雑に絡み合った想いをco-designする、インクルーシブデザイン  ──九大 平井康之准教授インタビュー(2)

平井康之  ひらい・やすゆき

九州大学大学院 芸術工学研究院 デザインストラテジー部門 准教授

1961年生まれ。京都市立芸術大学卒業後、コクヨ株式会社にデザイナーとして勤務。在職中の1990~1992年にロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)に留学。マスターを取得し帰国後、アメリカのデザインコンサルタント会社 IDEOに4年間勤務。九州芸術工科大学(現・九州大学)助教授を経て、2003年より現職。さまざまな企業のコンサルタントや共同プロジェクトにおいてインクルーシブデザインを実践・研究している。

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