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“アートの力”で障がいのある人と社会の接点をつくる ──たんぽぽの家アートセンターHANA(前編)

2014年10月29日



“アートの力”で障がいのある人と社会の接点をつくる ──たんぽぽの家アートセンターHANA(前編) | あしたのコミュニティーラボ
奈良県奈良市にある「たんぽぽの家 アートセンターHANA」は、“アートを通じお互いの感性を交換できる、地域に開かれた場”として機能している。ここに通う障がいのある人の多くは、最初からアートに対し強い関心があったわけではないが、絵画やテキスタイル、語り、陶芸、カフェの店員など自らの興味をさまざまな分野に活かしている。この「HANA」を運営する「たんぽぽの家」は、40年前からアートと福祉の視点から活動を展開。障がいのある人の表現を通して、社会を豊かなものにしていくことを目指す「エイブル・アート・ムーブメント」の活動の拠点である。どんな“場づくり”が行われているのか。前後編でお話を伺った。

企業の特性とかけ合わせて“働き方”を見つける ──たんぽぽの家アートセンターHANA(後編)

“できること”を伸ばしてあげる

2004年、それまで使っていた福祉施設を全面的にリニューアルし、障がいのある人を含めた「誰も」が表現に特化できる場としてオープンしたのが、奈良県奈良市にある「アートセンターHANA」である。この日、HANAでは『だれもが表現者』と題した企画展が開かれ、ギャラリーには“アーティスト”であるHANAの登録メンバー49名のポートレイトとともに、「日常」「個性」をテーマにしたアート作品が並んでいた。

ゆったりとした時間の流れる施設内には、ギャラリーのほか、絵画や立体造形を制作できるスタジオもある。そこは個別の創作スペースが設けられたアトリエで、身体の状況に合わせた道具もセッティングされている。このほか、テキスタイル、染色、陶芸に対応できるスタジオも備わり、オープンスペースとしてカフェやショップが併設される。

「障がいのある人たちが、トレーニングを通して『できないことをできるようにしていく』のではなく、『できること=好きなこと、得意なことを伸ばしていく』というのがHANAのコンセプトです」。

そう話すのは、HANAでワークプログラム・コーディネーターを務める「社会福祉法人わたぼうしの会」の藤井克英さん。藤井さんがHANAの運営母体である「たんぽぽの家」と出会ったは学生時代だ。

企業とのコラボレーションを担当する社会福祉法人わたぼうしの会 藤井克英さん

「高校生のときにボランティア募集に参加していったのがきっかけです。その後大学でデザインを専攻して、就職する際にはデザインを仕事にしていくことをやめようと思っていたんです。高校のときの経験がここで役立てるのであればと思い、本格的に働きはじめました」。

アート作品を仕事としてつくり上げていく

HANAのコンセプトはアート、ワーク、コミュニケーション。アトリエ&スタジオでアート作品をつくりあげたり、カフェやショップでの仕事を通してメンバー個々の就労のあり方を検討し、「アート」や「ワーク」を通して、社会との接点を見つけようと活動している。加えて「実験的なプロジェクト」、「障害のある人の学びや楽しみのプログラム」として、曜日ごとに「情報リテラシー」を高める新聞を読むワークショップ、「ダンス」「演劇的ワークショップ」「アロマテラピー」「ネイルプログラム」「アレンジフラワー」といった、選択制のプログラムも用意されている。

別のアトリエでは刺繡や織物など思い思いのものづくりの光景が広がっていた

「アートに関心がなくても、絵画なり陶芸なりダンスなり、ここに来てからはじめてもらって構わないし、たとえば、重度の障がいによって『これをやりたい』というような意思表示が難しい場合でも、僕らサポートするスタッフが、彼らの日常的な行動から『それおもしろいじゃん!』と感じるものを探し、一緒につくりあげたい」

各プログラムでは外部からの専門家も招いている。たとえば、昔話の「語り部」プログラムでは、フリーアナウンサーが話し方のアドバイスをおくり、発表の際には講評もある。こうした環境づくりとサポートによって、それぞれの“表現”が育まれていく。

語り部のみなさん。訪問当日も力強い語りで楽しませてくれた

可能性を広げる“選択肢”が必要だった

そもそも「たんぽぽの家」が「奈良たんぽぽの会」として活動をはじめたのは1973年のこと。養護学校を卒業した人たちが地域の中で生きがいを持って通える、そんな場をつくりたいという市民活動からはじまった。76年に財団法人として「たんぽぽの家」が設立され、87年には「社会福祉法人わたぼうしの会」も発足。現在は奈良たんぽぽの会とたんぽぽの家、わたぼうしの会、3つの組織が連携しながら運営している。

「たんぽぽの家」が現在のように「芸術や文化を通した社会運動」に取り組むようになったのは、実は、73年の発足当初からのことだった。75年には、障がいのある人の詩にメロディをつけて歌う「わたぼうし音楽祭」を開催しており、2015年で40周年を迎える歴史あるイベントとして知られている。「たんぽぽの家」常務理事の森下静香さんは、その理由を次のように話す。

一般財団法人たんぽぽの家の森下静香さん。全国を周り、活動を広くPRする

「当時の福祉といえば、障がいのある人は入所施設に入りきりになったり、家のなかに閉じこもりきりになったりするのが通例だったんです。いわゆる内職といわれるような単純作業が多くを占めていましたが、そうした内職が困難になるほど、身体に重度の障がいがある人もいました。1人ひとりの能力に適した活動をしていくには、そうした単純作業だけではなく、もっと多くの選択肢が必要で、芸術や文化に着目したんです」

90年代に入ると、社会的にも障がいのある人の芸術をきちんと評価しようとする動きはさらに活発となっていった。そして95年。「たんぽぽの家」では、『エイブル・アート・ムーブメント』を始動し、「芸術や文化を通した社会運動」はさらに本格化していった──。

地域の福祉を担う団体から、全国の障がいのある人のアート活動を支援する団体へ──。地域福祉の活動からスタートした活動は、他で同じような活動をしようとしているNPO団体や民間企業、行政などから注目を集めている。自らも活動を行いながら、その気運を高める土壌づくりも行う「たんぽぽの家」の活動が次に見据えているものとは。

企業の特性とかけ合わせて“働き方”を見つける ──たんぽぽの家アートセンターHANA(後編)へ続く

関連リンク
たんぽぽの家アートセンターHANA
エイブルアート・カンパニー
Good Job!展


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