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企業の特性とかけ合わせて“働き方”を見つける ──たんぽぽの家アートセンターHANA(後編)

2014年10月30日



企業の特性とかけ合わせて“働き方”を見つける ──たんぽぽの家アートセンターHANA(後編) | あしたのコミュニティーラボ
「95年からはじめた『エイブル・アート・ムーブメント』への関心は、企業の支援を得て次第に大きくなり、今は、障がいのある人のアート活動については国や自治体の支援も増えてきている段階」と話す森下さん。今後「たんぽぽの家」が取り組んでいく活動について伺った。

“アートの力”で障がいのある人と社会の接点をつくる ──たんぽぽの家アートセンターHANA(前編)

企業や自治体が「エイブル・アート」に関心を寄せる理由

「エイブル・アート」とは、障がいのある人の芸術や表現からその人の可能性を見出し、ひいては、誰も社会から阻害されない社会をつくろうとする活動のことだ。70年代に「芸術や文化を通した社会運動」を軸に発足した「たんぽぽの家」は、95年からこの「エイブル・アート」への取り組みを本格的に始動させた。97年には、関係団体であるエイブル・アート・ジャパンと、日本の公立美術館では初となる企画展を東京都美術館で開催している。

小さな“つぶ”を組み合わせ日常を描き出す山村晃弘さん

それらの活動は、すぐに多くの企業の共感を得ることができた。90年代後半から2000年代にかけて、それぞれトヨタ自動車、近畿労働金庫、明治安田生命の支援によるプログラム「トヨタ・エイブルアート・フォーラム」や「エイブル・アート近畿 ひと・アート・まち」、「エイブルアート・オンステージ」などもはじまった。そうした関心度の高まりは自治体においても同様で、「たんぽぽの家」が2003年から福祉施設の職員に向けてはじめた「福祉をかえる『アート化』セミナー」は、県の内外の自治体から関心が寄せられ、アート化に関するプログラム作成の引き合いも後を絶たない。

森下さんは「活動開始当初こそ、エイブル・アートの活動がなかなか認識されていないように感じましたが、次第に全国の人たちとのネットワークができていきました。日本の民間企業や地域の方々が支援してくれたことが、今の活動につながっていると思います」と話す。

“表現”を「仕事」に転換していく試み

企業の参加によって活動の幅が広がれば広がるほど、アートの可能性はより大きなものになっていく。障がいのある人にとって、アートがコミュニティーへ参加する手段になるのはもちろんだが、それだけではなく、地域活性化や産業振興にもつながるかもしれない。そうした意味でも、民間企業とタッグを組み、障がいのある人の表現を流通させていくことの意義はとても大きい。

陶芸スタジオの一角。中段にある色とりどりの「厄除鬼」は節分に向け各地で販売される

「商品企画やノベルティの開発依頼もあります。最近は海外製品におされて価格競争やデザインに悩みを持っている地元の工場の方々に可能性を感じてもらい、そこから仕事が生まれることもあります」(藤井さん)

2007年には、アーティストの著作権を管理する「エイブルアート・カンパニー」も立ち上げた。企業広報誌やカレンダーなどで作品を使用したいけれど、どこに問い合わせればいいのかわからない──。そうした悩みに応えるべく、NPO法人エイブル・アート・ジャパンと主に九州で活動するNPO法人まる、そしてたんぽぽの家の3団体が連携して中間支援組織をつくったのだ。現在86名のアーティストが登録し、約9000点のデータを管理している。

「絵画のような芸術的な評価だけでなく、イラストやデザインとして好まれる作品もあり、実際に商品化されているものもあります。そのため『仕事になるものかどうか』を見極められるように、デザイナーや印刷会社の人にも作品選定に参加していただいています」(森下さん)

所得の再分配から“可能性の再分配”へ

さらなる構想として、奈良県香芝市に「企業と福祉をつなぐ」をテーマにした「Good Job!Center」の建設も計画中だ。これは、障がいのある人たちのアートを社会的なイノベーションにつなげる新しい活動拠点。「資金集めはこれから」というが、全国への流通や事業化も見据えている。

Good Job!展2013 渋谷ヒカリエでの様子(提供:一般財団法人たんぽぽの家)

それに併行して、2014年11月から15年3月には、北海道・東京・愛知・福岡・兵庫の5会場で「Good Job!展」も開催予定。こちらは「新たな出会いと仕事が生まれる場」としてのイベントで、前年度には3会場で1万2,000人の来場者を集めた。

語り部の1人、伊藤愛子さん。テレビのナレーターとしても活躍している

民間企業とのコラボレーションも視野に入れた「エイブル・アート」の活動を通し、今後「たんぽぽの家」が目指す社会はどんなものなのだろうか。森下さんは最後に、次のように語った。

「HANAには企業の見学者も増えています。徳島県の神山町に代表される『アーティスト・イン・レジデンス』という言葉がすっかり有名になりましたが、『Good Job!Center』では『ビジネスマン・イン・レジデンス』のようなかたちで滞在してもらい、企業の人たちと新しい仕事を考えていけたらおもしろい。障がいのある人にとって、まだまだ社会には選択肢が少ないのが実状で、もっと本人が能動的に選んでいける環境をつくるためにも、モノやイベントを通して、いろいろな実験をしていきたいです。企業の特性と、障がいのある人の可能性をかけ合わせれば、きっと社会を変えられる協働関係ができ、新しい働き方を見つける大きなヒントになることは間違いありません」

Good Job!Centerコンセプトシート (提供:一般財団法人たんぽぽの家)

先日インタビューに登場頂いた九大・平井康之准教授の活動にも共通することだが、真に多様な社会をめざすために、多様な価値観に触れるところからスタートする。まさにそんな場をたんぽぽの家ではつくろうとしている。

社会が大きく変化するなか、障がいのある人も社会サービスを受けるだけの存在にとどまるのではなく、それぞれの可能性をいかし、社会のなかで役割を果たしていくことが求められている。『Good Job!Center』のコンセプトシートに書かれていた「所得の再分配から“可能性の再分配”へ」という言葉を現実のものにするための活動を、あしたのコミュニティーラボでは引き続き応援していきたい。

“アートの力”で障がいのある人と社会の接点をつくる ──たんぽぽの家アートセンターHANA(前編)

関連リンク
たんぽぽの家アートセンターHANA
エイブルアート・カンパニー
Good Job!展


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