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ソフトからハードへ、新たな「ものづくり」がはじまる ――CEATEC2014(前編)

2014年11月10日



ソフトからハードへ、新たな「ものづくり」がはじまる ――CEATEC2014(前編) | あしたのコミュニティーラボ
2014年10月7日(火)~11日(土)に幕張メッセで開かれた、通信・情報・映像分野における最先端技術が集まる展示会「CEATEC JAPAN2014」。そのなかで、経済産業省とCEATEC事務局が共同で開催したパネルディスカッション「T3 (Toward 2020)プロジェクト ~ハードウェアベンチャーの可能性~」をレポートします。急速に変化している業界の今や、近年日本でも注目を浴びているハードウェアベンチャーと大企業の連携・関係性づくりの秘訣、スタートアップの存在意義など、内容盛りだくさんでお届けします。

ものづくりへの情熱が共創の種を生む ――CEATEC JAPAN2014(後編)

<登壇者紹介>
本パネルディスカッションではスタートアップ、デザイナー、大企業など各分野から4名の登壇者が集まり、それぞれの立場からハードウェアやものづくりの現状、そしてともに目指すべき未来について語りました。

ファシリテーターは情報科学技術大学院大学(通称:IAMAS) 産業文化研究センターの小林茂教授。地域産業とITの融合によって新商品やサービスを創出しようと2013年からはじまった岐阜県の「コア・ブースター・プロジェクト」の中心人物で、産官民学の連携によるイノベーション創出の機会づくりを行っています。

高萩昭範さんは、国内外で注目を浴びるスタートアップ 株式会社 Moffの代表取締役。同社の製品である「Moff Band」は、時計型ウェアラブルデバイスで今年10月に一般発売を開始しました。スマートフォンアプリと連動し、子どもも大人も楽しめるウェアラブルおもちゃとして音を使った遊びが可能です。

インダストリアルデザイナー/プロダクトストラテジストの久下玄さんは、大手総合家電メーカーのデザイナーを経て、現在は国内に限らず、数多くのイノベーション創出のプロジェクトを手掛けるほか、ハードウェアベンチャーの事業立ち上げから、プロダクトやオフィスデザインなどブランディング活動にも関わっています。

Webメディア「あしたのコミュニティーラボ」を起点とし、社内外を巻き込んでイノベーション創出事業を進める富士通株式会社 あしたのコミュニティーラボ 柴崎辰彦代表は、自社の事業から見た“ものづくりの今”と社内外を巻き込んだイノベーションについてどのようなしくみをつくりだしているか、大企業の立場から紹介します。

IoTが広げる、ものづくりの限界領域

高萩さんはメルセデス・ベンツ日本の商品企画担当を経て独立、動画配信・電子書籍サービスなどのWebサービスを手掛けたのち、あしたのコミュニティーラボでも取り上げた大阪イノベーションハブで行われたハッカソンがきっかけで「株式会社Moff」を立ち上げました。

「もともとものづくりを専門としていたこともあり、ものづくりのスタートアップをつくりたいと思っていたんです。ちょうどメイカーズムーブメントが勃興し『ものづくりのルールが変わった。これはチャンスだ』と感じました。そこで設立したのが株式会社Moffなんです」と、設立の背景を語りました。


株式会社Moff代表取締役 高萩昭範さん

「これまでの“ベンチャー企業”は、新興企業のなかでもWebサービスなどのソフトウェアを主な製品・サービスとする企業を指していましたが、近年は物理的、いわゆるハードウェアも組み合わせてサービス・製品づくりを行うベンチャー企業、いわゆる“ハードウェアベンチャー”がアメリカを中心に急増しています」と、高萩さんはその実状を語ります。

さらに昨年からブームになっているのが、ハードウェアとソフトウェアが融合し、さらにはインターネットと接続した「IoT(Internet of Things)」分野。高萩さんはメイカーズムーブメントを目の当たりにした際に「これからのものづくりはハードウェア、ソフトウェア、クラウドそれらを一貫とした、いわゆるIoTが前提になる」と痛感し、Moff Bandをつくりました。「すべてのものがインターネットにつながる、IoT時代にふさわしいおもちゃはこういうものじゃないのか」という思いを表したプロダクトです。


腕に装着して専用アプリを起動すると、効果音を鳴らすことができる

センサー技術や位置情報解析などのソフトウェアに加え、クラウドを利用しデータ収集をし、データ解析を行うなど、一見シンプルな製品のなかには高度な技術が詰まっています。「あらゆる技術を一気通貫して提供する」。まさにIoT時代の製品といえるでしょう。

プロダクトデザイナーの目線から見るIoT

久下さんも、自身でも、時に他のハードウェアベンチャーとともにプロジェクトを展開するデザイナーの1人。脳波で動くネコ耳を開発した「neurowear」による脳波ヘッドフォン「mico」も久下さんが関わったプロダクトです。

「使用者の脳波のログをとって分析し、それにあわせた音楽のプレイリストを作成する、いわば“脳波ジュークボックス”です。身体情報とエンターテインメントを結びつけることをミッションとしているneurowearが、最先端テクノロジーが世界中から集まるイベント サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)向けにショーモデルとして開発し、筐体設計やファーム設計に携わりました」


インダストリアルデザイナー/プロダクトストラテジスト 久下玄さん

ハードウェアベンチャーの領域はエンターテインメントの分野にとどまりません。「Coiney(コイニー)」は中小規模店舗向けのモバイル決済ハードウェア。専用のアプリをインストールしたiPhoneと専用のカードリーダーを接続することでクレジット決済に対応します。多額の初期費用やクレジット会社からの審査があり、ハードルが高いと言われていた中小規模店舗のクレジット決済導入に関する課題を、ハードウェアベンチャーが解決した好例です。

高萩さんと久下さんはハードウェアベンチャーを盛り上げる潮流としていくつかの条件を挙げました。1つ目はプロトタイプ生産が容易になってきたこと、2つ目はネットワーク環境が整備されてきたこと、3つ目は資金集めやパートナー探しといったビジネス面での整備がされはじめていることです。この3つの条件は、後編の大きなテーマである「日本でもっとイノベーションが生まれ、それが海外に展開していくには?」という課題に大きなヒントを与え、パネルディスカッションで大いに盛り上がりました。

積極的に新しい手法を取り入れ、イノベーションを促す

大企業が新しいものづくりの方法として注目していることは何か。富士通株式会社 あしたのコミュニティーラボ 柴崎辰彦代表は大企業の視点からイノベーション創出の取り組みを紹介します。


富士通株式会社 あしたのコミュニティーラボ 柴崎辰彦代表

「あしたのコミュニティーラボ」は、リアルでもバーチャルでもディスカッションする場を展開し、イノベーションを促進するプラットフォームとしての役割を目的に立ち上がりました。大企業のイノベーション促進とは、つまり、自社のビジネスとそこで働く個人、両方を活性化しイノベーションを起こすこと。その具体例として、今年行われたオープンハッカソン「さくらハッカソン」と社内ハッカソン「FUJI HACK」を紹介しました。

「さくらハッカソン」は、社内外の多様なメンバーが参加し行われたオープンイベントでしたが、その成果が社内にまた新たな流れを起こしたと柴崎代表は話します。「FUJI HACK」ではSEのみならず、デザイナー、マーケティングなど部門を横断した参加者を迎えて行われました。そこでは1.5日でデバイスのプロトタイプが完成。今まで同社では生まれづらかった新しいイノベーション創出ができたと話します。

「ハッカソンという手法はアメリカから来た新しい考え方ですが、とかくものづくりに課題を持った日本企業にも、非常に親和性があると思っています。ビジネスチャンスの拡大や人材育成、用途開発、個人のモチベーション向上など、企業と個人の双方にメリットをもたらす手法です」(柴崎代表)

地場産業からイノベーションを生み出すしくみづくり

地域の既存産業とテクノロジーを使ったものづくりのコラボレーションはどう行われているのか、具体例を交えたプレゼンテーションを行ったのはIAMASの小林教授です。

岐阜県の情報産業拠点「ソフトピアジャパン」地区内には、ソフトやハードウェアベンチャーが多数入居するインキュベーション施設「ドリームコア」とデジタル工作機器を備えた工房がありそこから新しいイノベーションを起こそうとする「コア・ブースター・プロジェクト」を紹介しました。

具体的には木工や刃物、陶器といった岐阜県の地場産業と、Webやデザインといった情報産業の人々を集めてスキルや価値観を共有、製品化を目標にチームを組んでプロトタイピングや開発を進めます。コンセプトを固めていくまでのフローも「ひと目でわかるイラストで表現する」などユニークな取り組みが紹介されました。


情報科学技術大学院大学 産業文化研究センター 教授 小林茂さん

実際に製品化まで至った例として挙げられたのは、地元名産の「枡」とLEDを組み合わせ作られた「光り枡」、タブレットと積み木を組み合わせた「ことばつみき」、木工産業がプロデューサーとなって進められた通信機能を備えたサイドテーブル「イロドリスタンド」の3つ。いずれも木の良さを活かしながら、デバイスやLEDなどの電子パーツを使った、まさに温故知新の製品と言えます。

「高い技術を誇る既存のものづくり企業とITを組み合わせることで生まれる新しい商品やサービスなどの可能性を探り、イノベーション創出を目指したい」(小林さん)


単語通りに文字のピースをはめるとタブレット上にイラストが現れる「ことばつみき」

ハードウェアベンチャーの活動を後押し、大企業や地域産業に新しい波をもたらすテクノロジーの進化は、ものづくりに新しい流れを生み出しています。そこで問われるのは、自分たちのゴールに向かってどう取り入れるか、取り入れられるタッチポイントを探すこと、探すことのできる人材を育てることではないでしょうか。

メイカーズムーブメントやIoTといったテクノロジーの進歩と、クラウドファンディングサービスといった資金調達プラットフォームの発展により盛り上がりをみせるハードウェアベンチャー。後編では日本の状況や、ベンチャー主導の動きのなかに大企業や官民がどう関わるのかを問う、ディスカッションの様子をお届けします。

ものづくりへの情熱が共創の種を生む ――CEATEC JAPAN2014(後編)へ続く

関連リンク
CEATEC JAPAN 2014
Coiney(コイニー)
Moff


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