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ものづくりへの情熱が共創の種を生む ――CEATEC JAPAN2014(後編)

2014年11月11日



ものづくりへの情熱が共創の種を生む ――CEATEC JAPAN2014(後編) | あしたのコミュニティーラボ
技術革新や開発環境の整備が進むに従い、広がるものづくりの領域。「CEATEC JAPAN2014」最終日には、ハードウェアに迫る「T3 (Toward 2020)プロジェクト ~ハードウェアベンチャーの可能性~」プログラムの一環としてパネルディスカッションが行われました。各登壇者が自身のプロジェクトからみる新しいものづくりの可能性を語った前編に続き、後編では日本のハードウェアベンチャーの未来と、イノベーション創出のポイントを掘り下げます。

ソフトからハードへ、新たな「ものづくり」がはじまる ――CEATEC2014(前編)

リアルタイムに届くユーザーの声を活かす

「ハードウェアベンチャー」の潮流はアメリカ主導、日本でのプレーヤーはまだ多くはありません。そこで最初に掲げられたパネルディスカッションのテーマは「日本でもっとイノベーションが生まれ、それが海外に展開していくにはどうすればよいか?」という議題でした。

Moff Bandはアメリカのクラウドファンディングサービス「Kickstarter」でユーザーに出資を募り、目標金額2万ドルを2日間で達成、最終的には8万ドルを集めることに成功しています。

加えて、海外のクラウドファンディングサービスを使うことで、世界中の人々に製品を知ってもらう機会、そして海外の有名メディアに取り上げられる機会が得られたと話します。さらに、そのプラットフォームの支援者が金銭的な支援にとどまらず、開発者と「一緒につくる」というスタンスを持っていたため、マーケティング面でもプロダクト面でも大きなフィードバックが得られました。

「このプロダクトの意義や、展開方法を明示したうえで、現在の過程を伝えないと支援者から『どうなってるんだ』というクレームがくることもありました。そこで気づいたのですが、オープンにすると応援の声が入ってくるんです。『こういう理由があって、ローンチが少し遅れてしまう。申し訳ない』と説明したら、『いいね! プロダクトの品質を追求するお前はサムライだ!』と歓迎されたこともありました」

国内でものづくりを行いながら、製品へのフィードバックを海外のクラウドファウンディングというプラットフォーム経由で得る。近年日本でも取り入れられつつあるプロジェクト立ち上げの手法ですが、言語を超えてよりオープンになることが重要といえます。

高萩さんは「ウェアラブルデバイスにしても、海外は基本的にフィットネスをはじめトップアスリート用のデバイスなんかが多いんですけど、MoffBandは“おもちゃ”なんです。実は非常に複雑なことをやっているけど、あえておもちゃにしちゃいましたという“日本的なひとひねり”が評価されたと考えています。日本にとってはなんでもないものでも、海外にとっては新鮮なものになり得るということは忘れずにいたいですね」と、“日本ならでは”のハードウェアベンチャーに可能性を見出します。

海外の先進技術を取り入れ、日本流の工夫でそれを編集して新しいものに仕立て上げる。それを行うことでもともと日本のものづくりの長所とされていた細やかさや身近なものからの発想力といった “日本らしい”技術をさらにPRできるといえます。

大企業に息づくベンチャー精神

議論は新しいものづくりにおける、大企業の関わり方、そしてベンチャー企業との関係性に発展。大企業がイノベーションのためにベンチャー企業と積極的に共創しようとする流れは、近年特にものづくりの分野で多く見られます。大企業はその潮流にどのような意義を見出しているのでしょうか。柴崎代表は次のように語ります。

「IoTの世界になっていくなかで、モノのインターネットという話がよくされますが、サービスも含めたものなので、私は『コトのインターネット』だと思います。そういった新しい領域で活躍できる人材をどう育成するかと考えたときに、『Fail First』、つまり早いうちに失敗していこう、どんどんチャレンジしていこうという精神が大企業にも必要だと感じています」

富士通という会社はもともと富士電機という企業からスピンアウトしたベンチャー企業だった、と語る柴崎代表。富士通は来年で創業80周年を迎える老舗企業ですが、「ベンチャー精神を持ち続けたい」という話がよく出るのだそうです。

しかし、大企業ならではの規模が大きすぎるゆえの課題もあり、それに対してあしたのコミュニティーラボの活動がどのような役割を果たしているかについて言及します。

「大企業にはベンチャー創業者のようなアグレッシブな人間ばかりでないのも事実。そこで『あしたのコミュニティーラボ』のような、そういった事例を紹介するメディアをつくり、社内外問わずに可能性がある人達を鼓舞したい」

また、経験者の声として、大企業で家電デザイナーをし、そこから独立した久下さんは、日本企業には優れたデザイナー、技術者が埋もれており、新しいプロジェクトの多くが潰されてしまうことが非常に残念だと語ります。

「とあるアメリカの大企業がクライアントだったときの話なんですけど、向こうのプロダクトデザイナーは自分が考えた製品を世に出すために、上司を本当に戦略的に勢いを持って口説くんです。日本のデザイナーはデザインしかしたくないという人が多いのですが、向こうのデザイナーは根回しもしっかりやるという印象が強い」と語り、製品アプローチに見る情熱やカルチャーの違いを指摘しました。

そのうえで、大企業がイノベーションを起こすためにはどうしたらいいか。久下さんは「新しいイノベーションのためには、変にこだわらずに欧米を中心とした海外の先進的な手法やツールを積極的に取り入れたほうがいいと思いますが、そこに日本ならではの文化特性や習性を1個加えることがポイントだと思っています」と話します。

それに対し、柴崎代表は「大企業がオープンイノベーションをやるには、富士通だけで全部をやる自前主義と決別し、企業のなかにこもらず、積極的に外の風を取り入れることが必要だと思っています」と答え、大企業の外部との“対話の必要性”、そのための社内での啓蒙活動の必要性を引き続き訴えていきたいと話しました。

ベンチャーと大企業をつなぐもの

ベンチャーでありながら「金融」というジャンルに位置するために大企業との距離も近い「Coiney」を手掛ける立場の久下さんは、ベンチャーと大企業とをつなぐ「文脈」について語りました。

「規模としてはとても小さく、社会的な信用も大企業には及ばない僕たちが、大企業とどう渡り合うのかという点は、非常に苦労しました。そこで信頼を勝ち得ていくためには、とにかくもともと金融をやっていた大企業の人たちを自分たちの仲間に引き込んで、大企業と同じ文脈で話し合えるように道筋をつくるよう努力しました」

プロジェクトの過程でスタートアップの強みと言われるスピード感などのカルチャーを殺してまでも、大企業と合わせるようにしたと話す久下さん。自我を貫くのではなく、デザイナーの本質ともいえるコミュニケーションに重点を置き、互いのカルチャーを尊重し合う姿勢が大切だと述べました。

しかし、その一方で高萩さんはスタートアップが最終的に目指すべきゴールとしての「イグジット(創業者やベンチャーキャピタルが会社の株式を売却し、利益を手にすること)」について言及。スタートアップはどのように成長し、最終的に投資家たちに還元すべきか。その答えがイグジットだと高萩さんは強く主張します。


Moffのブースでは幅広い年齢の人がMoff Bandを楽しんでいた

「イグジットのゴールはどこかに買収されるか、IPO(株式公開)をするかなんです。しかしそのどちらかを実現するには『買わないと自分の会社の領域を奪われる』という脅威を感じさせないとといけない。だからこそ、脅かすくらいの勢いや気構えを持っていないといけない。そこをベンチャーは絶対に忘れちゃいけないと思います」

企業に買収されるとしても製品・サービスにインパクトが必要であり、そのためにはお金が必要であること。企業対スタートアップという対立構造としてではなく、互いが共存し、良い製品を生み出して行くためには、既存のプレーヤーを陵駕するくらいの情熱が、スタートアップには必要とされる。高萩さんの言葉は、Moff自身を鼓舞するとともに日本のスタートアップ企業への激励が感じられました。

ハードウェアベンチャーが育つ3カ条

2時間にわたったパネルディスカッションを経て、ファシリテーターの小林さんは、今後日本のハードウェアベンチャーが海外に進出し、なおかつ発展を遂げるために重要なポイントは3つにまとめられると総括しました。

・取り入れられるものはきちんと理解して取り入れ、自分たちなりにアレンジして活用する
・大企業とスタートアップ、それぞれのカルチャーを尊重し、理解したうえでコミュニケーションする
・共創と(健全な)競争、イグジット先をもっと増やす

ハードウェアベンチャーといえどもその文脈は多岐にわたります。しかし、その根幹にあるものは、ものづくりへの熱い情熱。それが海外進出、国内外問わずの大企業へのイグジット、新しい共創の種へと変化していきます。今後この分野においてベンチャーならびに大企業の接触や衝突は避けられませんが、それは両者にとって必要な摩擦に他なりません。

これまでさまざまな主体によるイノベーション創出のアプローチを取りあげてきた「あしたのコミュニティーラボ」。今回は場づくりを行う側、場がきっかけとなって誕生したベンチャーという両者の目線からものづくりのプロセスとその進化を追い、日本におけるソーシャルイノベーションの広がりを強く実感させられました。

ソフトからハードへ、新たな「ものづくり」がはじまる ――CEATEC2014(前編)

関連リンク
CEATEC JAPAN 2014
Coiney(コイニー)
Moff


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