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100年後の地域を支えるアイデアを形にする場 ――土佐山アカデミー「EDGE CAMP」(3)

2014年11月18日



100年後の地域を支えるアイデアを形にする場 ――土佐山アカデミー「EDGE CAMP」(3) | あしたのコミュニティーラボ
地域資源を活かす人材を育む「学びの場」の提供だけでなく、実際のソーシャルビジネスにつなげるため、新しいプログラム“EDGE CAMP”が今年からはじまった。そもそも、なぜ高知の中山間地域に土佐山アカデミーのような“場”が生まれたのだろうか。「EDGE CAMP」の参加者、土佐山アカデミーの運営者に、その背景や意義を聞いた。

高知の山奥で、起業家の卵を育てる ――土佐山アカデミー「EDGE CAMP」(1)
“先輩”から受け継がれる地域起業の道 ――土佐山アカデミー「EDGE CAMP」(2)

お年寄りの生きがいをつくる「逆支援型デイサービス」

澤本洋介さんは、土佐山を1つ越えた本山町で指圧鍼灸院と在宅介護支援事業所を営んでいる。「逆支援型デイサービス」というアイデアでスタートアップを目指し、EDGE CAMPに参加した。

鍼灸マッサージの仕事を通じ、お年寄りの身体の痛みを緩和するには生活スタイルから見直す必要があると感じた澤本さん。ケアマネージャーの資格を取り、ケアプランの作成から患者さんの生活を変えようと思ったが、デイサービスの現状に課題を見出だしたという。

「しりとりや輪投げをしたり……。もちろん輪投げ1つとっても転倒予防の効果があるので、それなりに考えられた取り組みではあるのですが、特に男性で仕事一筋だったような人には、どうしてもなじめないところがあります。ならばデイサービスを受けなければいいのかというと、家に閉じこもっていれば身体の機能がどんどん落ちてしまう。でも、そういう方たちに人生経験のお話をじっくり聞くと、とても勉強になることが多いのです。民俗学者の六車由実さんが唱える「介護民俗学」にもヒントを得て、お年寄りから貴重な体験談を聞き出して、若い人たちも得るところがあるような〈逆支援型〉のデイサービスができないか、と考えました。相づちを打ったり、相手の言葉をオウム返しにする、ポーズとしての〈傾聴〉だけでなしに、その人の話の内容をメモしながらインタビューするような」


EDGE CAMPメンバーの1人、澤本洋介さん(写真左上)は、
「逆支援型」のデイサービスとして、聞き取りを行っている。(写真右下提供:澤本洋介さん)

澤本さんはプレゼンで、「高齢者が社会のお荷物だと考えているのは高齢者自身がいちばん多い」という衝撃的なデータを紹介した。しかし決して高齢者はお荷物ではない。同じ話を繰り返す認知症のお年寄りのその話だって、じっくり内容を掘り下げて聞いてみればとても興味深い、という。

中山間地域のみならず、超高齢化が進む日本社会の課題にQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の観点から、1つのソリューションを提供し、今まで顧みられなかった次元を掘り起こして新たな価値を生み出そうとする意欲的な取り組みだ。

介護報酬以外の収益モデルをどう組み立てるか。お年寄りの話をパブリックドメインとして、多くの人たちに利用してもらうには、通常のデイサービスの個人情報保護の利用規約とどう整合性をもたせるか。

この2点について澤本さんはメンターに相談し、収益化の難しさを改めて痛感した。同業他社の方法や高齢者を対象にしている異業種との接点、海外の事例なども調査したらどうか、といったアドバイスを受けたという。

「高知の山のなかに同志が集まり、貴重なお話を聴いて学ぶことができるのはなんてラッキーなんだろうと思います」

土を耕して水をやり自然発生するものがいちばん強い

そもそもどうして土佐山アカデミーのような「学びの場」が立ち上がったのだろうか。共同創設者でプロデューサーの林篤志さんは、農産物や移住をテーマに地方と都市を結ぶツアーなどを企画する仕事を各地の自治体と重ねるうち、中山間地域や離島に大きな魅力を感じ、やれることがたくさんあると思った。


土佐山アカデミー共同創設者の林篤志さん

「自然の資源も土地も空き家もあり、技術と知恵のあるお年寄りもいる。一方で東京には能力のある若い人たちがたくさんいる。やる気さえあれば、可能性の高い素材が豊かな中山間地域や離島はとても魅力的なフィールドなのに、なぜもっと多くの人が挑もうとしないのか。これが最初の問題提起でした」

要は、知らないし、しくみがないから入りようがないだけ。ならば外から来る人が地域のさまざまなリソースと交われる仕掛けをつくればいい。地域の人たちと学び合い教え合う場。「学び」をキーワードにそんな場づくりができないだろうか――。そう考えていたときに、たまたま高知県庁と仕事をする機会があり、土佐山という場所を紹介された。これが、土佐山アカデミー発足のきっかけだ。


地域の人との交流によって、学びが生まれる。(提供:NPO法人土佐山アカデミー)

なかでもとりわけ「地域での起業」というゴールが明確な取り組みEDGE CAMPのような場づくりには、どのような気配りを心がけているのだろうか。林さんは「放置して化学反応を待つというか、あまりデザインしきらないこと」と語る。

「この場のコンセプトに共感している人たちが集まるのだから、入口と出口だけを設定すればいいんです。次の100年に必要な持続可能な暮らしのため人間が、自然の一部として生きる文化を育む。それが土佐山アカデミーの掲げる大きなテーマの1つですから、〈食べものなんて安けりゃいいっしょ!〉みたいな人はそもそも来ないんですよ。でもそれってとても大事なことで、こういう場なんだ、と強調することで来る人を選べる。僕たちの役割は土を用意して耕し時おり水をやること。それだけのことで、ここに来た人たちがこうなるべきと導いたりはしない。自然発生的なものがいちばん強いんです」

林さんは月の3分の1は高知で、残りは他の地域で仕事をしている。出たり入ったりして「半分は傍観者的な視点を保つことも、僕には大切」と付け加える。環境にどっぷり浸かってしまうと外の世界が見えなくなるからだ。

地域を元気にするのが「よそ者、若者、バカ者」の三拍子だけでは、いつまでたっても、一部の突破者しか達成できない。ごくふつうの人たちに足がかりとなり、起業への助走期間をメンターが伴走してくれるEDGE CAMPのような学びの場は、全国各地で求められている。その先駆けとして2015年3月、13人の参加者がどのようなスタートを切ることになるのか、楽しみだ。


提供:NPO法人土佐山アカデミー

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