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起業? 支援? 大企業が場をつくる理由――EdTech Lab (β) by BenesseとHAB-YU platform (前編)

2014年12月02日



起業? 支援? 大企業が場をつくる理由――EdTech Lab (β) by BenesseとHAB-YU platform (前編) | あしたのコミュニティーラボ
大企業が開かれた「場」をつくる例が増えている。教育×ICTで新しい学びを創造するEdTech Lab (β) by Benesse。〈コト〉を生み出すサービスデザインを思考するHAB-YU platform。それぞれベネッセホールディングスと富士通デザインが開設した、外部との共創によるイノベーションを目指すスペースだ。大企業がこうした場づくりをする意義はどこにあるのか。とかく閉じられがちな大企業によるオープンイノベーションはどのように進もうとしているのか。

ステークホルダー全員が方向性を再確認する“場”へ――EdTech Lab (β) by BenesseとHAB-YU platform(後編)

「外へ開いた仕事」から、新しい学びをつくる

株式会社ベネッセホールディングスが運営する「EdTech Lab (β) by Benesse(エドテック・ラボ ベータ)」(東京都渋谷区)には、月に1回「森安Day」というユニークな日がある。EdTech Lab (β) by Benesseを立ち上げた森安康雄部長が待機しており、Facebookを通じて申し込めば、社外の誰でも、どんな内容でもプレゼンテーションや相談ができる。

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EdTech Lab (β) by Benesseを立ち上げた森安康雄部長

「EdTech Lab (β) by Benesseの利用者でなくてもOKです。弊社とコラボレーションしたいというご提案でも、〈こんなアイデアで起業できますか?〉といったご質問でも何でも」と森安さんが言うように、さしずめ「オープンメンター」のようなおもむきだ。

こうして広く門戸を開放する姿勢にEdTech Lab (β) by Benesseという場のあり方がよく表れている。教育×ICTによって、今までになかった学び方を生み出そうとする人たちのスタートアップを支援するインキュベーション組織。それが2013年8月にオープンしたEdTech Lab (β) by Benesseだ。開発やミーティング、ユーザーインタビューなどの場として、スタートアップ企業の関係者は自由にここを利用できる。大企業とベンチャーとの共創を模索する取り組みの1つといえよう。

森安さんがこのEdTech Lab (β) by Benesseを開設する際に思い浮かべていたのは、アラン・ケイの有名な言葉「未来を予測する最良の方法は未来をつくること」だった。

「2011年に小学校に入学した子どもの65%は大学卒業時に今は存在していない職業に就く。アメリカの研究者のそんな予測が話題になりましたが、もしそうだとするならば、新しい職業にふさわしい新しい学びをつくらなければなりません。それはきっと、たった1つの解答に短時間で効率良く到達する、という20世紀型の学びとはまったく違うものになるはずです」

その学びは今の学習指導要領にはないし、学校でも教えていない。ましてや、1社単独の経験知の範囲内で未来の子どもたちに提供できるわけもない。

「つまり、“オープンイノベーション”が必要だと考えたわけです」

今までの仕事とは違う進め方に価値を見出す。そのことを発信する場所でもある、と森安さんは言う。内向きに閉じた仕事のしかたとは何か。仕事の発注先にアイデアの提案を依頼する。自社からは何も提供しない。

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作業場、会議、インタビューなど、さまざまな用途に応じてEdTech Lab (β) by Benesseは利用されている

そうではなく、進んで場やリソースを提供する。それならばこんなことができますよ、と言ってくれる人たちと一緒に仕事をする。外向きに開かれた仕事へ、とはそういう意味だ。

あくまでも、ベネッセ社員が利用する場ではなく、外部の人たちが利用する場としてEdTech Lab (β) by Benesseは主に開かれている。社内イベントはたまにしかないという。

分厚いユーザー層、というリソースを活かして

教育×ICTの取り組みが「e-Learning」と呼ばれた時代から「EdTech」へ。その背景には、モバイルデバイスやソーシャルメディアの影響が大きい。従来、学びの環境を集中的に提供してきたのは、大きなシステムやプラットフォームを構築できる教育機関や企業だったが、今後は動画共有サイトやSNSを活用して個人同士が学び合い、教え合える関係を分散的に結べる可能性が高い。

「教える人と学ぶ人がダイレクトにつながるようになったとき、その間にいる教育事業者がどんな価値を提供すれば、お金をいただけるサービスになるのか。そう考えると、大企業もベンチャーも同じスタートラインで知恵比べ」と見る森安さん。一方で、大企業ならではのリソースもスタートアップベンチャーに提供できる、と指摘する。ベネッセでいうならばそれは、「こどもちゃれんじ」や「進研ゼミ」の会員という分厚いユーザー層だ。

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話題の英語学習アプリmikanの開発者、宇佐美峻さんもEdTech Lab (β) by Benesseの利用者

「スタートアップの難題の1つは、お客さまへのリーチ。どんなに素晴らしいサービスを創っても、お客さまに届かなければ意味がありません。弊社のサービスのお客さまをベースに想定すれば、彼らが最初に見つけなければいけないお客さまに届きやすい。われわれもまた、お客さまがどんなサービスに価値を見出すのかつかめます。win=winの関係になれるのです」

実際、EdTech Lab (β) by Benesseではスタートアップベンチャーとの共創が実を結びつつある。

たとえばスマートフォンでいつでも家庭教師の授業を受けられる「mana.bo(マナボ)」。すでに有料サービスとして提供中だ。1時間単位のチケット制で、わからない問題などを画像に撮って送ればリアルタイムで家庭教師が解決してくれる。このサービスでは、進研ゼミのユーザーを対象に、進研ゼミと同時併用することでどのような結果が得られるかというテストマーケティングを敢行した。結果、「mana.bo」が進研ゼミの添削サービスだけでは理解が難しい点を補足し、双方のサービスの利用が活性化するという結果が出た。

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自然と人が集まり、会話が生まれるというサッカーゲーム

また、「学年でビリだったギャルが、1年で偏差値を40あげて日本でトップの私立大学、慶應大学に現役で合格した話」が話題となった、ユーザー1人ひとりの「ストーリー」を公開し合うプラットフォーム「STORYS.JP」もEdTech Lab (β) by Benesseの利用者である。その縁もあり、「STORYS.JP」が持つコンテンツのなかで、進路選択の参考になりそうなストーリーを進研ゼミの会員高校生に紹介する取り組みもはじまっているという。

サービスのトライ&エラーからローンチまでを短縮でき、結果、先行優位をもたらすことができる「外を向いた」EdTech Lab (β) by Benesseならではの事例といえよう。

新しい「外向きの場」ができることで、スタートアップと運営企業それぞれにサービスが研鑽されるタイミングがつくられていく。社内向けのセミナー施設にとどまらない、ユニークな活動の結果が現れている結果と言える。次は、“ビジネスモデル”をよりオープンにしたいと考える企業がはじめた新たな取り組みを紹介する。

ステークホルダー全員が方向性を再確認する“場”へ――EdTech Lab (β) by BenesseとHAB-YU platform(後編)へ続く


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