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「あと一押し」の元気をもたらすWebサービス
地域SNS「あみっぴぃ」(千葉県千葉市)

2012年08月10日



「あと一押し」の元気をもたらすWebサービス<br />地域SNS「あみっぴぃ」(千葉県千葉市) | あしたのコミュニティーラボ
「大学生の参加禁止」「ネット用語の使用禁止」などのルールを設けて2006年にプレオープンからスタートさせた地域SNSがある。千葉市の株式会社トライワープが運営する「あみっぴぃ」だ。初心者に大きく門戸を開いたコミュニケーションサイトは、仮想社会ではなく現実社会の豊かさを目指している。

「生活」に近づける工夫が、年配者への配慮に

高齢者やパソコンに不慣れな人がインターネットの世界に違和感を抱くのはなぜだろう。それは「現実社会のしきたり」と「仮想社会のならわし」が違うからかもしれない。地域では、年配の人たちが決めたルールやしきたりに若者が合わせるのは当然のこと。ところがネット上では、すでに若者がつくった暗黙のルールや言葉づかいが定着している。年配者が後から入り込むのはハードルが高い。

大学生と地域住民の世代間交流を目的に、千葉県千葉市で地域SNS「あみっぴぃ」を立ち上げたのは、株式会社トライワープ代表取締役の虎岩雅明さん。虎岩さんは、SNS上でも現実社会と同じ関係を築いて、年配の人やパソコン初心者でもすんなりコミュニケーションサイトに参加できるようにしたかったと言う。

「そのためには、あらかじめSNS上に〈大人だけの世界〉をつくりあげるプレオープンから始めて、正式オープン後に入ってくる若者にはその世界に合わせてもらえばよいと考えたのです」

(写真左:株式会社トライワープ代表取締役の虎岩雅明さん)

プレオープン時のルールとして、トライワープメンバーを除く大学生の参加と、「レス」や「トピを立てる」といったネット用語の使用を禁止した。さらに、mixiなどによくある「血液型A型」といったネット上だけの架空のコミュニティーの作成も禁止した。「コミュニティー」といえば、公民館でのサークル活動のように実在する仲間たちを連想する。ネット上だけでつながる仮想集団にはどうしても違和感を覚えてしまう――。そんな年配者に対する配慮だった。そして本名、顔写真の掲載を義務づけ、納得できない人には強制的に退会してもらうことにした。画面の文言も、銀行ATMを意識して設計し、パソコン初心者も戸惑わずに操作できる仕組みを徹底した。

40名のプレオープンメンバーを集め、1カ月後の2006年2月に正式オープン。待機していた大学生たちが一斉に入会し、1週間後には会員数が100名を超えた。入会には「招待制」を採用し、現在の会員数は4,000名に及んでいる。

SNSは、地域のゆるやかな関係づくりにこそ活かされる

大学院2年のときに「就職しないで社会人になりたい」と考えた虎岩さんは、「オリジナルかつビッグなアイデアで起業するのではなく、自分たちのできることを身のまわりの人にしてあげることで、自分たちが生かされる」道を選んだ。それは若者が年配者に教えるパソコン教室。ただし普通の教室ではなかった。

千葉市中央区、稲毛区、美浜区が隣接するエリアのほぼ中心に位置する西千葉地区は、千葉大学のキャンパスがあり、商店街と住宅地も近い。ただし、東京のベッドタウンとして会社員は地元との縁が薄く、大学生も4年間を過ごすとほぼ都内に就職する。商店主や地域住民との交流はほとんどなかった。

「大学生が商店街の空き店舗を活用してパソコンを教えることで、商店主や地域住民との交流のきっかけづくりにしたかったんです。お互いに街で会ったら挨拶する、声をかけあう。世代を超えて、そんな関係が増えればいいなと思いました。〈街のこんにちはをめざして〉がトライワープ設立の理念です」

トライワープでは地域通貨「ピーナッツ」決済の電子化にも取り組んだ。そのためにパソコンを導入した商店主たちがブログを立ち上げ、イベント告知などの発信をするようになった。ところが、バラバラに情報が発信されているので、引き出したい情報が誰のどの日のブログの本文やコメントに記載されているのか、なかなか見つけられない。当時の商店会長は、情報を一元管理できるシステムの構築をトライワープに望んだ。これがSNS開発の契機となる。

実はそのころ、パソコン教室の運営上でも二つの課題を抱えていて、解決策としてSNSの導入を検討していたところだった。その課題とは、受講生が半年間の講座を卒業した後、自主的にパソコンを使わないのでスキルを忘れてしまうこと。そして、せっかく出会った地域住民同士の交流がほとんど続いていないこと。コミュニケーションのツールとして使える仕組みがあれば、教室の卒業後もパソコンを開く習慣がつく。ネットのコミュニケーションサイトに参加すれば、一度つながった関係をゆるやかに持続できる。SNSはまさにうってつけだったのだ。

サイト名「あみっぴぃ」の由来はスペイン語で「仲間」という意味の「アミーゴ」と、千葉県の名産品「ピーナッツ」。商店会長の娘さんが命名者だ。

「出会った系」サイトが加速する現実社会でのつながり

虎岩さんいわく、あみっぴぃは「出会った系」。ネット上での出会いは推奨していない。地域SNSは現実社会で「出会った」関係を育み、豊かにするための道具にすぎない。ここが重要なポイントだろう。SNSを盛り上げ豊かにすることが目的ではない。豊かになるべきなのは現実社会のほうなのだ。

「ネットを使って能動的に情報を発信したい人は全体の2割に過ぎません。大多数の人は受身です。だから、書き込みを強要したりせず、見ているだけでもよい、と伝えるのが重要。いつも8割側の視点に立つことを心がけています」

「あみっぴぃ」のつながりから、企業を退職して出店したオーナーが近くの飲食店で修行を積むことになったり、カフェで紅茶ブレンド「あみっtea」が開発されて特産品のない地域の土産物として重宝されるなど、「出会った」系によって現実社会にもたらされた豊かな果実は、枚挙にいとまがない。

「間違えちゃいけないのは、SNSによって地域が活性化することはありません。あと一押しすれば元気になる〈惜しい〉地域の、その一押しに役立つのがSNSです」と語る虎岩さんに、21世紀の豊かな社会のイメージを思い描いてもらった。「街で出会った多くの人にこんにちはと言える。でもそれ以上踏み込むのを無理強いしない。そんな社会でしょうか。ふだんこんにちはと言える間柄なら諍いも起りにくいし、互いに望めばより深い関係になることもできます」。

とりわけ都市近郊では人の移住が頻繁になり、かつてのように2~3世代続く強固なコミュニティーではなく、虎岩さんの表現を借りれば「新陳代謝の激しい」コミュニティーになっている。以前住んでいた地域の人とも、出会えば「こんにちは」と言える。その関係を結節点に地域同士が連携することもありえる。つながりの手助けをするツールの一つにソーシャルメディアはなるだろう。


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