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社会課題の現場とビジネスは、密接につながっている ――クロスフィールズ小沼大地さん(後編)

2014年12月10日



社会課題の現場とビジネスは、密接につながっている ――クロスフィールズ小沼大地さん(後編) | あしたのコミュニティーラボ
リーダー素質を持ち、企業にイノベーションをもたらす人材を育成するためには「社員ひとりひとりが真っ向から社会課題に挑むことが求められる」とクロスフィールズ代表理事の小沼大地さんは話す。しかし、その真意は「社会課題により近いところで働き、自身の仕事への情熱を取り戻す」ことにある。そんななか、現場のリーダー、ミドルマネジメント層はその芽を社内で見つけ、育てることができるのだろうか。後編は企業における社会課題への取り組みについて、現場のリーダーたちがなすべき行動について伺った。

企業での“仕事”を”志事”へと変える ――クロスフィールズ小沼大地さん(前編)

社内の「志の火種」集めに必要なのは、想いをベースにしたコミュニティ

――社会課題起点ビジネスの重要性について、まだ全社的な共通認識がない環境で、そうした気づきを社内に根づかせようとした場合、現場のリーダーやミドルマネジメントはどんな動き方や仕掛けをすればいいのでしょうか。

小沼 僕自身、前職の会社に入社した頃、目の前の仕事に一所懸命になる一方で、当初の志を失うかもしれないと不安だった時期がありました。そうなりそうで怖かった時期に何をしたかというと、思いを共有し語り合える仲間を見つけて強制的に会う、ということでした。

――「強制的に」会う?

小沼 前編で話した大学時代の友人との飲み会でも、2次会になると「いや小沼の言っていることもわかるよ。確かにオレたち大人になりすぎたかも」と明かしてくれる友人たちもいたんです。すかさず、じゃあ月1回定期的に飲もう、ということにしました。すると、その集まりは勉強会へと発展していき、いつのまにか延べ1,000人以上の参加者が集まるコミュニティに広がりました。クロスフィールズはそこから生まれたNPO法人とも言えます。

crossfields2-1NPO法人クロスフィールズ 代表理事 小沼大地さん

大企業の方にぜひ申し上げたいのは、「想いを共有する仲間のインフォーマルなコミュニティを社外でなく社内につくっていただきたい」ということです。志や想いは誰でも持っているはずで、社内ではなんとなく言えない雰囲気が漂っているだけだと思うんです。そのタブーに挑み、居酒屋ではなく会議室に若手を引きずり込み、役員や社長にも話してもらう。

熱い火種を持っていない人はいません。仲間を見つけられないとしたら、それはあなたの想いが「社会目線」ではなく「自分目線」すぎるから。社会的に価値の高い火種であれば、集まってくる人がいないはずはないので、諦めずに仲間を巻き込んでいただきたいですね。

――そういう自主的なうねりが若手社員を中心に出てくれば、それを応援しようとする役員もきっと現れるはずで、そうでなければ組織として危ない。

小沼 「留職プログラム? そんなのに手を上げる社員はウチにいないですよ」とおっしゃる人事の方でも、実際にいることを証明すると「なるほど光が見えました」と言ってくださいます。社員の可能性を信じることも大事ですね。

社会課題の現場での、圧倒的な原体験

――留職プログラムの参加者が、その経験を活かし、実際に社内でイノベーティブな活動を切り拓いていったようなことはありますか。

小沼 「徹底して現地目線を持つようになった」というのが留職経験者に多い共通の感想です。新興国の人たちに「何かしてあげる」という上から目線ではなく、現地のコミュニティに入り込んで生活し、友だちになって、本当に現地の側に立った商品やサービスを現地の人たちと一緒に開発する。

どんな仕事でも社会との接点を強くできる。そう思って「志事」をする人が増えれば、べつに帰国して必ずしもイノベーション関連の部署に配属されなくても、そうした働き方の熱は伝播し、会社は良くなっていく。それがねらいであり、必ずしもイノベーションを起こすことだけがアウトプットだとは考えていません。

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現地NPO法人の職員として新興国を駆けまわる(提供:NPO法人クロスフィールズ)

ただし、目に見えた成果も上がっていて、たとえば留職プログラムの経験を元にした新しいBOPビジネス(Base of the Economic Pyramid/膨大な市場である新興国の低所得者層を対象にしたビジネス)的なアプローチの事業計画が立ち上がり、予算のついたプロジェクトがいくつかあります。

――BOP市場の開拓を想定して留職プログラムを導入する企業もあるのですか。

小沼 BOPに特化しているわけではないと思います。従来の大企業の枠組みだと、新興国の駐在員は高級住宅街に住み、お抱え運転手で通勤、週末は日本人会のゴルフというような、いわゆる「日本人村」で生活し続けていると、むしろ上から目線が強くなるだけです。

それでは日本人のことを理解してくれる人、現地の人のなかでもせいぜい0.1%のトップ・オブ・トップしか狙えません。「それでいいのだろうか? 99.9%を見なくても」という反省があるだけで、いきなりBOPまで行くわけではない。

――新興国の現場に行かなければマーケットを見れなくなる、と。

小沼 留職の意義は社会課題が見えやすい現場に行くことですから、必ずしも海外に出なければならないわけではありません。日本の先進的な課題が突出した震災の被災地で現場を体験することも大切です。(クロスフィールズでは2014年10月から国内での留職プログラムの展開も開始)

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ビルの雰囲気が最高と入居を決め、創業以来同じビルの中で引っ越しを繰り返す。
入居者同士の交流も活発で刺激を受ける場だ

上下の関係ではなく、パートナーとして現地の人と一緒に考え解決策をつくり出す。社会課題の現場でそんな「志事」ができる人を日本企業のなかに増やしていきたいですね。

企業での“仕事”を”志事”へと変える ――クロスフィールズ小沼大地さん(前編)

関連リンク:NPO法人クロスフィールズ

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小沼大地  こぬま・だいち

NPO法人クロスフィールズ 代表理事


1982年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。大学を卒業後、青年海外協力隊(中東シリア・環境教育)に参加。その後、コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、人材育成領域をはじめとした各種プロジェクトに携わる。2011年5月、NPO法人クロスフィールズを共同創業者の松島由佳氏と創業。同年、世界経済フォーラム(ダボス会議)のGlobal Shapers Community(GSC)に選出される。大学時代はラクロスU21日本代表として活躍するほどのスポーツ愛好家。


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