Cases
社会課題を解決する先進的なアプローチをご紹介します。

地域課題を解決する人材のつくり方 ――政策創造プロジェクト(前編)

2014年12月12日



地域課題を解決する人材のつくり方 ――政策創造プロジェクト(前編) | あしたのコミュニティーラボ
地方自治体で政策を立案する担当者や企業の担当者が、政策創造のための知識と実践スキルを学ぶことができる産学連携のオンライン研修プログラム「政策創造プロジェクト」。慶應義塾大学での3年間の実践後、産学協同のプログラムとして正式にスタートし、3年を経た同プログラムには、民間企業からの参加者も増える一方、講師側の企業にポジティブなフィードバックをもたらしている。“学び”と“地方自治体の政策立案”が融合したユニークな取り組みの意義と、ステークホルダーを巻き込む“場づくり”のポイントについて、中心メンバーに話を伺った。

地域人材育成のためのエコシステムづくりへ ――政策創造プロジェクト(後編)

“大人が学び、成長する”プラットフォーム

「政策創造プロジェクト」の最大の特長。それは、政策創造のための知識と実践スキルを学ぶことを通じて、“能動的学習(アクティブ・ラーニング)”を展開するようになることだ。アクティブ・ラーニングとは、教える側が一方的に知識を与えるのではなく、教わる側が自律的、能動的に学習していく姿勢を身につける学習方法や授業形態のことだ。近年では能動的に知識を得ることに加え、その知識を活用し問題発見や解決をすることもその目的に組み込まれている。

現代の政策担当者に求められているのは「地域が持つ特長を理解し、それを活かした政策立案と実施し、地域活性化を行う」スキル。それは、ときに“創造的な政策立案・政策実施ができるスキル”と表現されるが、その本質は「仮説を机上の空論で終わらせず、実行できるかどうか」にある。

プロジェクトを統括する慶應義塾大学 大学院政策・メディア研究科 伊藤健二特任准教授は「政策創造プロジェクト」の意義を「自ら実行できる政策担当者を育てる」ことにあると話す。伊藤先生の専門は“人材育成”だが、そのバックグラウンドは多彩だ。シンクタンクのシニアマネージャとして人材育成や教育関連の調査研究、コンサルティングに携わりながら、省庁のアドバイザー・委員、大学教員などを歴任してきている。

現在は大学、企業、省庁などの人材育成やキャリア形成に関する多くのプロジェクトに携わり、各組織の課題や現場で働く人々がどんなことにジレンマを感じているかを日々痛感している。


慶應義塾大学 大学院政策・メディア研究科 伊藤健二特任准教授(写真手前)

「政策立案に限らず、社会人の“学習”は、実行も伴ってこそ意義があります。課題を持ったうえで学び、仮説を立てる。それを実行に移し、仮説がどうだったか都度振り返る“能動的学習”の流れを身につけていれば、社会人になってもどんどん学習、成長していきます。政策立案の分野では“切実な地域課題”をきっかけにして、関連する法令やデータ、他の地域における先進事例といった知識を習得し、仮説を立てて関係者を巻き込んだ行動を起こす。実行を伴ったPDCAを回すという意識が必要です」


学習全体にPDCAを導入することで持続的・継続的な成長の実感が得られる

実際、約半年で全10回行われる講義では、観光、6次産業、教育、農業、防災危機管理(国土強靭化)など7つの分野の最新動向をシンクタンクや民間企業の社員がレクチャーするプログラムからスタートする。得た知識や講師とやりとりした内容をベースに実際の地域課題を解決するための仮説や企画を立てていくわけだが、地域の人や関係者といった“現場へのヒアリング”が必須で、その結果を盛り込んで考えていくことが前提になっている。

さらに、プロジェクトの最後には企画をプレゼンテーションし、専門家や講師がそのプランを審査しフィードバックする。全講義終了後にはそれを自分が所属する地方自治体に持ち帰り、実際の政策として本格検討できる流れができている自治体もあるという。言わば、「地方政策立案・実践モデル」であろう。

ただ知識を与えるだけでなく、どうしたら今ある課題に対してその知識を活用し、現状を良くするためのアクションができるか。「政策創造プロジェクト」は、大人がどう学習するか、どう成長するかという“学び”の分野においても、モデルケースを確立しようとしている。

“創造的な政策創造・実行”の理想と現実

「政策創造プロジェクト」は、もともとは社会人向けに慶應大学が提供していたプログラムが前身だ。2000年ごろからスタートした地方分権の流れを背景に、地方自治体で執行する予算が増加し、地方主導の政策執行が求められるようになったことが、プログラムを開始するきっかけになった。


政策創造プロジェクトの位置づけ

「当時は、中央政府がやっていたことを参考としつつ地方自治体が主導で政策を執行すれば、より効果的で創造的な政策の執行ができるのではないかという期待もありました。しかし、それを実行するには地方自治体の負担が大きくなり、求められる政策効果もシビアになる。だからこそ地方は、これまで以上に政策立案能力を高めないといけなくなり、『これまで◯◯省がどういう施策を行ってきたのか』といった知識を持つことが必要になりました。次第に各地方自治体の意欲的な政策担当者が知識を得たいと学びにくるようになったんです」(伊藤先生)

講義の規模が徐々に大きくなるなか、伊藤先生はもっと広く政策担当者に出会い、知識を伝えるすべがないか模索していた。そんなとき出会ったのが、パイプドビッツの佐谷社長だった。

政治・行政の領域はデータの宝庫でありながら、長らくICTやデータベースが活用されてこなかった分野。官公庁や自治体、政党といった組織が独自でデータを持っていたり、そもそもアナログで管理されていたりと、デジタルからは遠ざかっていた分野だった。パイプドビッツは、データベースプラットフォーム提供をする企業として2000年に設立。

2011年からは政治・行政の情報を一元管理するプラットフォーム「政治山」を提供している、その分野では先駆者だ。相談すると、佐谷社長はすぐに「政治山と連携していきましょう」と快諾してくれた。現在、政策創造プロジェクトの講義は、この政治山をはじめ、パイプドビッツのプラットフォームを利用して運営されている。

「名産や観光といった地域資産について知識があっても、企画して、人を束ねて、方向づけて、進めさせるスキルがないと政策の実行はできません。それができる人材が現場にいるか。そこに課題を持つ地方自治体が多いのが現状です。また“創造的な政策実行ができる”政策担当者のスキルには、地方の実際を知り、地域での共通言語を持って関係する人々と良好な関係を築くといった、非常に高度なものが求められている。理想と現実に大きな乖離が存在するんです。そんな人たちの応援がしたいと思っています」(伊藤先生)

学びながら政策をつくる「政策創造プロジェクト」というプラットフォームには、立場が異なるプレーヤーが集まり“学びのエコシステム”が作られつつある。後編では、強みを持ち寄る民間企業や事務局が、このプロジェクトを行う意義やその効果について、現場の皆さんにお話を伺う。

地域人材育成のためのエコシステムづくりへ ――政策創造プロジェクト(後編)へ続く


いいね!を押して
Facebookページをフォロー

あしたラボの最新情報をお届けします。

Twitterであしたラボ(@ashita_lab)をフォローしよう!

皆さんの感想をお聞かせください!



Lab



  • facebook
  •  twitter
  • USTREAM
  • RSS

Copyright 2016 あしたのコミュニティーラボ