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地域人材育成のためのエコシステムづくりへ ──政策創造プロジェクト(後編)

2014年12月15日



地域人材育成のためのエコシステムづくりへ ──政策創造プロジェクト(後編) | あしたのコミュニティーラボ
今年で3年目を迎える「政策創造プロジェクト」。学びと地方活性、民間企業の力が組み合わさり、地域をつくるための人材を育成する1つのプラットフォームが形づくられつつある。そこに参加する民間企業にとっても現場の声が聞け、新しい可能性も見出せるなど、このプロジェクトの意義は大きい。参加者とコミュニケーションを行う講師側の民間企業にも話を伺い、今後このプロジェクトが目指すエコシステムづくりについて考える。

地域課題を解決する人材のつくり方 ──政策創造プロジェクト(前編)

予算を持って現場を動かす経験は、値千金

政策創造プロジェクトでは、人材育成や観光、6次産業、教育、防災危機管理(国土強靭化)などの7つの分野の知識と、企画力やファシリテーション力、プレゼンテーション力など13の実践スキルを重要視して講義内容を決定している。決定の過程では、テーマの選定や講師選びといった場面で専門家たちが協働している。

「シンクタンクやNPO、民間企業といった、講師を務める方々に加え、国の事業の担当として実際に自治体の政策立案を行っている方も参加した、プログラムの検討委員会があるんです。そこで、国の予算が決まった毎年春先に、地方自治体の学習ニーズの高い政策や、世の中の関心の高い分野などを選んで、プログラム設定を行います」(株式会社パイプドビッツ/政策創造プロジェクト事務局長の出口太郎さん)

株式会社パイプドビッツ/政策創造プロジェクト事務局長の出口太郎さん

「プラチナ社会研究会(*)で産民学連携を行っている株式会社三菱総合研究所(以下:MRI)がプログラム委員のメンバーとしても入っているので、そこからテーマを出すこともあります。そこで出たものを含めて委員会全員でテーマを設定します。そのなかで、いろいろな委員会の人たちが『ここが自分たちの強み』と手を挙げてくれ、自発的にプログラムを構築していく流れができています」(伊藤先生)

さらに、講師選びにも本プログラムの大きなテーマである「知識と実践」両方のスキルを身につけられるよう工夫。アカデミックな理論だけではなく、実際に予算を背負うプロジェクトマネージャーの経験も豊富な専門家にお願いしている。

プログラムにはどんな参加者が集まってきているのか。出口さんによると、受講者は、東京23区や千葉・神奈川などの首都圏にとどまらず、山形や山梨、愛知、三重、愛媛、熊本など全国各地から20強に及ぶ自治体の政策担当者が集まり、基礎自治体と呼ばれる市の担当者が多いという。その実績は3年目を迎えて確実に増えてきている。政策創造リサーチとして、各地域で「どんなテーマの政策が認知され、関心があり、推進してほしいか」というデータを数千人分蓄積してきており、各自治体で政策やその仮説を考えるヒントやエビデンスにもなっている。言わば、地方政策創造のビッグデータにも育ちうる。

「受講者の企画が実際に所属する地方自治体で採用され、新しい組織がつくられて予算がついたという象徴的な事例も生まれており、地方自治体と一緒に仕事をされている民間企業やシンクタンクからも受講者が増えてきています」(伊藤先生)

双方向に“学び”があるしくみづくりを目指して

「政策創造プロジェクト」で講師やプログラム委員会にも名を連ねている企業の1つであるMRI。前身である慶應大学での講義から数えると、プロジェクトへの参加は6年以上に及ぶ。本プロジェクトに参加する意義はどこにあるのだろうか。

同社の人材育成・教育グループで主任研究員を務め、本プログラムでは講義内容の決定や講師との窓口を担当する藤井倫雅さんは、自治体の方々と直接ディスカッションできる点、さまざまなフィードバックが得られる点を挙げる。

「“お客さま”としてお付き合いするときに比べて、コミュニケーションの仕方が変わりますし、教える側になることで講師側として得られる気づきも多くあります。たとえば、ふだん中央官庁の方々と仕事をしている講師は『地方自治体の受講者とディスカッションをしていると、完全に予想外の角度から質問がきたり、当たり前になっていた慣習的な部分に意義を問い直すような素朴な質問がくる。新たな気づきを得られることが多い』と、話していました。各分野の情報交換もできていて、“自分たちが強みとしている分野を教える”ことだけに留まらないプロジェクトです」

株式会社三菱総合研究所 藤井倫雅さん(左) 葦津紗恵さん(右)

2014年度のプログラムでMRIが担当した講義は、たとえば「食の6次産業プロデューサー」に関するもの。食の付加価値や生産性の向上を目指す“6次産業化”は地方課題の解決の1つの方法として注目を集めているキーワード。もともとは“農商工連携”としてはじまった動きで、現場では「農を中心に1次産業や地域がうるおうための連携」をするために取り組む地方が増えている。MRIは官公庁と一緒に国の認定制度「国家プロフェッショナル検定」である「食の6次産業プロデューサー」制度を立ち上げ、6次産業化を推進する人材育成に取り組んでいる。

「近年、経済産業省が所轄している“商務流通”、農林水産省が所轄の“農業”、そして生産者としての“農家”、流通に“JA”などがいる既存の農業システムとは別の動きが加速しています。それが、コンビニチェーンを持つ企業が、農場を持つといった新しい動き。そうしたコンビニチェーンが起点となった新しい製品作りとそれを管理する物流などに利用されるICTの連携によって、まったく新しい農業の流れが生まれてきているんです。今まさに起きている、新しい農業の流れを受講者に伝え、考えてもらうことをテーマに講義を展開しました」(MRI 社会公共マネジメント研究本部 葦津紗恵さん)

マスタープランが“win-win-win”を呼び込む

経験豊富な講師陣と最新のトレンドを加味したテーマの講義プログラムの数々、ICTを利用した講義システムにより、進化をしながら展開してきた「政策創造プロジェクト」。現在の課題は「企画を立てることはできたけど、どうやって周りを取り込んでいけばいいのかわからない」という声にどう対応するか、だと伊藤先生は話す。

「講義の中ではICTを活用して先進的な企画ができたものの、実際の現場で理解を求めながら実践に移すのはやはり壁が伴う。それを打破するためには、『マスタープラン』の策定が重要なのです。

マスタープランを軸に企画を実行に移していく

現在は地方創生のためのたくさんの予算があって、いろいろな人に委託して予算を回している状況ですが、人を巻き込んで効率的に運用していくためには、全体を貫くマスタープランを地域の目線でつくっておかないといけません。市民やNPO、名産品を生産する企業、観光、宿泊、旅行代理店など、たくさんのプレーヤーが関わるなかで、地方自治体はそれにどのように応えるか、その答えを用意しておく必要があるのです」

さらに、今後マスタープランに織り込んでおく必要がある未来のプレーヤーとして、人材の育成、そして人材創出機関としての“大学”の存在を挙げる。

「地域産業の特徴を具体的に把握して、課題を持つ。学生時代にそうした名産や観光、飲食などでのインターンを経験し、卒業後地元に就職し地方活性に携わっていく。という流れをつくっていかないと、中長期的に地方は回っていきません。いくら大学が“知の拠点”だといっても、将来的に人材が活動する地元とつながっていなければ、文部科学省が掲げる〈地域再生・活性化の核となるCOC機能(Center Of Community)〉を果たすことはできません。こういう問題提起も含め、マスタープランの策定が重要なのです」(伊藤先生)

伊藤先生は、「創造的な政策の実践においては重要なのは、官民学がコンセンサスを持って、仮説を立て、それに基づいて企画ができ、さらにそれがちゃんと“CHECK”されること。政策立案から実施していく過程においては、民間企業では当たり前の“PDCA”の“C”が弱い」と話す。

地方自治体が、“C”を意識的に実践するにあたり、マスタープランが指標になる。各プレーヤーがマスタープランをもとに共通言語、共通命題を持ちながら、皆で実行に移し、地方自治体は予算を執行する。その結果をチェックし改善していくことで、地域活性のエコシステムが回っていく。

“最新の知識を学びながら自分の仕事に成果を還元し、成長できる”、多くのビジネスマンにとって理想的な場である「政策創造プロジェクト」。他方、講師として参加する企業・団体にとっては“自分たちの強みを活かしながら、クライアントの本音が聞ける場”であり、学びの領域からすると“社会人向けの能動的学習モデル”の1つのケースになる。ステークホルダーを巻き込み、参加者全員がwin-win-winになるしくみづくりに学ぶところは大きい。

※注:プラチナ社会研究会:MRIが設立した産官学共同の研究会。超高齢社会、地球環境、雇用などの課題を根本的に解決するために必要とされる、工業社会から1ステージ上の社会を「プラチナ社会」として、その実現のために組織された。必要とされる制度設計や法的整備、合意形成のための産学官民プロジェクト。

地域課題を解決する人材のつくり方 ──政策創造プロジェクト(前編)


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