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自治体初、オープンデータ活用加速を民間企業・NPOとともに ──データシティ鯖江、次の一手(前編)

2014年12月19日



自治体初、オープンデータ活用加速を民間企業・NPOとともに ──データシティ鯖江、次の一手(前編) | あしたのコミュニティーラボ
データシティ鯖江”のフラッグを掲げる福井県鯖江市は、自治体保有の公共データを2次利用可能な形式で公開し民間サービスの創出を目指す“オープンデータ利活用”のトップランナーとして知られる。市民参画をより促す行政のあるべき姿を求めて、今回さらに前例のない試みに挑んだ。それが、自治体に企業のリーダー人材を短期で派遣し、活動を加速させるための制度「コーポレート・フェローシップ」だ。 “市民参画を促す”アクションにどんな成果が現れたのか。報告会に潜入し、新しい活動を前後編で追った。

“オープン”だからこそ持つ、人をつなげる底知れぬ可能性 ──データシティ鯖江、次の一手(後編)

またも先んじた“データシティ鯖江”

2014年11月27日、福井県鯖江市役所で「コーポレート・フェローシップ@鯖江」の報告会が開かれ、フェローとして派遣されたSAPジャパン株式会社の奥野和弘さんは1カ月半の活動成果を牧野百男市長に報告した。
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SAPジャパン株式会社 奥野和弘さん

テクノロジーを使った地域課題解決を、市民主体で取り組もうとする活動を、全国各地域で支援している一般社団法人コード・フォー・ジャパン。そのコード・フォー・ジャパンがこの夏から運用をはじめた「コーポレート・フェローシップ」は、オープンガバメント(市民参画による開かれた行政)を推進する自治体に、企業のリーダー人材を派遣するプログラムだ。

企業にとっては、社員が通常業務とは違う環境でプロジェクトを推進することによって柔軟で粘り強いリーダーシップを培う人材育成の機会となる。自治体は、派遣されたリーダー人材とコード・フォー・ジャパンがもつノウハウをほぼノーコストで活用し、市民参画を促す施策を強化しながら行政サービスの効果的な改善につなげることができる。こうした双方向のメリットをねらう短期間の人材派遣プログラムとして、鯖江市で10月7日から第1弾の実地検証が行われていた。

鯖江市は、行政の持つ公共データを機械判読に適した形式で公開し、民間が自由に2次利用することによって、新事業の創出や市民の利便性向上を目指す「オープンデータ」に日本ではじめて取り組んだトップランナーの自治体として知られる。
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鯖江市長 牧野百男さん

鯖江市ではオープンデータを活用したスマートフォンアプリなど、多くの成果も生まれているが、広く一般市民を巻き込んだ協働や、提供データのさらなる利用促進など、トップランナーならではの課題も多い。オープンガバメント戦略の「次の一手」を探るべく、コーポレート・フェローシップの導入を決めた。

オープンデータ利活用にさらなるイノベーションを

フェローの奥野さんは、派遣されてからまず、鯖江市役所のオープンデータの現状評価だけでなく、一般市民や高専生にオープンデータへの期待や要望をヒアリングした。オープンデータの利活用における各段階、つまり、公開から開発、利用、そして新しいアイデアを生み出すまで、フェーズごとに解決すべき課題が異なる。奥野さんは手始めに、鯖江市がオープンデータの利活用においてどんな課題を抱えているか、それをあぶりだすためのアクションを起こしたのだ。

この活動を通じて浮き彫りになった、優先課題は次の2点だ。
(1)オープンデータへの市民参画をさらに進めていくこと
(2)少ない職員で効率的にデータ公開を続けていくこと

これらの課題を踏まえ、今後鯖江市が優先的に実施すべき3点の施策を奥野さんは提示し、そこに基づいた活動結果を紹介した。

(1)統一された窓口サイトの設置
(2)データ公開手引きの整備
(3)市民主導による定期的なアイデアソンの実施

統一された窓口には、「そもそも何のためのオープンデータなのか」という啓蒙、データセットの検索と更新情報の確認、アプリケーションの検索、アプリ利用者がフィードバックを送る機能、開発者のための情報、利用実績の報告といった、利活用に必要なコンテンツを網羅する必要がある。さらに、オープンデータの作業が一部の職員の過負担にならない効率的なデータ公開手引きの整備も欠かせない。
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「デザインシンキング」という考えを学ぶために市民参加型のワークを行った

また、そこにはデータを利活用するルール面だけでなく、参加する市民へどう働きかけていくかという視点も欠かせないと続ける。オープンデータを活用することによってどんな価値を生み出すのか、市民目線のアイデアを定期的にアウトプットする。そうすることによって、市民参画による開かれた行政のあるべき姿も鮮明になるというわけだ。

さらに奥野さんは、派遣期間中に市民、市役所職員、地元企業、SAPジャパンのボランティアが参加した「デザインシンキング」の方法論を用いたアイデアソンをテストとして実施した。集まった総勢40名は、「若者が住みたくなる、住み続けたくなる町づくり」「外国人観光客に感動を提供する町づくり」の2テーマについてアイデアを出し合い、合計133のアイデアが生み出された。

その結果を受け、すでに「鯖江市に市民主導のアイデアソンを定着させるには?」というテーマのもとで第2回の開催が決まっている。アイデアソンを1度行っただけでは単なる市民参加型のイベント開催になってしまう。大切なのは“継続”する土壌だという認識は、市役所職員、地元企業、SAPジャパン関係者全員が持っている。そして、継続させるために、アイデアをまとめていく“市民ファシリテーター”の育成が必須となる。SAPジャパンでは今後もファシリテーター人材をボランティアで派遣するなど、継続的な支援を行っていくという。
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報告会には鯖江市、コード・フォー・ジャパン、SAPジャパンの関係者が集まった

「地域の方や高専生へのヒアリングを通して、まずは若い人々が『鯖江に魅力を感じる』『鯖江にプライドを持てる』ことをどう感じさせるかがポイントだと感じました。その土壌がつくられることで、高齢者と若者をつなげるアイデアをつくれるはずです。毎週アイデアソンが自主的に行われ、自由に参加できるような、鯖江市ならではの“オープンデータの利活用への市民参画”の形をつくりたい、それを第2弾として派遣される方に託していきたい」と奥野さんは発表の最後を締めくくった。

展開と課題、常にトップランナーという意識

鯖江市の牧野市長は今回の報告を受け、「鯖江という“地域のよさ”を伝えていく『ふるさと教育』と、鯖江の地場産業を活かした『ものづくり教育』を推進していくにあたって、若者と高齢者が一緒にアイデアを出し合っていく土壌をつくることができれば、それが全国の地域にも応用できるようになるのでは」と、期待を膨らませる。報告会の中でも、海外における先進事例としてニューヨーク州やシカゴ市の例、自治体の手続きを簡便にしている福岡市の例があげられ、そこから学べることはないか、こうカスタマイズしたらいいのではないかなど、多様なアイデアが飛び交っていた。

他の自治体も鯖江を見本にオープンデータ公開を進めており、全国で72の自治体(2014年12月現在)が、今回奥野さんが報告したような課題に直面し、試行錯誤している状態だ。オープンデータの利活用とそこにまつわる課題、鯖江市は常にトップランナーとして走り続けることへの期待は大きい。

他の自治体に先んじて新しい一歩を踏み出した鯖江市。それを後押しするのは立場を異にしながらも、市民とともによりよい活動を一緒にしたいと考えるコード・フォー・ジャパン、SAPジャパンだ。後編は、このコーポレート・フェローシップが組織にもたらす意味と今後の展望、オープンデータの利活用による市民参画の未来像について聞いた。

“オープン”だからこそ持つ、人をつなげる底知れぬ可能性 ──データシティ鯖江、次の一手(後編)へ続く

関連リンク:
福井県鯖江市
一般社団法人コード・フォー・ジャパン
SAPジャパン株式会社


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