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「おきゃくに行こうよ!」が若者の合言葉に
イベント「土佐のおきゃく」(高知県高知市)

2012年08月22日



「おきゃくに行こうよ!」が若者の合言葉に<br />イベント「土佐のおきゃく」(高知県高知市) | あしたのコミュニティーラボ
2006年から始まった高知市のイベント「土佐のおきゃく」が年々話題を集めている。クライマックスを飾る「日本一の大おきゃく」は、地元の人たちと観光客とが入り交じって商店街の路上で杯を酌み交わす大宴会。商店主たちの団結がもたらした取り組みは、地域の人たちが〈地元〉を見直すきっかけにもなった。龍馬を生んだ土地ならではの開けっ広げな楽しさに、数字では表せない「豊かさ」が垣間見える。

“オープン居酒屋”に笑い声が響く早春の高知

アーケード商店街の路上にテーブルが並び、宴席が盛り上がる。畳を敷いてこたつを囲み、地元客と観光客が入り交じってグラスを傾けあう。古くから地域に伝わる、箸を使った数当て遊び「はし拳」に興じる人たちも。

3月初旬の1週間、高知市内は「土佐のおきゃく」というイベントで賑わう。「おきゃく」とは土佐弁で「宴会」の意味。飲食の出店からコスプレショーまでさまざまだが、中でも最大の呼び物が、全長1㎞のアーケード商店街に宴席を設けて “オープン居酒屋”状態となる「日本一の大おきゃく」だ。

今年(2012年)は9日間で43のイベントが繰り広げられ、集客人数はおよそ5万1,000人、経済効果はおよそ7億円と算定された(四銀キャピタルリサーチ調査による)。

「メイン会場の中央公園では、前年夏の〈よさこい祭り〉で入賞したチームが踊りを披露したり、地域の食材を生かして新たな特産品をつくりだそうと〈御当地B級グルメ〉の屋台が約40コマ立ち並んで、人気を集めました」と実行委員長の上村嘉郎さんは語る。


(「土佐のおきゃく」実行委員長の上村嘉郎さん)

「土佐のおきゃく」は手弁当の実行委員10名のスタッフで運営され、主として地元企業の協賛金とイベント参加費(1団体につき1万円)で成り立っている。行政の補助金に頼ることなく、9割以上は民間の費用による独立採算のプロジェクトだ。毎年10万部のオフィシャルガイドブックを、東京・大阪・名古屋の高知県事務所を通じて配布し、「よさこい祭り」に集まる観光客にもアピールするなど、県外へのPRにも力を入れている。

誕生から58年を経て全国的に有名になった「よさこい祭り」で沸き返る盛夏に比べて、早春の高知はひっそりと寂しい街だった。それがこの6年間で、「土佐のおきゃく」効果がしだいに現れ、活気を取り戻しつつある。

来るもの拒まず、〈お接待の心〉が花開いた

高知には全国に誇れる一次産品が多いが、それをうまくアピールできていない。なんとかしなければ、と03年に発足したのがNPO法人「高知の食を考える会」。上村さんもそのメンバーで、土佐経済同友会の観光振興委員会と一緒になって知恵を絞った。そこで出たアイデアが、閑散期に高知の人と食と文化を軸にして観光客を集める「土佐のおきゃく」だ。

「高知には昔から〈皿鉢(さわち)料理〉というものがあります。一つの皿に海・川・里の幸が盛り込まれている宴席料理です。高知の街を皿鉢料理に見立て、多くの人がいろんなイベントをやって街を賑やかにしよう、と」

今やメインイベントとなった「日本一の大おきゃく」誕生には、一つのきっかけがある。07年の「おきゃく」期間中に、市内の人気飲食店が中心となって開催した一夜限りのイベントだ。「高知の食材でおもてなしを」という強い想いのもと、若手料理人たちの技術の研鑽を兼ねて企画されたこの催しは、周辺の飲食店や地酒メーカーなどを巻き込んで夜通し続けられ、大好評を得た。そこでこれを広げてやろうと、08年から始まったのが「日本一の大おきゃく」なのだ。

全長1㎞のアーケードを9つのエリアに分け、たとえば一画は「高知のスローフード」をテーマにしたり、飲食店以外の人たちも出店できることにした。しかし、なにせ路上で宴会をするのだから、事故や事件が起こらないようにする配慮が必要だ。地域振興イベントということで鉄壁の協力体制をとる警察のノウハウを借り、警備会社にも依頼している。

「知らない人ともすぐ友だちになれるんですよ」と上村さんは高知気質を語る。

「古くから四国八十八か所巡りの人たちと触れ合う機会が多かったからでしょうか、高知県人は来るもの拒まず、〈お接待の心〉をもともと持っているんですね。日本一の大おきゃくでは、その心が大きく花開いている感じがします」

観光客を集めようとの意図で始めた「土佐のおきゃく」は、ふたを開けてみれば地元の人たちが楽しんだ。それはそれで成功だが、路上の大宴会で誰とでも乾杯できる「日本一の大おきゃく」の評判が呼び水となり、近年では県外からの観光客も2~3割増(2006年比)とじわじわ増えている。目標の5割も見えてきた。

大都会から見た「豊かさ」の指数で決められたくない

上村さんによれば、高知市の中心商店街は全国有数の賑わいをキープしてきた。

「それでも御多分に漏れず、しだいにシャッターの降りる店も見かけるようになりました。このままでいると、ゆくゆくはシャッター商店街になる————そんな危機感を、みなさん共有していたんですね」

だから中心商店街の大半の人たちが「土佐のおきゃく」の企画趣旨に乗った。当初は「音がうるさい」といった理由で非協力的でも、「ぜひ出店することでイベントに“便乗”し、商売につなげてほしい」という上村さんたちの説得に腰を上げてくれた。

市内全体を盛り上げ、人を集めることが、自分たちの未来をつくる。実行委員も、そんな想いで無報酬の貢献をしている。ちなみに上村さんの本業は、モナカの皮の製造。土産物として販売している取引先の菓子メーカーにとっても、観光客が増えることは商売繁盛につながるのだ。

しかし「土佐のおきゃく」がもたらすのは、金銭や数値に換算できる効果だけではない。目に見えない心の豊かさが地域にしみわたりつつある。土佐のもてなしの心を取り戻せたこともそうだが、ほかにもこんなことが————。

「実は地元でも〈おきゃく〉という言葉は古語で、もうほとんど通じなくなっていました。ところが、この言葉がすっかり復活し、若い人たちがふだんから、〈おきゃくに行こうよ!〉と飲みに誘うようになったんですね」

高知県は所得水準など物質的な豊かさを示す指数では、全国でも最下位近くに甘んじている。けれども、そんな指数では決して表に出てこない豊かさが高知にはある、と上村さんは胸を張る。

「森林面積86%は全国トップ。海、山、川に囲まれて、自然の恵みが豊富。食べものは美味しいし、アウトドアが趣味の人にとっては、天国のようなところですよ。そして、龍馬を生んだ土地ならではの、自由な考えで新しいことにチャレンジする気質。大都会から見た豊かさの指数で決められたくないですね。自分たちなりの〈幸福指数〉があることを誇りに思っています」

ここに人あり、自由あり————「土佐のおきゃく」のサブタイトルだ。「豊かな社会」を目指すヒントが、ここにもあるかもしれない。

「土佐のおきゃく」
公式HPはこちら
http://www.tosa-okyaku.com/


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